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マクロ政策についてのまとめ
ダイヤモンド・オンラインには、上杉隆氏に続いて保田隆明氏も、定額給付金が「マクロ経済学の大原則」だとかいう記事を書いている。こんな初歩的な間違いを編集部がチェックできないのは、ジャーナリストに経済学が理解されていないからだろう。こうした誤解が国会の混乱した増税論議の原因にもなっているので、現在のマクロ経済学の通説を簡単にまとめておこう：
さらに日本の場合、財政政策は財政赤字によって制約され、金融政策はゼロ金利で制約されているので、マクロ政策の自由度も限られている。定額給付金は「負の財政政策」となり、日銀のCP購入などの効果もマージナルなものだ。2次にわたる補正予算が不発に終わった今、GDPを決めているのは1％台に低下した潜在成長率である。政府が考えなければならないのは、解雇規制の撤廃などによって労働生産性を上げ、イノベーションを促進して潜在成長率を高める長期的な規制改革である。
追記：こうした最近のマクロ経済学の動向をやさしく解説した論文が、日銀のレビュー・シリーズで公開されている。
- 財政政策の効果は疑わしい：保田氏が信じている1960年代の経済学とは異なり、現代のマクロ経済学では、財政政策の乗数効果はきわめて低いというのが実証研究の結果である。特に大恐慌については、ケインズ的な財政政策の効果はゼロに近かったというのがChristina Romerなどの結論だ。
- 今年の減税を2年後の増税でファイナンスするのは無意味だ：自民党の財政タカ派は、なぜか増税の時期を明記することが政治家の「矜持」だと思っているようだが、2年後に増税するという条件つきで2兆円の減税を行なうのでは、その効果は中立命題によってほとんどキャンセルされるだろう。
- GDPが低下しても、景気対策が必要とは限らない：現代のマクロ経済学では、GDPが長期的な定常成長水準である潜在GDP(potential output)より高いか低いかを重視する。すなわち実質GDPをY、潜在GDPをY*、物価上昇率を��Pとすると、フィリップス曲線は次のようになる（aは需要パラメータ、bは外部ショック）：
��P＝a(Y-Y*)+b
- マクロ政策によって潜在GDPを高めることはできない：財政・金融政策の目的はGDPギャップ(Y-Y*)を縮めて��Pを安定化することであり、潜在GDPそのものを高めることはできない。潜在成長率を高めるには、生産性(TFP)を高めるミクロ的な改革が必要である。
- GDPが潜在GDPより大きい場合は、需要喚起策は有害である：GDPがマイナス成長になっても、潜在GDPより高い（Y＞Y*）ことがある。1970年代の石油危機や1980年代の日本、あるいは2000年代のアメリカは、そういう状況だったと考えられる。こういう場合、財政・金融政策で需要を追加すると、（物価または資産の）インフレをまねく。
- 財政政策は「つなぎ」にすぎず、無駄も多い：政府支出の効果はその年に限られ、潜在GDPを引き上げる効果もないので、効果はそのとき限りである。それが効果を発揮するのは、大幅な負のGDPギャップ（Y＜Y*）が発生し、短期間に潜在GDPに復帰する場合に限られる。また財政支出には政治的なバイアスが大きく、バラマキによる無駄が多い。
- 財政政策の有効性は、財政赤字で制約される：現在の日米のように財政赤字が大きくなると、財政破綻への不安によって需要創出効果がキャンセルされるおそれがある。特にアメリカの場合、経常赤字も大きいので、オバマ政権の巨額の財政政策によってドルが暴落することを憂慮して、株式市場は下げている。
- 短期的な調整は、金融政策で行なうことが望ましい：潜在GDPからの乖離を修正するのは金融政策の役割だというのが、現在の経済学の標準的な理解である。この場合、実質金利が自然利子率より高いかどうかが、金融を引き締めるか緩和するかのメルクマールとなる。アメリカの2000年代のように長期にわたって自然利子率を下回る低金利を続けると、バブルが発生する。
- デフレでゼロ金利になると、金融政策はきかない：名目金利がゼロになると、金融政策の有効性は大きく制約される。特にデフレの場合、マイナス金利にする方法は、理論的にはあるが、実務的には困難だ。この状況で通貨をいくら大量に供給しても、貨幣乗数の低下によって相殺され、マネーストックは増えない。
- 非伝統的な金融政策のリスクは大きい：実質金利が自然利子率を下回っているとき、日銀が行なったゼロ金利や量的緩和は、結果的には円キャリー取引を誘発して、アメリカの住宅バブルを促進した。バーナンキが行なっているリスク資産の購入も、過大なリスクテイクによってFRBが巨額の損失をこうむると、金融システムへの信頼が崩壊するおそれがある。
- 人為的インフレ政策とインフレ目標は異なる：物価を抑制するためのインフレ目標は多くの中央銀行で採用されており、日銀もゆるやかな「理解」は共有している。しかし中央銀行が期待形成をコントロールする人為的インフレ政策は、それとはまったく異なる政策であり、理論的にも実務的にも不可能だ。アメリカの非伝統的な金融政策でもインフレは起こらず、クルーグマンも撤回した。
さらに日本の場合、財政政策は財政赤字によって制約され、金融政策はゼロ金利で制約されているので、マクロ政策の自由度も限られている。定額給付金は「負の財政政策」となり、日銀のCP購入などの効果もマージナルなものだ。2次にわたる補正予算が不発に終わった今、GDPを決めているのは1％台に低下した潜在成長率である。政府が考えなければならないのは、解雇規制の撤廃などによって労働生産性を上げ、イノベーションを促進して潜在成長率を高める長期的な規制改革である。
追記：こうした最近のマクロ経済学の動向をやさしく解説した論文が、日銀のレビュー・シリーズで公開されている。
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共和党側のオバマ政権の景気刺激策を過剰とする主張を批判するAdam Cohenによるthe New York Timesの寄稿記事に対して、St. Lawrence Universityの経済学者Steven Horwitzが地元紙上で反論しています。
元記事
http://www.nytimes.com/2009/01/12/opinion/12mon4.html?_r=1
反論
http://www.watertowndailytimes.com/article/20090119/OPINION02/301199987/-1/OPINION02
日本にとって必要なのは｢不況の原因を皆が共有すること｣と潜在成長率を長期的な視点を持って高めることと言うことになりそうですね。日本の経済成長の足を引っ張っているホワイトカラーの低生産性を何とかしなければ、成長率を高めることは期待できそうにないですね。
最近、ブルーカラーの生産性も下がってきているという報告も見たことがありますので、どうもムダが多いみたいです。少なくとも企業業績に1割でもいいので従業員給与も連動させてもらいたいものです。景気が悪くなっても雇用が確保されている状況でやる気を出す人間は珍しいでしょうから。
経済の事をあまり分からない者が、
コメントしていいものかどうかいつも迷ってしまいます。
不況の原因が何かを特定＞
オズの魔法使いと言う愚話を思い出しました。
ウィキペディアによれば、
経済の話に準えられるのだそうです。
http://pub.ne.jp/phrasemonsters/?entry_id=1916430
エメラルドの町が日本に成っている？？？
いつも専門的に書けなくて申し訳ありません。
当たり前の正論ですが、経済に限らず、当たり前の正論が通用しない日本。本当に大丈夫なのか心配になります。
仕事量の増減に応じて正社員を自由に増減できないから、ピンハネ料を払って下請けネットワークに頼る必要がある。「解雇できない正社員」という条件を課されてるから、元請けと下請けを分離して、仕事量と人員の調整をはかるしかない。これが再帰的に連鎖して、多重下請け構造が成立。
この場合ピンハネ料はおかしな法律をかいくぐるための手数料みたいなもんだから、おかしな法律を直してしまえば不要になる。手数料分のGDPは減少するけど、穴を掘っては埋めるような無駄な仕事が減った分、その労働力は生産性の高い分野に移動する可能性がある。
ここで本当に移動すれば、その分GDPが上がってトータルで幸せになれる。問題は、本当に移動するかどうかが今の私には分からない所（笑）。また調べてみます。
雑談で失礼しました。
先生の雇用問題に関する一連のエントリーとそのコメント欄を読んでいると、私もどうもそうなのかなという気がしてきました。
このような危機的状況であれば正社員切りも止む無しでしょうが、もう少し緩やかな調整が起こった場合には派遣というバッファを利用することを想定していたのでしょう。
だから、仲介業者には需要があるけども、それは業者に人材の発掘や育成、マッチングの優れた能力があるからではなく、単に現行制度に対する保険に過ぎない。
雇用の流動性が増せば雇用主たる企業が労働力をダイレクトにコントロールできるようになり、ムダがなくなった分は労働者にも恩恵があるのではと思います。
ここ数年の好況では転職が比較的容易で、自分のしたかった仕事はこんなものではないと奔放に飛び出しても次の行き先があり、その上待遇が良くなることも多かったと思います。
今は状況が変わっていつ自分の首が切られるのかと戦々恐々でしょう。そうすると正社員の座は既得権であると同時に、自らの自由を縛る鎖でもあると気付く人が出始めるのではないでしょうか？
商工会青年部のみなさんは、消費税を上げることが政府与党の目的で、定額給付金はそのためのエサだと見てますよ。これでは、衆院選で勝てない！
残された最後の手段は、都議選との同日選になりますね。都議選との同日選であれば、たとえ負けても、被害を最小化できるでしょう。公明党がなんと言うかは知りませんが、同日選をやってせめて２００議席確保しなければ、自民党は来年の参院選でも惨敗すると思います。
政治ジャーナリストは、いったい何を見ているのだと言いたくなりますｗ
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