【格闘技 裏通信】資金難ハッスルに未来は見えず

大会前日ドタキャンで後楽園ホールから“絶縁状”

2009.11.10


インリン様参戦で話題を集めたハッスルも、金策が尽きて開催中止に追い込まれた【拡大】

 プロレス団体「ハッスル」の今後が見えない。10月28日の記者会見で、山口日昇社長は「会社として不安定な状況が続いている」と、金銭的な面で運営が困難であることを明かし、翌29日の後楽園ホール大会を含めた12月までの4大会の中止を発表。経営陣を刷新した新体制で、12月25日の両国国技館大会から再スタートを目指すとした。

 しかし、大会前日でのドタキャンに混乱も発生。29日の後楽園ホールには、中止報道を知らなかった数十人のファンが訪れていた。現場では若手選手が謝罪し、広報が「選手にお金のやり取りを見せたくない」と現場での返金はなし。

 ある男性ファンは、「会社に何度電話しても誰も出ない状況だったので来てみたけど、取ってつけたような理由を述べて若手選手を盾にしていて不愉快だった」と怒りを露にした。

 その矛先は業務提携しているパチンコメーカーの京楽産業にも及び、抗議の電話などが相次いだ。取材に対して京楽産業は、「業務提携はしていますが、イベントの開催についてまで詳しく関知していないので…」と困惑。今後の提携に暗雲をもたらした。

 また、会場の後楽園ホール関係者も、「中止の連絡があったのは28日の17時ごろ。非常識と言わざるを得ない」と厳しい表情だ。ハッスルからキャンセル料は支払われたものの、筆者の取材に「もう会場を貸すことはない」と断言した。

 エンターテインメント色を前面に打ち出したプロレスで、芸能人を多数起用するなど話題の多かったハッスルだが、採算面では厳しく、本欄では昨年夏に既に資金難を報じていた。

 実際、今年2月にはタレントのインリン・オブ・ジョイトイがギャラ未払いを求めて提訴。最近では人気選手が姿を消し、現在も選手や関連業者への支払いは遅延されたまま。過去にハッスルに出場した選手によれば、「ここ1、2年は主催者が金策にばかり走っていた印象で、イベントの中身が二の次になっていた感じがした」という。

 「何よりファンタジーの世界を見せてきたハッスルが、こうした現実の姿を露呈させたことでファンも興ざめしているのが致命傷」(専門誌ライター)と、回復は難しい見方をする。

 山口社長は「メガイベント方式をとったのが原因」と、大会場での興行を軸にした運営を問題視。今後は小規模な会場で興行数を増やしたいとしているが、その主要会場として欠かせない後楽園ホールから“絶縁状”を叩きつけられては絶望的だ。

 ハッスル出場選手の中には、「今後の支払い条件などがきちんと約束されないのなら他団体に転出する」と、安易に試合出場には応じない姿勢を見せている者もいる。内外ともに信用を失った形での再出発は前途多難だ。(格闘技ジャーナリスト 片岡亮)