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厚労省担当の検査院幹部「私に預けろ」で塩漬け 膨大なボツ案件

11月13日0時44分配信 産経新聞

 平成19年8月、会計検査院は11月に首相に提出する検査報告書に向けて各部署で詰めの調査を進めていた。当時の会計検査院第2局は厚労省の労働関係調査委託事業について調べを進めていた。

 旧労働省では官僚OBらに労働情勢について報告するリポートを依頼し、現金を払っていた。ところが、会計検査院の職員が調査したところ、提出されているはずのOBらのリポートが存在していないことが分かった。

 裏金になっているのではないか−。厚労省の検査を担当した検査院の厚生労働検査2課は課長以下、精鋭チームが休日返上で調査を進めていた。

 「こんな話、聞いたことがない。不正どころではない。機密費のようなものじゃないか」

 調査官の追及に厚労省の担当者はつじつまの合う説明ができなかった。「この事業は廃止しますから」。厚労省は検査院側に、労働関係調査委託事業の廃止を条件に、調査の停止を求めてきた。そんななか、この調査が中断された。

 複数の検査院関係者によると、厚労省の陳情を受けているうちに検査院のある中堅幹部が「この案件は私に預けろ」と言ったまま塩漬けにしてしまっていた。

 つぶされた−。検査院にうわさが駆け回った。

 厚労省のある幹部が「検査中止の最後の駄目押しに」と、旧知の検査院上級幹部のもとを訪れたのはそんな時期だった。

 ところが、この「機密費」事件が塩漬け状態で、すでに「終わった」案件だというのは、上級幹部には寝耳に水だった。

 「この案件はいったいどうなっているんだ」−。上級幹部は旧友が辞去した直後、局長、審議官、課長、担当職員を呼んで、事情を説明させ、調査再開を命じた。

 19年11月に首相に手渡された18年度検査報告書には「労働関係調査委託事業の会計経理が著しく不適正」として、不当金額1億7750万円と掲載されていた。めったに使わない「著しく」という修辞をあえて使ったところに検査院側の思いが込められている。

 調査の途中に横やりが入ることは「さほど珍しくない」(検査院職員)。このことは検査院が「植民地」といわれる天下り先を持たないことと無関係ではない。

 労働関係調査委託事業の案件をいったんはつぶしたとうわさされた検査院の中堅幹部は、省庁が所管する独立行政法人の監事に天下り、再任されている。

 課長、局長、審議官、検査官。靴をすり減らし、汗をいくら流して調査をしても、調査が結実するにはいくつもの関門がある。11月になれば毎年、風物詩のように行われる会計検査院院長が分厚い検査報告書を首相に手渡す場面。その裏には膨大なボツ案件がある。中には誰かの思惑によって消えたものも少なくない。=敬称略(三枝玄太郎)

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最終更新:11月13日0時44分

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