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きょうの社説 2009年11月10日
◎金沢検定 学びは都市づくりの原動力
今年で5回を重ねた金沢検定は2876人が受験し、最難関の上級は最初の15人から
203人に増えた。ジュニアかなざわ検定からのレベルアップをめざす小中学生も目立ち、世代を超えたすそ野の広がりとともに上位層の厚みが増してきたことは、金沢検定の定着ぶりを示している。金沢市は今年、歴史まちづくり法に基づく「歴史都市」第1号認定を受けたほか、ユネ スコの「創造都市ネットワーク」にクラフト(工芸)分野で登録され、歴史や文化を前面に出した都市づくりに弾みがつく年となった。手持ちの財産をさらに磨き続けるには、そこに住む人たちの理解や価値観の共有が欠かせず、金沢検定に象徴される学びの意欲や熱気はこれからの都市づくりの原動力と言ってよいだろう。 金沢では城下町遺産の世界遺産登録運動がきっかけとなり、金沢城跡をはじめ、大名墓 所、茶屋街、寺院群、用水、塩硝蔵などの文化財指定やそれに向けた調査が加速した。金沢城跡からは玉泉院丸庭園の遺構が見つかり、市街地では防御施設の升形、加賀八家の筆頭である本多家上屋敷の遺構なども発掘されている。藩政期の歴史が現在進行形で動いており、城下町の遺産に光を当てる都市づくりは結果として市民の学びの意欲を引き出している面がある。 八田與一や高峰譲吉、鈴木大拙など金沢ゆかりの偉人にしても単なる歴史上の人物にと どまらず、映画化や顕彰施設の建設であらためて光が当たり、国際交流にも一役買っている。その点で金沢は「学びがいのある街」といえ、金沢検定が問う幅広い知識も現代と密接につながるところに学ぶ楽しさがある。 金沢市内で復活した旧町名はこの10年で11に増えた。町名という無形の文化財に価 値を見いだす住民の存在がなければここまで増えなかっただろう。町家の保存活用や無電柱化の推進、寺院群などの面的な文化財指定など、金沢が取り組むこれらの課題も住民の理解や協力が不可欠となる。金沢検定が引き出す貴重な学びの力を、都市を磨き、魅力を引き出すエネルギー源にしていきたい。
◎2次補正検討へ 景気底割れ回避に必要
09年度補正予算で執行停止した約2・9兆円は、景気の「底割れ」回避のために使い
たい。出し惜しみして、「子ども手当」などの10年度予算のために持ち越すなら、景気の下振れリスクは格段に高まるだろう。政府は先にまとめた緊急雇用対策により、介護や農林業分野などで10万人の雇用創出 を図る考えだが、即効性には疑問がある。雇用対策で二の矢、三の矢を放つと同時に、エコカー助成やエコポイント制度などのように、消費マインドを刺激し、企業の生産を活発化させるアイデアがほしい。 政府の試算では、1次補正予算の一部執行停止により、経済成長率が0・2%程度押し 下げられるという。麻生前政権による総額14兆7000億円の補正予算は、1・9%の押し上げ効果を見込んでいたから、補正予算の効果は1・7%程度にまで縮小する計算になる。これから来年3月末にかけての重要な時期に、景気を下支えしてきた財政支出が途切れてしまうのは大きな不安材料だ。 政府は緊急雇用対策の実施によって「少なくとも3000億〜4000億円の引き上げ 効果がある」としているが、中身は資格取得の支援強化や雇用関係基金の前倒し執行など新規予算を必要としない施策に限られており、明らかに力不足である。 今年度当初で46兆1030億円を見込んでいた税収は、景気低迷で40兆円の大台を 割るとみられる。執行停止分を2次補正で使い切ってしまうと、ただでさえ苦しい10年度予算の編成がさらに難しくなるのは間違いない。 だが、今ここで景気が底割れするような事態になれば、財務省の予測通り、10年度の 税収も2年連続で40兆円を割り込む可能性が高まる。深刻な税収不足は数年続き、国はもとより地方財政も壊滅的な打撃を受けかねない。予算を小出しにせず、思い切った手を打つときではないか。 政府は、内需拡大を目指した中長期の経済成長戦略を年内にも策定する方針を表明して いる。その具体的な成果をぜひ2次補正にも反映させてもらいたい。
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