医療現場に「チームの力」を
名城大教授で元検事の郷原信郎氏は11月7日、東京都内で開かれた医療制度研究会主催の講演会で「医療をめぐるコンプライアンスと検察」と題して講演し、医療過誤・事故の刑事事件の特徴などを指摘した上で、医療現場での「チームの力」の重要性を訴えた。【関連記事】
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講演で郷原氏は、医療過誤を刑事事件として扱う際の問題点などを説明。また、2004年の福島県立大野病院事件を例に挙げ、手術途中で待機中の家族に説明しなかったことを問題視した。その上で、スタッフ一人ひとりがチームとして十分に機能する必要があったとし、「チームの力」の重要性を強調した。
その後の質疑応答では、参加者から「大野病院事件で、チームが機能していなかったということに対しては医者として少し疑問を持つ」「われわれは『チーム』ではなく『寄せ集め』」との声が上がった。
また、司会を務めた同研究会副理事長の本田宏氏は、患者の家族に対応する人材について、「マンパワーを現場に投入しないとまずい。人がいないので、なかなかできないのが日本の現状だと思う」などと現場の人手不足を指摘した。
これに対し郷原氏は、「最終的には医療体制や制度の問題で考えなければならない。今の医療制度の現状を飛躍的に良くするような特効薬は考えられない。メディエーターなどの人材をどうやって育成するかの見通しも立っていない。この状況はしばらく続くと思うので、少しでもいい結果を生み出していくために、限られたリソースの中でチームの力を高める努力をする必要がある」と述べた。
参加者からはまた、医療過誤事件では「直近の行為者」である医師の責任が問われるが、医療者の不足などが原因であれば、充足の手を打ってこなかった監督官庁を追及できないのかとの声も上がった。
これに対し郷原氏は、「一方的に医師を批判・非難することだけで問題が解決すると考える人ばかりではないと思う。重要なことは、(国民に)健全な常識を持ってもらう方向に医療界全体が動かないといけない。反対の方向に扇動し、世の中に誤解を与える(一部報道などの)動きについては、徹底的にチェックしないといけない」などと述べた。
また、市民によって構成される検察審査会が「起訴相当」の議決を2回出せば自動的に起訴する仕組みとした改正検察審査会法に関して、医療事故でも「おそらく不起訴処分に納得しない被害者遺族は、どんどん(同審査会に)審査請求してくると思う」としたものの、医療事故の特殊性から、市民には医療者の刑事責任を問うべきかどうかの判断にはかなり抵抗があるとし、医療者が患者・遺族にどのような対応や情報提供をしたかが市民にとって非常に分かりやすい点であり、その印象が検察審査員の判断に影響するのではないかとの見方を示した。
更新:2009/11/09 16:17 キャリアブレイン
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