電子マネーは自社グループの「nanaco(ナナコ)」だけ――。そんな孤高の戦略を貫いてきたセブン-イレブン・ジャパンがついに“鎖国”を解いた。今年10月、ビットワレットの電子マネー「Edy(エディ)」を導入する。
これまで、セブンイレブンは独自の電子マネーにこだわってきた。グループ内でしか使えないポイントを付与すれば、顧客が他チェーンへ流れるのを防げる。また、独自に集めた顧客情報は、商品開発や立地タイプ別の商圏分析に生かせるからだ。
今回、方針を変えてEdy導入に踏み切ったのは、こうしたメリットよりも、独自の電子マネーを堅持することのデメリットの方が大きくなってきたことを意味する。
顧客を逃がすリスク増大
というのも、Edyや鉄道系の「Suica(スイカ)」、後払い式の「iD(アイディ)」など他社と共通で使える電子マネーなしでは、新規客を取り込めなくなってしまったのだ。
かつて、こうした電子マネーは決済の手軽さや特定企業とのポイント交換ができることなどから、導入すれば、顧客が「わざわざ訪れるインセンティブ」にこそなれ、「逃がすリスク」にはならなかった。
ところが、今や電子マネーの総発行枚数は、1億3000万枚近くに達し、「1人1枚時代」となった。また、コンビニエンスストア3位のファミリーマートがイオン系の電子マネー「WAON(ワオン)」の導入を決めるなど、顧客の利便性重視の動きも続く。
そんな中、自社グループのみの電子マネーにこだわり続ければ、客足は増えるどころか減る危険がある。実際、セブンイレブンのある加盟店オーナーは、「レジまで来て、『(ほかの電子マネーが)使えないならいいです』と手に持っていた商品を棚に戻して帰ってしまうお客様もいた」と打ち明ける。
同時に、当初の狙いだった「充実した顧客情報」という強みも生かせる状況にない。
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