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きょうの社説 2009年11月12日
◎天皇陛下即位20年 北陸にも深く刻まれた皇室像
天皇陛下は即位後、皇后さまとともに、この20年で全道府県を訪れ、石川県では国体
(1991年)と全国豊かな海づくり大会(96年)、富山県では国体(2000年)に出席された。外国訪問や海外戦地の慰霊にも精力的に取り組まれるなかで、より多くの人々に接し、地域の実情に触れる大切な機会と位置づけてきたのが地方訪問である。12日の記念式典に先立つ会見で、陛下は「象徴として望ましい天皇の在り方を求めつ つ、今日まで過ごしてきました」と述べられた。地方の人々の声に丁寧に耳を傾け、気軽に言葉を交わされるその積み重ねこそ、「国民と共にありたい」と願い続けた「象徴天皇」としての歩みであろう。平成の天皇像、皇室像は地方により鮮明といえ、北陸にも深く刻まれている。即位20年を歴史の重要な節目と受け止め、皇室の在り方に思いを寄せる機会にしたい。 両陛下は国体と全国植樹祭、全国豊かな海づくり大会を地方訪問の柱にしてきた。珠洲 市での海づくり大会では栽培漁業など石川の水産振興に期待を託し、漁業者を励まされた。11日の会見で陛下が述べられた「農業、林業、水産業などに携わる人々がさまざまに工夫を凝らし、その分野を守り続ける努力を尊いものに思っている」との言葉は、地方へのまなざしの根底にある認識なのだろう。 両陛下は地方訪問の際には必ず福祉施設の視察を日程に組み込み、雲仙・普賢岳噴火や 阪神大震災など大災害の現場にも足を運んだ。能登半島地震の時には直後の園遊会で谷本正憲知事に「被災者の人たちの健康はいかがですか」「高齢者が多いと聞いています」と気遣われた。陛下が会見で強調された「皆が支え合う社会」の大切さは、福祉施設や災害現場の視察に込められたメッセージでもあろう。 会見では健康や公務の在り方に関し、皇后さまが「野球の松井さんに見習って私も(ひ ざのけがを)忍耐強く治したい」と笑いを誘い、皇室と国民との距離感を縮めてきた皇后さまの人柄と存在の大きさをあらためて印象づけた。両陛下の負担軽減は即位20年を機にさらに議論を深めたい課題である。
◎県の不正経理 ワースト2は情けない
石川県が会計検査院から指摘を受けた不正経理の総額は、26府県のなかで千葉県に次
いで多かった。ワースト2位とは情けない話である。使途不明金や私的流用はないというが、県が行う独自調査で徹底的に調べる必要があるだろう。指摘された2億6188万円のうち、物品購入の1億2343万円分の不正は、1年間 を1会計年度とし、その収支を形式的に均衡させる単年度主義の弊害ともいえよう。これは国の予算にも言えることだが、「使い切らねば損」という仕組みを変えていく必要があるのではないか。 年度内で余った予算は返還しなければならないから、現場は「すべて消化しないと次年 度以降の予算を削られる」という焦燥感にかられる。民間業者に公金を預けて管理させる「預け」や、契約と違う物品を納入させる「差し替え」、事前に納入させた物品と異なる物品の請求書で支払う「一括払い」などは、予算を使い切るためのテクニックと言えなくもない。 だが、それは役所内でしか通用しない理屈であって、納税者の側からは「無駄遣い」と しか映らない。特に架空請求や水増し請求が絡む「預け」は悪質であり、これまで摘発された自治体職員の私的流用事件なども、この手口を利用した例が多くみられる。不正経理は犯罪の温床を自ら抱え込む行為にほかならない。 また、物品以外では賃金と旅費の不正で計1億3844万円が指摘された。このなかに は、補助事業の旅費を使って出張したついでに、別の事業の仕事をこなしたケースなど、不正処理というには酷なケースがあるかもしれない。補助金の目的を拡大解釈して使うのは、補助金の縛りでがんじがらめにされている「地方の知恵」という見方もあろうが、経理処理はやはり厳正であるべきだ。 鳩山政権は、10年度から予算の使い切りを防ぐ「予算執行監視チーム」を各省に設置 し、11年度予算から実質的な複数年度予算編成の導入を目指すという。地方自治法の単年度主義についても見直しの検討を始めてほしい。
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