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米中活況の陰でたそがれの日本株、リスクマネーは米大型株へ

11月12日(木)15時21分配信 ロイター

 11月12日、米中の株式市場が活況の中、日本株の「一人負け」が顕著に。写真は都内の株価ボード。2日撮影(2009年 ロイター/Toru Hanai)
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 11月12日、米中の株式市場が活況の中、日本株の「一人負け」が顕著に。写真は都内の株価ボード。2日撮影(2009年 ロイター/Toru Hanai)
吉池 威記者
 [東京 12日 ロイター]  米株式市場は連日の年初来高値更新、中国株式市場も堅調地合いが続くなか、日本株の「一人負け」が顕著になっている。
 3―4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明で政策金利は当面据え置かれると市場で受け止められ、リスクマネーは買い安心感が出てきた米大型株に流入していると観測される。日本株低調の要因は大手銀行の決算発表を控えて動きにくいことや円高基調の継続、政策の不透明感だが、政治不信が底流との見方が少なくない。オバマ米大統領はあすから日本と中国を相次いで訪問するが、首脳同士の距離感に市場関係者の注目度も増している。
 前日の米株式相場は、ダウ工業株30種とS&P総合500種が13カ月ぶり高値を付けるなど堅調な値動きを示した。高級住宅建設のトール・ブラザーズ<TOL.N>の堅調な業績見通しや中国の経済指標が世界経済の回復を裏付ける形となったほか、米連邦準備理事会(FRB)当局者が当分の間、低金利が続く可能性を示唆したことで地合いが強まった。
 12日の東京市場は、SQ(特別清算指数)算出や大手銀行の決算発表を控えて動きにくい状況が続いている。また、円高基調の継続、政策に対する不透明感が上値を抑えているとの見方が広がっている。日興コーディアル証券エクイティ部部長の西広市氏は「上方向へ行くには抵抗が強い」との見方を示す。実際、今週に入ってから日経平均は1万円を目指す展開だが、上昇幅は限定的で、海外市場、特に米株価との違いが鮮明になっている。
 米株式市場では、アルコア<AA.N>、キャタピラー<CAT.N>、ウォルマート・ストアーズ<WMT.N>など大型株がここ数日上昇している。FOMCは4日の声明で、景気回復に確信を示す一方で、政策金利は引き続き長期間ゼロ付近に維持する方針を示した。翌5日の取引でダウ工業株30種は終値で2週間ぶりに1万ドルを回復した。邦銀系の株式トレーダーは、FRBの低金利政策が長く続くとの観測から、投資先を求めていたリスクマネーが米大型株に流れていると指摘する。
 一方、中国株式市場で上海総合株価指数は夏ごろに過熱感が広がった後に2600ポイント付近に下げたが、建国60周年に合わせるように9月末から反転、10月14日に3000ポイントを回復、足元では3200ポイントに上昇している。10月30日に取引が開始された深セン証券取引所のベンチャー企業向け市場「創業板(中国版ナスダック)」では、同日、上場した全28銘柄がザラ場で公募価格の倍以上となった。
 その過熱ぶりには警戒感も広がっているが、さらに100件以上が創業板への上場申請を審査中。業界関係者は、少なくとも1000社が来年の上場を準備しているという。日本とはあまりにも対照的だ。東証によると、マザーズの新規上場企業数(外国企業を含む)は、2004年が57社だったが2007年は23社、2008年は13社に減り、今年はここまで20社にとどまっている。
 活況に沸く米中両国だが、目下のところは為替問題が懸案事項だ。人民元は北京オリンピック開催前の昨年7月ごろから6.84ドル付近でレートが維持されている。ドル・インデックスの乱高下により中国当局は人民元切り上げ策を一時休止しているとみられるが、人民元上昇に対する国際的圧力は強まっている。中国人民銀行(中央銀行)は11日発表した貨幣政策報告のなかで、資本フローの変化や主要通貨の変動に基づいて為替相場メカニズムを改善する方針を示した。
 北京の対外経済貿易大学のDING ZHIJIE教授は、「国際的な圧力や経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)を考慮すれば、短期的には人民元が上昇することを意味する」と話す。
 ただ、「中国の株式市場の勢いをみれば、人民元を再び切り上げても中国株売りにつながらない」と邦銀系のトレーダーはみている。「そもそも中国の内需主導による経済政策で米国をはじめ世界経済が救われていることを考えれば、米国も中国側に強く圧力をかけられない」(外資系証券の通貨ストラテジスト)との事情もある。
 オバマ政権は日本に距離を置く一方で中国との関係を強化する外交政策を基本としている、との見方に関して、前出の邦銀系トレーダーは「円高攻めとなれば日本株売りにつながり、日本の金融市場はたちまち負の連鎖に陥る」と懸念する。3月の安値から1万円付近まで持ち直したのに、株式市場関係者は足元で円高の恐怖に脅える。同トレーダーは「民主党は自民党よりもましだとの判断で選ばれたはずだが、本当にそうだったのか考えなければならない」と述べた。外資系証券の中には、NDC(ニュー・ディクライニング・カントリー)と日本を位置づけて、円資産売りを積極化しよう、との動きも出ている。
 オバマ大統領は13日に来日。同日夜、鳩山由紀夫首相と会談し、共同記者会見をする。14日午前には東京都内で米国のアジア政策に関する包括的な演説を予定している。シンガポールでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席した後、中国を訪問。胡錦濤国家主席や温家宝首相と会談する。
 (ロイター日本語ニュース 吉池 威記者 編集 橋本浩)

最終更新:11月12日(木)15時23分

ロイター

 

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