図書館設置条例の顛末

(「図書館雑誌」2004年2月号「北から南から」に掲載)

                                

私の住んでいる藤代町は、上野から常磐線で約四十五分、茨城県に入って二つ目の駅で降りる。この町に今年の四月、『町立ふじしろ中央図書館』がオープンした。私たちが「藤代町に図書館を作る会」を結成して運動を始めてから十年以上が経過している。 原稿を書いた時点は2003年だったので「今年」となっている)

この図書館設置にあたり、条例が制定されたわけであるが、そこに議員として関わったので、その顛末をご報告したい。

この図書館建設は、平成五年に現町長が初当選したときから動き始めた。町長は当選後間もなく公募委員を中心にした「図書館建設準備委員会」をたち上げた。しばらくは順調に進んでいたが、財政状況が悪化して、建設は予定より大分遅れることになった。様々な困難もあったが、それらを乗り越え、遂にこの四月にオープンにこぎつけたのである。

さて、本題の「図書館設置条例」であるが、すんなりと今の条例に決まったわけではない。はじめ教育委員会が提出してきたものは、今一般的に広く用いられている条例であった。つまり、単に「藤代町に図書館を設置する」「図書館に、館長、司書、その他必要な職員を置く」と言うだけのものである。あとは、図書館の名称・位置を定めるだけの条例であった。私たち「図書館建設準備委員会」に関わった者たちは、館長の司書資格にこだわっていた。文部科学省では、規制緩和の一環として司書資格の撤廃を定めたが、私たちは、「司書としての豊かな経験」を館長の必須要件としたのである。単なる「資格」だけでなく、司書としての経験を重要視している。

藤代町では建設に先立って、館長となるべき人物を全国公募で採用した。それも、「図書館建設準備委員会」の強い要望を入れてのことである。こうしてせっかく実現した経験のある有資格者の館長を今後も継続するためには、どうしても条例の中に規定する必要があった。

そこで、町議会の教育福祉常任委員会に提案された原案に対して、私が修正案を出すことにする。この委員会の構成メンバーからみて、修正案が通ることは殆ど間違いないと踏んだのだ。

修正点は、

1.第1条に「町民の教育と文化の発展に寄与するために」とあったのを、「町民の知る権利を保障し、教育と文化の発展に(以下同じ)」とする。

2.名称を「ふじしろ図書館」でなく、「ふじしろ中央図書館」とする。

3.第3条第2項として、「館長となるものは法第5条に規定する司書となる資格を有し、図書館の運営に関して専門的知識・経験を有する者をもって充てるものとする」という文言を追加する。

の三点であった。このうち、第二の問題は、合併がらみのものでる。隣接する取手市と合併した場合のことを考えて、教育委員会では「ふじしろ図書館」を提案してきたのだが、「藤代町立図書館基本計画」に分館構想があることを忘れさせないために、「ふじしろ中央図書館」を主張した。共産党の議員から賛成討論があり、採決の結果全員賛成で修正案が可決された。

 本会議では、このとき既に発注してあったラベルが「ふじしろ図書館」となっていることについて、その再発注にどれくらいの費用がかかるかという質問があったが、大きな問題とはならず、賛成多数で修正案が可決された。

 次に「図書館協議会設置条例」についてであるが、これは平成十五年の町議会第一回定例会に提案された。私たち、図書館建設準備委員会に関わった者たちは、協議会メンバーに公募制による利用者代表の参加を求めていた。教育委員会事務局もその点を十分承知しており、原案の段階で「学識経験者の半数を公募する」という内容になっていた。しかし、「利用者代表」が協議会メンバーの中に明確に位置づけられておらず不十分であると言う観点から、朝比奈議員が常任委員会に修正案を提出した。

 修正案の内容は、

  1. 第1条の「趣旨」の中に、「藤代町立図書館の適正な運営を図るため」とあるのを、「藤代町立図書館の適正な運営を図り、利用者の権利を守るために」と改める。
  2. 第3条中「図書館奉仕につき、館長に対して意見を述べることができる」とあるのを、「図書館運営につき館長に・・」と改める。
  3. 第4条「組織」の(3)の後に、(4)「利用者の代表者」を入れ、この枠は全員公募によるように定める。
  4. 第5条(任期)で、「ただし、再任を妨げない」を「ただし、再任を妨げないものとするが、在任期間は6年を限度とする」と訂正する。これは、任期を区切ることにより、出来るだけ多くの人が町政に参画できるシステムを作ろうとの考えによるものである。
  5. 第7条第4項の後に「5会議は原則公開するものとする」を加える。

というものであった。審議会の透明性を高め、利用者の権利を守るという点で画期的な内容であったと思う。

 常任委員会では、質疑は無く、私の賛成討論のあと全員賛成で可決された。本会議では、「原則公開」になぜ「原則」をつけるのかという質問があり、個人名などが出るような場合は非公開にも出来るようにしたとの答弁があって、採決となる。賛成多数で修正案が可決された。

 ここまで来るのは長い道のりであった。図書館建設準備委員会が発足してから約十年、やっと委員会の要望を満たす条例が制定されたわけである。

しかし、取手市との合併を控え、このふたつの条例も風前のともし火となってしまった。対等合併編入方式という合併のスタイルから、原則取手市の条例を使うということに決まったのである。合併協議会で、私は藤代町の図書館設置条例、協議会設置条例を残すべく懸命に抵抗したが、二十九人中二十六人の反対にあって、条例を残す見通しは断たれてしまった。こうなった以上、新生取手市で条例改正に取り組む以外、この条例を残すことは出来ない。せっかく修正案を出して制定した条例なのにと思うと残念でならない。

                                   (茨城県藤代町議会議員)