@青山|目黒
東京都目黒区上目黒2-30-6
7/4(土)〜7/25(土)日祝休
12:00〜20:00
Yoshiki Obayashi
@AOYAMA|MEGURO
2-30-6,Kami-meguro,Meguro-ku,Tokyo
7/4(Sat)-7/25(Sat) closed on Sunday and national holiday
12:00-20:00
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この1枚からはじまる狂気の世界。
予備校時代に描かれ、教員を愕然とさせた習作なのだそう。
シンプルに鉛筆で描かれていながら、静物の精巧な描写と、それとは裏腹に有機的なモチーフの活き活きとした奇妙さが目に留まり、静かな気配感ながら強烈に引き込まれます。
最終日に滑り込みで拝見することができた、青山|目黒での大林芳紀さんの個展です。
圧倒的なカオスが展開されています。
元々は銅版画の版として制作されていながら、その素材の質感などの深みにより、こちらもひとつの平面作品としてあらたに手が加えられ、仕上げられた作品。
揺らめくストロークの密度、銅という素材のスリリングで重みのある煌めき。そして凄まじくエキゾチックなモチーフの群れが、独特なアバンギャルド性を立ちのぼらせているように感じられます。
多く展示されていたペン画は、ストロークの豊かさが存分に発揮されていて、例えシンプルなモチーフ、構図でさえも、そこに収められるある種の濃さ、やんちゃさやら侠気やらが滲む世界観に惹かれます。
アクロバティックなアプローチ作品によっては施されています。
一部、あたかもその部分が帯状にずらされたかのような仕上がりとなっている作品。
眉間の皺の深さ、太く濃い頬の稜線が醸し出す熱さ、その一方で、ちょうど左こめかみの高さでスパッとズレがもたらされていて痛快。
「あれっ?」という軽妙な驚きが濃い雰囲気にユーモラスなアクセントともたらしていて楽しいんです。
そして細密の世界へ。
コミカルなユーモアが失せ、濃厚な狂気が一気に加速、深まっていきます。
とにかくストロークが面白い!
ただ無数の線が重なるだけでなく、そこには徹底して強弱、太細の展開が常に現れ、それが生み出すカオスは尋常でなく。独特の騒々しさが、観ているとイマジネーションが浸食されていくような感覚に襲われます。
さらに、そこに具体的なモチーフも加えられ・・・。
線、ドット、グラデーションとさまざまなテクスチャーが駆使され、凄まじい情報量が収められた画面にもたらされる混沌とした感じはいっそう深みを増していきます。
他にもさまざまなクリエイションが並んだ見所の多い展覧会で、これを観られたのは本当によかったなぁ、と。
そして、プレスなどではこの展覧会は大林さんを新人作家と紹介されているのですが、若くして既にお亡くなりになられているとのこと。このジャンキーな世界観のこれからを観られないのは非常に残念至極なのですが、こういった機会にご存命の頃の大林さんをご存知の多くの方が、ちょっとした落書き的なドローイングなんかも持ってこられることがあるようで、もしかしたらそういったもので次が観られるかもしれない、と。。。
いずれにしても、この絶妙のジャポネスクな味わいとダークなアングラ感が潜む世界に、もっと多くの方に触れていただきたい、と思った次第です。