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社説

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オバマ氏来日―問われる同盟管理の意思

 オバマ米大統領があす来日する。

 ちょうど1年前の大統領選挙で「チェンジ」を訴え、就任後は内政、外交で次々と新機軸を打ち出してきたオバマ氏。こちらも政権交代を果たした鳩山由紀夫首相がオバマ氏とともに、日米関係の新しい地平をどう開いていくか、国際社会が注目する。

 ともに地球温暖化対策や核軍縮といった地球規模の課題を重視し、多国間の協調的な外交で取り組もうという政権だ。両首脳は、強固な同盟を確認しつつ、ブッシュ政権、自民党政権の時代とはひと味もふた味も違う構想を描いてほしいと願う。

 だが、その同盟ののど元に太いとげがささっている。米海兵隊の普天間飛行場の移設問題だ。ゲーツ国防長官は、大統領来日までに3年前の合意通り名護市辺野古への移設を受け入れるよう迫ったが、日米とも今回の首脳会談では主要な議題にしない方針だ。

 代わりに、閣僚級の作業グループで移設問題の決着を急ぐことになった。確かに、この問題で首脳会談全体をこじらせてしまうのは得策ではない。

 しかし、事態はますます困難さを増している。沖縄県知事や地元の名護市長は辺野古移設を容認するが、政権交代によって県民や地元住民たちには県外移設への新たな期待が生まれている。方針がなかなか定まらない首相へのいらだちも募る。

 一方で、普天間飛行場の危険な状態は一日も早く除かねばならない。日米合意を白紙にすることで、米軍再編という大きな構図のひとこまが埋まらなければ、普天間返還や海兵隊のグアム移転など沖縄の基地負担の軽減策がすべて足踏みしてしまう。

 鳩山首相は会談で問題の難しさ、複雑さを率直に説明してはどうか。避けて通るのではなく、同盟の根幹にかかわるからこそ、真剣に意見を交わす。そうした姿勢が大事だ。

 首相がいずれどういう決断を下すにせよ、それに基づいて現状を打開するには大変な政治的エネルギーがいる。この問題を早期に解決するという強い政治意思を両首脳が表明し、打開への弾みをつける必要がある。

 オバマ氏はNHKのインタビューで、鳩山政権が辺野古移設をめぐる日米合意を検証していることに理解を示しつつ、最終的にはそのまま受け入れるよう期待を表明した。

 政権交代があれば、前政権からの政策の変更はありうるし、それによって摩擦が生じることもある。政権交代の時代の同盟管理のあり方が問われているのだ。

 来年は日米安保条約改定から50年にあたる。両国で政権が代わったこの機会に、21世紀の新しい日米同盟の姿と役割分担を描き直す作業が始まる。それにふさわしい会談にしたい。

即位20年―未来の天皇像考える機に

 天皇陛下はきょう、即位20年の記念式典に臨む。

 その歩みと平成の道のりを重ねて思い返す人は多かろう。敗戦と高度成長という起伏の激しい昭和のあとを受けた20年。経済は頭打ちとなり、大災害が続くなど平穏な日々ではなかった。

 陛下は被災地の避難所でひざをつき、人々の手を握った。各地の福祉施設にも数多く足を運んだ。そのそばにはいつも皇后さまがいた。

 つねに国民を思い、苦境にある人々に声をかける。沈滞し、動揺する時代にあって、お二人の存在は大きな励ましや癒やしとなっている。

 昭和の負の遺産にはまっすぐ向き合ってきた。戦跡に慰霊の旅を重ね、外国との交際の場では過去の反省を込めたお言葉を述べた。歴史の教訓を忘れがちな風潮の中で、平和を希求する姿が強く印象に残る。

 即位以来の海外訪問は15回に上る。皇室外交が、親善や和解に大きく寄与したことは否定できない事実だ。

 陛下はそのように、日本国憲法下で即位した初の象徴天皇として前例のない道を懸命に模索してきた。その「平成流」スタイルが時代の求めに合い、多くの国民に受け入れられた。

 一方で私たちは、象徴天皇の役割と限界は何かを問うことを、天皇陛下に任せきりにしてきたのではないか。陛下の存在感と人柄に、ときには憲法の枠を超える期待もしてこなかったか。

 岡田克也外相が閣僚懇談会で、国会開会式でのお言葉に「陛下の思いが入るように工夫できないか」と述べ、批判を受けたことは、その一例だ。

 国事行為を除き、天皇は政治からは距離を置くのが定めだ。活発な海外での活動や踏み込んだお言葉は、政治的な思惑にからめとられる危険をはらむ。陛下の思いを尊重しながらも、憲法の理念が形骸(けいがい)化せぬよう、私たちは常に敏感でなければならない。

 陛下は来月76歳になる。がんとの闘病も続く。皇太子さまとのしっくりしない関係は心労の種だろう。宮内庁は今年から陛下の公務を見直し、お言葉の機会も減らしてゆくという。

 20年の節目は、これからの皇室のありようを真剣に考える時でもある。

 陛下自身、即位20年に際した記者会見で、皇太子さまと秋篠宮さまが「天皇のあり方についても、十分考えを深めてきていることと期待しています」と述べた。次代を担う皇太子さまからも、考えをもっと聞きたい。

 国民の側も、憲法の制約を踏まえつつ、どんな役割の天皇像を求めるか、思いを巡らせよう。

 将来の皇位をどうつなぐかという難問もある。女性・女系天皇を認めるかどうかの議論は、3年前の悠仁さま誕生で止まったままだ。合意形成に向け、熟議を再開したい。

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