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世界戦G
2009/11/09(Mon)
前日と言わず、当日までバタバタしてた。
試合当日にきての心配事は睡眠だったが、幸いよく眠れた。
相手陣営の妨害とか何かあるのではと用心していたが、何もなかった。むしろよくしてくれた。
試合が終わるまでは、だけど。
ホテルの人間も最初は警戒してたが、大丈夫。
腹に何か一物ある人間の目をしたやつはいない。
西岡に聞いた話だが、試合前日深夜に二回電話かかってきてスペイン語で何やら言ってたと。
本当に間違い電話だったのか、単なる嫌がらせだったのかは今だに分からないと。
電話線は念のため切っておいた。
別の人間から、一時間毎に何かと用事で部屋をノックされたと言う話も聞いたが、
そういうこともなさそうだ。
試合前日は違う人と寝る場所変えようかとも思ってたが、その必要はなかった。
後は何も問題はない。
やるだけだ。
試合前日に計量兼記者会見。
またも握手は両手で笑顔で、俺はわざとヘコヘコと頭を下げた。
よくいるやけに愛想のいい噛ませ外国人と同じ態度。
ファイティングポーズで見合って下さいと言われ、センチェンコは俺の目を見てきたが、
俺は目を逸らし相手の首もとの辺りを自信なさ気に見つめた。
相手のプロモーターは今回の試合の話もそこそこに、スーパーチャンピオンのモズリーとの
対戦がどうのとか、リッキー・ハットンとの試合が流れたためこういう試合(消化試合って
ことか?)になった、とか話してる。
大和は怒ってたと言ってたが。
俺は内心ほくそ笑んでた。
しめしめ。
もっと言え。
俺を眼中から外せ。
そうそう、SASAKIなんて問題にしてなくていい。
いい感じだ。
もっともっと俺をなめろ。
油断しろ。
番狂わせの舞台は、整った。
そうそう、前日にグローブチェックをして自分のサインをグローブにいれるんだけど、
提示されたのがなんと8オンスグローブ。
日本ではS.ライト級までが8オンスでウェルターからは10オンス。
東洋太平洋タイトルマッチも同じ。
常識だ。
10オンスといえばヘビー級と同じグローブだ。倒し難くて仕方ない。
逆に8オンスはミニマム級と同じグローブ。当たれば倒せる。
この違いは大きい。
だから俺はS.ライトからウェルターに上げるのを長年渋っていたのもある。
で、当然10オンスだと思ってたんだが。
現地入りしてから相手側に渡された、試合と同じグローブというのも間違いなく10オンス
だったが。
前日に渡されたグローブは、なぜか8オンス。
WBAスーパーバイザー(チャンピオン統括団体WBAの責任者)に
「Are you sure?(確かか?)」なんて聞かれて確かだと答えたが。
しばらくして持ってきた紙には、ウェルターまでは8オンスと明記されている。
こちら側はもちろん抗議する構えだったが。
俺は頭の中で即座に考えた。
8オンスと10オンスと、どっちが自分にとって有利か。
言うまでもなく、8オンスのほうがKO決着にもっていきやすい。
判定になれば、当然地元が有利。
だから俺が望むのはKO決着。
ならば8オンスのほうがこちらとしてはむしろ都合がいい。
とやかく騒ぐのはやめにして、ウェルターまで8オンスと書かれた紙にスーパーバイザーの
サインを書いてもらう。
後からやっぱり10オンスだったからゴチャゴチャと言われたらたまらないから。
向こうも8オンスで俺を確実に倒したいんだろう。
上等。
いいじゃんか。
俺を倒しに来いよ。
その方がこっちにもチャンス広がるからさ。
KO決着は、俺も望むところだ。
男と男の勝負は、他人の判断じゃなくて、自らの武器によって雌雄を決するべきだ。
佐々木基樹