「タイ発 THE NATION」

タイ発 THE NATION

2009年11月13日(金)

海賊版横行でDVDメーカーに打撃

デジタルサービス、キャラクター商品強化で事態の打開を図る

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Big rise in piracy hits DVD-makers

不景気になると通常、オンラインゲームやDVD、VCD(ビデオCD)といった家庭用娯楽商品の売り上げは伸びるものだ。景気が悪いと、外出を減らし家で過ごす時間が増え、こうした娯楽を楽しむ人が増えるからだ。

 しかし、 DVDなどの制作・販売を手掛けるタイのローズ・メディア・アンド・エンターテインメントのオラパン・モンピチット・パワラワダーナ副社長(買収・配給担当)によると、同社のVCD及びDVD映画ソフトの売り上げは今年60〜70%の下落が予測されるという。

 売り上げの減少は、経済的な要因に加えて、相変わらず続く海賊版の問題が原因となっている。最近は海賊版のVCDやDVDが入手しやすくなっており、違法ダウンロードも急増しているのだ。

DVD・VCDの販売は今後減少していく

 ローズ・メディアのアニメVCD及びDVDの売上高は、今年少なくとも50%の減少が見込まれると同氏は嘆く。「現代の若者はテレビやコンピューター、携帯電話に夢中だ。家に居ながらにして映画コンテンツを簡単に、しかも高画質でダウンロードできるからだ」(オラパン氏)。

 同社では、今後、売り上げに占めるVCDやDVDのシェアが徐々に減り、モバイルストリーミング(携帯電話の動画再生)やインターネット・プロトコル・テレビ(iPTV、インターネットを通じた動画配信サービス)、ビデオ・オン・デマンド(観たい時に映像コンテンツを視聴できるサービス)、ペイ・パー・ビュー(番組単位での課金)などのデジタルサービスが増えていくと見ていると同氏は続ける。

 同社は先日、傘下のアニメ専門ケーブルテレビ局「ギャング・カートゥーン」のコンテンツのモバイルストリーミング事業を、タイの携帯電話大手アドバンスト・インフォ・サービスと共同で立ち上げた。ギャング・カートゥーンの24時間衛星放送も開始した。

 「今やらねばならないのは、ギャング・カートゥーンのブランドを構築することと、このブランドへの愛着、特にアニメファンに愛着を持ってもらうよう努力することだ」とオラパン氏。

 「現在、iPTV やビデオ・オン・デマンドなど新しいデジタルメディアを通じて、我が社の高品質な映画やアニメのコンテンツを配信する新たなビジネスについて、多くの提携先と検討中でもある」

日本のアニメやヒーロー物のライセンス商品に活路

 ローズ・メディアは、VCDやDVD製品が同社の売り上げに占める割合が徐々に減り、今後2〜3年のうちに、現在の60〜70%から20%未満になると予測しているとオラパン氏は言う。

 こうした動きは、香港やシンガポール、日本、台湾などの他市場の動向に追随するもので、これらの市場の家庭用娯楽産業では、新しいデジタルメディアが台頭している。ローズ・メディアは、今年の売上高を約6億バーツ(約16億1400万円)と見込む。

 ドリーム・エクスプレスは、人気の高い日本のアニメやヒーロー物のタイでの放映権及び配給権を多く持っている。クリット・サクルパニット社長によると、今年1〜9月の同社のVCD売り上げは前年同期比30%減で、DVDの方も低迷が続いている。

 クリット氏はその理由を、「不景気の今、我が社のアニメなどコンテンツを違法ダウンロードするケースが増加している。そのうえ、バンコクのクロントムやサパンレック、バンモー、シーコンスクエアといった繁華街や電気街で売られている海賊版VCDやDVDの数も激増している」と指摘する。

 ブラックマーケットでは、海賊版DVD(1枚のディスクに映画が5本入っている)が、1枚わずか50〜100バーツ(約135〜270円)で買えることもあるという。

 「海賊行為の被害に対抗するには、衣料品やアクセサリーなどの新分野に進出して、業務内容を再編しなくてはならない」と同氏。

 同社は来年、ライセンス契約を結んだ日本のアニメやヒーロー物の新作を10本放送開始する。「機動戦士ガンダムOO(ダブルオー)」や「ウルトラマンメビウス」「ケータイ捜査官7」「爆丸バトルブローラーズ」「仮面ライダーキバ」「サラダワールド」「プリキュア3」などだ。

 アニメやヒーロー物のライセンス衣料を販売するために、ドリーム・エクスプレスが全額出資で設立した子会社ドリーム・アパレルのサケソン・タマワン部長は、来年には一流デパートに出店する計画だと明かす。

 同社の衣料品やアクセサリーは現在、ホールセール(会員制卸売りスーパー)やハイパーマーケット(郊外型の大型スーパー)で販売されている。

 「来年には衣料品とアクセサリーの最小在庫管理単位(SKU)を現在の100SKU強から倍に増やす計画だ」とサケソン氏。

 ドリーム・アパレルでは今年、売上高4000万バーツ(約1億760万円)を達成できると予測している。これはドリーム・エクスプレスが見込んでいる同社の総売り上げ2億バーツ(約5億3800万円)の20%を占めるだろう。同社の予測では、来年は衣料品が約50%伸びるという。

(by KWANCHAI RUNGFAPAISARN ©THE NATION/Asia News Network 2009年11月9日)

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「THE NATION(ザ・ネーション)」は、タイ最大の新聞社、ネーショングループが発行する日刊英字紙で、発行部数は約6万8000部。創刊は1971年。独立系の新聞で、都市部を中心に、ビジネスリーダーから政府関係者、学者などまで幅広く読まれている。








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