ネットオークションの危ういさ!
売る者、買う者、そして管理する者も全て「自己責任」を承知で進めているネットオークションは、確かに危うい取り引きが日常茶飯事進められているのだろう!そこには嘘も、本当も半信半疑で疑心暗鬼なまま、人を信じ、また信じきれないのも事実だろう・・・おかしな商取引だ!
誰でもマニアックなものがある。ヒト・コト・モノに対する執着は、時として悲劇を生みだすこともある。とくに自身の眼力に頼ってばかりいると、とんだクワセモノを掴まえさせられることも往々にあるものだ。バーゲンで人混みをかき分け買ったものが、どんなにコーディネートしても浮いてしまうため、一回も袖を通さずに箪笥の奥にしまわれたままのモノや、一瞬の判断で高額な絵画を買ったものの部屋の雰囲気に馴染まず、また売るにしても買値からグーンと下げられた下取り価格に唖然とし、その瞬間で衝動買いを反省することになる。
本人はその買う瞬間までいたって自分の欲求と満足を得てはいるものの、その気持ち以上に、、「自分がこの商品を買わなければ誰かがきっと買うだろう」という損失(被害妄想的)への観念が高まり、今すぐに結論を急がなければと感じてしまいトンデモないモノをつかまされることになる。本人はいたってクワセモノを掴まされたことを知った時に落胆するが、その金額が大きければ大きいほどに他人事である本人以外はとても愉快で面白いものと言える。
テレビで長寿番組になりつつある『開運!なんでも鑑定団』で、高額をはたいて家族には内緒で買ったものや、お金の工面で差し出された担保と言える品物への目利きをした上で多額のお金を用立てたので是非ともその品物を鑑定してほしいという視聴者が番組に登場する。その依頼者の骨董に対する目利きや、また人の良さ(情)にほだされて受け取った行為そのものをあざ笑うように、“真っ赤な偽物”として、大きな電光掲示板が打ち出した金額が出費した金額とは天と地の低価格になった時、この番組の面白さがあると言える。確かに逆に予期せぬ高額で、本物と言った結果についても興味はそそるが大半は自慢げに品物をほめちぎり、いかに自分の眼力が正しいかを説いた後、奈落の底に突き落とす金額と偽物として証明された場合、テレビの向こうで見る視聴者の笑い声が聞こえるものである。
そんな馬鹿げた話が今回のネットオークションでの事件ではないだろうか。ネット犯罪とでも言える実物に触れることもなく、露出される写真や説明文だけで競り落とすネットオークションはまさに危うい商取引が日常茶飯事に行われている。確かにルールもあり、規制もあるが、相手の顔も人柄も見えない個人同士の商取引には、売る側、買う側の人となりが見えにくいのも事実である。
売る者は家電、書籍、ファッション、玩具、骨董美術など様々なものが揃い、最近に気づいたのだがプランナーが描く“企画書”“シナリオ(台本)”までもが取り引きされているようだ。確かに有名な番組やイベントのもとになった企画書は、関係者のみに配布された少数部数しか作らないので、その価値観は業界人にとってはコレクションとして欲しいものかもしれない。過去にある大学教授が企画書を集め、企画ミュージアム構想をしていた話があったが、その中に私の企画書の幾つかがあったと人づてに聞いたことがある。また私の身近には私の企画書のコレクターと称するイベント会社の社長もいて、書いた本人すら持ち合わせていない手書きの企画書、和文タイプライター作成企画書、ワープロ作成企画書のものまで持っている御仁もいるにはいる。現在は企画書というペーパーよりも、データ保存されるため、MOフロッピーやUSBスティックに保管されており、場所を取らずにデジタル保存できるのですごく便利だ。
話はいつも通りに脱線したが、そんな何でも出品されるネットオークションで、まったくの偽装品が高額で落札されたという事件が新聞で紹介された。記事は以下の通りである・・・
●奈良美智さん画風そっくり~絵2点、ネット競売70万円落札
インターネット競売サイトのヤフーオークションに人気画家、奈良美智さんの作品に酷似した画風の絵2点が出品され、「自分が描いた作品ではない」と奈良さん自身が指摘したことが入札者に伝わらないまま、計70万円で落札されたことが4日(11月)、分かった。
ネットオクーションは売買の気軽さで人気が高まる半面、商品の価値があいまいなまま取引されやすいことが指摘されている。画家本人が自作ではないと判断しても競売の場に反映させるのが難しいという問題点が、浮き彫りになったかたちだ。
2点は奈良作品に特徴的な厳しい目つきの子供を描いた作品で、サイズはいずれも縦約60㌢、横約50㌢。「水彩画?奈良美智?大型?大作?」などと題して出品され、10月23日に入札開始。出品者は入手経路について「死去した祖父の家の蔵から出てきた。真相や価値は素人のため分からない」としていた。
奈良さんは出品者に対し、自らの作品ではないと画家本人から連絡があった旨を表示するよう同サイトのシステムを通じて要望。だが回答はなく、「鑑定等はしておりませんので奈良美智の作品ではありません」などの説明が追加された。競売は同27、28日に締め切られ、2点は46万円と約21万円で落札。未鑑定であることが掘り出し物への期待感を持たせたと関係者はみる。出品者は取材に対し「申し入れが本人かどうか分からないので『奈良美智の作品ではない』とだけ記載した」と回答。
同サイトを運営するヤフージャパンは「奈良さんの作品だと断定していないので、オークションのガイドラインには違反していない。画家本人から(同社に)申し入れがあれば、出品者に連絡を取るようにしたい」としている。
・・・資料:産経新聞(2009年11月4日・夕刊)記事より引用。
確かに面白い話である。売る側もどこの誰だか顔を見せず、売られている作品も偽物、本物の証明もなく、ましてや「その絵が偽物だ」と証言している画家・奈良美智さんからの連絡も、“本当の奈良さんか分からない?”と出品者は言う。まさにゲーム感覚なバーチャル世界にある商取引のように、ネットオークションにおいて今回の当事者たちはお互いに信頼性を欠いており、疑心暗鬼なまでに当の本人を無視し、その似通った画風が買い手によって、より不可思議な魅力と本物に思える外野からの反響で値を吊り上げたと言わざるを得ない。このやり方がうまく行くのであれば、きっと二匹目のドジョウを狙おうと次々と有名なアーティストの画風を真似し、下手は下手なりに味のあるデビュー当時の作品と称し、また「亡くなった祖父の蔵から出て来たので、素人の私には判断しきれない」と書いて出品するだろう。
これは『開運!なんでも鑑定団』において持ち込まれる話にも似通っており、さらには美術骨董品等のネットオークションでもよく目にする説明文と言える。所在がはっきりしない、また誰の作品かも分からない、欲しい方があれば・・・と逃げ口上で説明する。買い手も、では自分の眼力でその真贋を言い当て、「良き作品を安く落札しよう!」と参加しているのだろう。だが、70万円もの大金をみすみす騙し盗られるのは如何なものか。その画風を盗まれた張本人の画家(アーティスト)は、騙されて買われる被害者への思いと共に、自らの画風を真似た意匠侵害の犯罪行為に対して取る策はないのだろうか。
お互いに顔を見せずネット上での取引は、出掛けて行き、その場で品を並べて売るフリーマーケットよりも合理的で、効率的な仕組みであり、主婦や学生たちにおいても小遣い稼ぎとして参加するものも多くいる。安く落札した品をまた別なるネットオークションで落札価格以上の金額で転売する輩も多く、プロ、アマに限らないネットビジネスの世界がそこには存在していることも確かである。
実際に、私もネットオークションで幾つかの品を落札し、問題なく商取引をしたことがある。また、不用なものを売りに出したこともあり、落札5日前から、落札日(当日)まで何人がそのサイトを覗きに来たか、また価格を付けて競り合っているかが、どことなく面白いと感じたのも事実である。しかし、中には「是非ともほしいから、他の人に売らぬよう個人的に裏取引をしてほしい」との誘惑を交えた変なメールが届き、ルール違反な輩や遊び半分で参加している者もいることに気を引き締めたのも事実である。
確かに、1/4世紀以上も広告・イベント業界にて仕事をしていると、様々な有名人との出会いも多く、彼ら、彼女らの縁の品等も存在する。中には馬鹿げたものも多く、確か18年ほど前に作家でコピーライターの中島らも氏と大阪・心斎橋のホテルで「カタカナ職業人マニュアル」なるコント集的なイベントをした際の品物が手元にある。3D(立体的に見える)芝居と称して、集まった客に青・赤のセロハンの貼られたメガネを用意し、そのメガネの前で小劇団の役者が青と赤のジャージ(体操着)でお芝居(コント)をするとなぜか立体に見えるというもの。もうお気づきだろうが、初めから芝居そのものを肉眼で見れば立体なものを、青・赤のジャージ姿の2人の役者が同じ動きするだけの馬鹿げたコントである。この時のホテルのイベントは私がプロデュースしていたのだが、写真雑誌「フライデー」にて取り上げられ、後日注目されている。その時の貴重な青と赤のジャージが残っているが、ネットオークションで売れるだろうか・・・はたまた『開運!なんでも鑑定団』ではどのような鑑定になるのだろう。そんなあほらしい妄想と共に、今日も明日もネットオークションは続くのだろう(笑)。