きょうのコラム「時鐘」 2009年11月12日

 「卑弥呼(ひみこ)の宮殿」とも思われる遺跡が奈良県で発掘された。邪馬台国(やまたいこく)は大和(やまと)にあったと断定するに近い大ニュースである。が、考古学の世界はそう簡単ではない

大反響が予想される発掘ニュースは発表日が肝要だ。全国の研究機関や国内の情報を集めて発表日を調整するケースをしばしば見た。いわば学界の談合だ。同じ日に大ニュースが重なるのを避け、発表効果が最大となる日を選ぶのである

「卑弥呼の宮殿」とも見られる建物跡の発表は、天皇即位20年祝賀の直前となった。絶妙のタイミングである。うがち過ぎかもしれないが皮肉ではない。邪馬台国=大和説は、皇室のはじまりにもつながる重要な研究だからだ

きょうは、新憲法下で初めて即位した陛下の20年を振り返るとともに、連綿と続く天皇家と国民の関係に思いをはせる機会でもある。象徴天皇とは何か。両陛下はどう模索されてきたか。長い歴史を踏まえて考えるのも必要だろう

考古学は今につながる学問である。天皇制も古代から今につながる制度である。「皇室とは祈りである」との言葉を身近な視点で掘り下げていきたい。