2009年11月10日 18時55分更新
「核兵器のない世界」の実現を訴えるアメリカのオバマ大統領は、NHKの単独インタビューで、被爆地の広島と長崎の訪問について、今週13日からの日本訪問では実現しないものの、大統領の任期中には訪問したいという意向を初めて示しました。
アメリカのオバマ大統領は、今週13日に就任後初めて日本を訪問するのを前に、NHKの単独インタビューに応じました。
この中で、オバマ大統領は、被爆地の広島と長崎を訪問する可能性について「今回は、たくさんの国を訪問する過密な日程のため、残念ながら訪問できない」と述べました。
その上で「広島、長崎の記憶は世界の人々の心に刻み込まれている。大統領の任期中に訪れる機会があれば、名誉なことだ」と述べて、アメリカ大統領として初めて広島と長崎を訪問したいという意向を示しました。
またオバマ大統領は核の拡散防止体制の強化に向けて「核兵器をすでに保有している国は、減らしていく必要があるし、保有していない国は、核兵器を開発しないと宣言すべきだ」と述べ、核大国のアメリカとロシアが率先して核兵器の削減を進めていくことに強い決意を示しました。
さらにオバマ大統領は「核の拡散防止の取り組みにおいて、日本の発言はとても重要で、鳩山総理大臣は、すでに貢献している」と述べ、唯一の被爆国である日本と協力して核の問題に取り組む姿勢を示しました。
アメリカのオバマ大統領が任期中に被爆地の広島と長崎を訪問したいという意向を示したことについて、広島市の平和公園で市民などに聞きました。
このうち親戚が被爆したという女性は「とても良いことだと思います、原爆の被害をしっかり見てもらうことで、核廃絶に向けたきっかけになればいいなと思います」と話していました。
また18歳の男子高校生は「オバマ大統領はまだ何も具体的なことを成し遂げていないので、被爆地を訪れるというのは、人気取りのような気がします」と話していました。
一方、呉市在住で仕事でアメリカをよく訪れるという女性は「アメリカの大統領が被爆地を訪れるのは日米関係の中でも大きな出来事だと思います。原爆の被害から復興した今の町を見て、平和の大切さを改めて感じてほしい」と話していました。
さらに静岡県から観光で平和公園を訪れた女性は「原爆の写真や資料を見てとても重い気持ちになりました。原爆を落とした国の大統領が被爆地を訪れるのは複雑な思いもありますが、原爆の被害をきちんと知ることで、今後の核廃絶が大きく進むことを期待します」と話していました。
アメリカのオバマ大統領が大統領の任期中には被爆地の広島と長崎を訪問したいという意向を示したことについて、日本被団協・日本原水爆被害者団体協議会の代表委員で、広島県被団協の坪井直理事長は「一日も早く来てほしいし、みんなで歓迎したい。原爆慰霊碑を参拝し、1人の人間として『原爆投下は間違いだった』と言ってほしい」と話していました。
その上で坪井理事長は、「オバマ大統領は『核兵器のない世界』をつくると言っているが、広島訪問をきっかけにもう一歩踏み込んで、『戦争のない世界』をつくると宣言してほしい」と期待を寄せていました。
もう1つの広島県被団協の金子一士理事長は「広島訪問は結構なことだ。本気で核兵器をなくすのであれば、亡くなった多くの被爆者にお悔やみを言ってもらいたい。広島では、慰霊碑の参拝や原爆資料館の見学だけでなく、我々被爆者との対話も行って、核兵器がいかに反人類的な兵器かをしっかり学んでほしい」と話しています。広島市の秋葉市長と長崎市の田上市長は、連名でコメントを発表し「これまでもオバマ大統領に対し被爆の記憶が残る現地を訪れ、核兵器のない世界を創るためにより強力なリーダーシップを発揮していただきたいと願ってきた。訪問ができるだけ早い時期に実現することを期待する。歴史的訪問がよりよき未来を作る上での大きな一歩となり、被爆者の掲げてきた和解の精神がその道を照らす光になることを確信している」として、一日も早く訪問するよう呼びかけています。