どうなる三沢基地 F16撤収打診

(上)衝撃 恩恵に依存 基地の街
(2009/09/13)
 「まったく寝耳に水だ」。12日午前、三沢市役所で急きょ開催された行政経営調整会議。米政府が米軍三沢基地のF16戦闘機全機の撤収を日本側に打診している―との報道に、幹部職員から戸惑いと不安の声が相次いだ。
 市は情報収集に努めたものの、土曜日ということもあり、報道内容の確認は取れないまま。それでも急いで会議を招集したのは、F16の撤収が事実なら、市の存続にかかわる重大な問題だからだ。
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 三沢市は戦後の米軍駐留により街が形成され、基地機能の拡大とともに地域経済が発展してきた特殊な生い立ちがある。
 特に1985年に始まったF16の配備はさまざまな経済波及効果をもたらした。施設整備に伴う基地内の建設需要、基地外に居住する軍関係者向け民間住宅の建設ラッシュ、基地外消費の活発化…。
 F16部隊の駐屯により、訓練飛行中の事故や騒音被害の増大など「負」の部分も拡大した。そのたびに抗議が繰り返されてきたが、苦痛を受け入れる“代償”として、市に毎年、基地絡みの多額の交付金や防衛補助金が入っているのも事実。
 これらを活用し、市は道路や学校など公共施設を次々と整備。こうした基地の恩恵があればこそ、市は基地との「共存共栄」を基本理念に掲げてきた。交付金は基地の機能や規模が算定基準となっており、F16部隊が撤収すれば交付金が大幅に減るのは間違いない。
 「空軍の(F16)部隊がいなくなることは、三沢から基地がなくなることに近い」。ある市幹部は、基地に依存する三沢を根幹から揺るがす事態への不安をあらわにした。解雇の不安 仮にF16が撤収すれば、真っ先に影響を受けるのが約1300人といわれる基地従業員だ。おいらせ町在住の事務職男性(52)は「給与は公務員並みに安定しているとはいえ、米国の方針に左右される職業。常に不安はあった」と本音を明かす。
 三沢基地では1970年代、在日米軍の縮小で大量の基地従業員が解雇され、街に離職者があふれた。男性の父親も基地従業員で当時、解雇されたといい、「まだ鮮明に覚えている。今回も同じような流れなのか…」とつぶやいた。
 地元商業者の間にも動揺が広がっている。民間住宅“米軍ハウス”を運営する不動産業者は「全機が撤退すれば、千人以上が三沢からいなくなるのでは。業界だけでなく地域経済全体の問題だ」と語気を強める。ただ、まだ半信半疑の様子で、「信じがたい話だし、撤退は考えられない」とも。
 16日に発足する民主党中心の連立政権がどう対応するのか―。地元関係者は新政権の出方をかたずをのんで見守っている。