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[米国]
アップル、Mac OS Xの最新アップデートでAtomのサポートを打ち切り――“ハッキントッシュ”の締め出しへ
もう、ネットブックでMac OS Xは使えない? シェアよりユーザー体験を優先
(2009年11月11日)
Mac OS Xの最新アップデート「Mac OS X v10.6.2 Snow Leopard」は、先日リリースされたばかり。このアップデートによって、ネットブック向けの「Atom」プロセッサのサポートは打ち切られた |
米国AppleはMac OS Xの最新アップデート「Mac OS X v10.6.2 Snow Leopard」において、Intelのネットブック向けプロセッサ「Atom」のサポートを打ち切った。
ネットブック並みの手ごろな価格でMac OS Xを利用したいというユーザーの間では、これまでAtomプロセッサを搭載したネットブックでMac OS Xを実行するという方法が採られていた。しかし、今回の措置により、(少なくとも当座は)こうした「Hackintosh(ハッキントッシュ)」を作れなくなった。
なぜ、Appleはこうした措置を選んだのだろうか。“ハッキントッシュ”を締め出すことでユーザーの激しい反発にあうリスクを冒してまでも、AppleはMac OS Xと対応ハードウェアを厳しく管理したいのだろうか。
実際のところ、Appleが最も重視しているのは「ユーザー体験」(Appleが言うところの「the Mac experience」)を守ること。これまで、Appleがかなりの顧客満足度を達成し、維持してこられたのは、ハードウェアから、その上で実行するソフトウェア、店舗環境、Webサイトのルック&フィールまで、事実上すべての要素を徹底的に掌握してきたからこそである。
それを考えれば、無許可のハードウェアの上でMac OS Xを使う、という動きを鎮圧しようという判断はわからなくもない。ほかのハードウェアでも稼働するように、ユーザーが勝手にMac OS Xに変更を加えるようになれば、Appleはもはや信頼できる安定したユーザー体験を保証できなくなる。
そうなれば、問題に遭遇したユーザーは、実際にはハードウェアに原因があるにもかかわらず、Mac OS Xに対して不満を言うようになるかもしれない。
では、MacBookでWindows 7を実行しようとするユーザーがいたら、Microsoftは気にするだろうか。まったく気にしないだろう。合法的にライセンスされたWindows 7であり、きちんと料金が支払われているかぎり、何も問題はない。
Microsoftはハードウェア(PC)の製造・販売を行っておらず、これまで何十年もの間、Windowsのすべての新版とすべてのサービスパック(Service Pack)、すべてのアップデートをどんなハードウェア上でも動作させられるようにすることに力を注いできている。
もっとも、Appleのやり方がそれほど無謀なわけでもない。同社はユーザー体験を徹底的に管理するという方針を貫いており、そのためであれば市場シェアを犠牲にすることもいとわない姿勢だ。
ハードウェアの選択肢を制限することで、Appleの市場シェアが現在の5%からさほど大きく増えないであろうことは確実である。しかし、その5%はAppleのOSとハードウェアに大いに満足している顧客であり、今後もAppleの熱心な支持者であり続けるであろう人たちだ。
コストパフォーマンスの高さで販売台数を増やし続けているネットブック。おかげで、Atomプロセッサの出荷個数も過去最高に(写真は、Acerの最新ネットブック「Aspire one D250」、店頭想定売価は4万6,800円) |
Appleの高価なハードウェアと比べると、ネットブックははるかにコストパフォーマンスの高いプラットフォームである。景気低迷が続く中、ネットブックの人気は上昇し続け、その影響でAtomプロセッサの出荷個数も過去最高の伸びを記録している。
だが、そうした動きに乗じてMac OS Xのシェアを拡大したいのなら、AppleはMac OSに対するユーザーの満足度を維持するため、将来にわたって多様なプラットフォームでの動作を保証しなければならない。それでは、Microsoftと同じ道をたどることになるのだ。
もっとも、“ハッキントッシュ”をめぐる攻防はこれで終わりではない。ハッカーは何度でも戻ってくるものだ。Palmのスマートフォン「Palm Pre」でのiTunesの同期機能をめぐる問題と同様、Appleはこの問題でもいたちごっこを覚悟しなければならない。だが、ユーザー体験を守るためであれば、Appleにとってはそれも小さな代償にすぎないのかもしれない。
(Tony Bradley/PC World米国版)
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