夫の高相祐一被告とともに覚せい剤取締法違反(使用、所持)の罪に問われた女優、酒井法子(本名・高相法子)被告に対し、東京地裁は9日、懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)の判決を言い渡した。酒井被告は、高相被告と離婚を決意したことなどが酌量されたが、一方で覚せい剤への常習性や依存性を指摘され、逮捕前の逃亡劇を「卑劣」と断罪された。裁判官から「いろんな役を演じたが、事件は現実」と目を覚ませとばかりにさらなる反省を促され、判決主文を読み上げさせられる異例の事態となった。
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執行猶予付きの有罪判決が言い渡されると、酒井被告は、村山浩昭裁判官をじっと見て、軽くうなずいた。午前11時28分。ブラウス、ジャケット、スカートにパンプスと黒で統一した姿で入廷。裁判官に促され証言台に立つと、最後まで背筋をピンと伸ばしたまま、下された判決を聞いた。
判決理由では、4年前から覚せい剤を使用し、昨年夏からは毎月のように使ったこと、鹿児島・奄美大島での使用と、その残りを東京の自宅マンションで保管・所持していたことなどに対し、裁判官から執着と親和性、さらにある程度の常習性、依存性が指摘された。さらに高相被告が逮捕された際に、現場から立ち去り、その後、犯罪の発覚を免れるために6日間に渡り、転々と逃亡したことを「卑劣」と断罪された。
執行猶予付き有罪判決は、初犯ということで予測されていた。初公判で夫・高相祐一被告との離婚を宣言。裁判官は「覚せい剤と絶縁する決意。そのためには覚せい剤の使用を勧めた夫との離婚も考えている」と認め、さらに「その母親(継母)らが被告の監督を約束していること、すでに芸能プロダクションを解雇され、社会的な制裁を受けている」と執行猶予の理由を説明した。だが、判決以上に裁判官の“眼”は、厳しさがあった。
閉廷前、裁判官から説諭を受けた。
「あなたはこれまでドラマや映画でいろんな役をしてきたでしょう。でも残念ながら事件も裁判も現実です。この重みは今後、実感することでしょうが、その重みに負けずに薬物から手を切って更生されることを望みます」
保釈後の会見で流した大粒の涙や、初公判時の覚せい剤の害悪を述べる際に、セリフを読み上げるような感じだったことなど、女優としての顔をかいま見せる姿に釘(くぎ)を刺すかのような言葉。早く目を覚ませ!とばかりに、さらなる反省を促された。酒井被告はただ、かみしめるように聞き、うなだれるしかなかった。
それだけで終わらなかった。その後、裁判官から「主文を口でいって下さい」と告げられた。被告が、自身の判決主文を法廷で読み上げさせられるのは異例のこと。酒井被告は一瞬とまどいの表情を見せ、一度は言いよどんだが、再度促されると、気を取り直したように「懲役1年6月、執行猶予3年です」と、自らに言い聞かせるように述べた。
罪の重さを確認させられた。「くれぐれも忘れないで下さい」と念押しされ「はい」と答えた酒井被告。本当の反省はこれからになる。