2008年の出版物販売額は2兆177億円。前年割れが4年連続で進行中と、書店を取り巻く環境は厳しさを増すばかり。書店の経営、書店員の給料はどうなっているのか。



書店員の給料ってどのくらい?

 書店の再編や廃業が止まらない。ネット販売やコンビニでの取扱いの拡大もあるが、読書離れが最大の要因。2008年の出版物販売額は2兆177億円。前年割れが4年連続で進行中と、書店を取り巻く環境は厳しさを増すばかり。書店の経営はどうなっているのか、書店員の給料も気になるところだ。

 書店業界の大型再編に動いたのは、書籍や雑誌の印刷を手がける大日本印刷(DNP)。同社は老舗書店の丸善、大型店舗を構えるジュンク堂(未上場)を相次いで子会社化。講談社や小学館、集英社といった大手出版社とは、中古本の販売を手がけるブックオフコーポレーションに共同で出資し、大株主に躍り出た。

 丸善は、DNPのグループ会社である図書館流通センターと共同持株会社を設立(10年2月1日)し経営統合に踏み込む予定で、将来的にはそこにジュンク堂も加わる構想も打ち出されている。

 ジュンク堂は文教堂グループホールディングス(HD)の筆頭株主になっており、DNP主導で巨大書店グループが出現する可能性も高い。一方、書店業界のリーダーともいうべき存在の紀伊国屋書店(未上場)が提携したのは、印刷や電子部品でDNPと覇を競う凸版印刷である。

 さて、実際に書店の経営内容を見てみよう。見ていくのは、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のフランチャイズ(FC)に加盟、新潟や長野を中心に、首都圏でも蔦屋書店を展開する「トップカルチャー」。

 63店舗で285億円という売上高をはじめ期末在庫、店舗価額(店舗の資産価値=帳簿価額)などを元に、1店舗平均で見てみると……(表参照)。

従業員平均年間給与はおよそ400万円

 同社1店舗あたりの1日の売上は、書籍50.4万円、CDやDVDのレンタル26.8万円、文具10.8万円など、合計では約124万円。それを従業員4.3人で支えている計算になり、抱える在庫は1億1300万円超、店舗価額は3242万円といったところだ。

 その書店部門にその他事業を含めた連結決算では、売上原価(原価)は69.8%、販売費及び一般管理費(経費)は28.3%、そして営業利益1.9%というのが、最終的な経営成績だった(08年10月期)。

 つまり、トップカルチャーで、書籍や雑誌1000円分の買い物をしたとして、原価は698円、経費は283円、そして営業利益が19円という計算になる。さらにいえば、1000円の支払いには、店舗の賃借料72.5円や従業員の給料手当88.7円、FC契約を結んでいるCCCに支払うロイヤリティ12.8円などが含まれているということ。そして、従業員平均年間給与はおよそ400万円である。

 この給与は高いのか、低いのか・・・。もう1つ他の書店も見てみよう。

営業率の低さが目立つ書店

 愛知県や岐阜県を中心に、首都圏や関西圏でも展開している三洋堂書店の場合はどうか。1店舗平均の1日売上高はおよそ86万円。うち書籍の売上が6割を超える。土地付き自社物件が多いこともあって、店舗価額はおよそ8000万円。店舗従業員は2.9人である。

 三洋堂書店は連結を組んでいないが、賃貸収入などを含めた全体の決算を1000円にたとえてみると、原価705円、経費276円、営業利益は19円だ。経費の内訳では、給料手当が95.5円、地代家賃49.8円などとなっている。従業員の平均年間給与は約425万円である。

 もちろん、経営成績を1000円にたとえた図表の数値は変動する。実際の金額でいえば、トップカルチャーの給料手当は26億円、三洋堂書店は27億円。それが1000円当たりトップカルチャーは95.5円、三洋堂書店は88.7円と出ているわけだが、この数値も、売上が伸びれば低く出ることはいうまでもない。

 また、トップカルチャーと三洋堂書店の営業利益は、期せずして1000円につき19円と同額。同じ基準で計算すれば200円を超す靴のABCマート、150円程度のファーストリテイリング、およそ135円の家具のニトリとまではいかなくても、もう少しほしいところだろう。

 その他上場している書店はどうか。興味深いのはヴィレッジヴァンガードコーポレーション、ブックオフコーポレーション、まんだらけの3社。個性的な書店、ヴィレッジヴァンガードは、雑貨の販売も手がけていることで高い営業利益率をマーク。中古本のまんだらけやブックオフコーポレーションも、流通業としては比較的高い営業利益率といっていいだろう。

 新刊が中心の丸善や文教堂グループHDの原価率が76%台なのに対して、ブックオフとまんだらけは極めて低いことが最大の要因。新刊価格1000円だった書籍をブックオフで500円で販売しているとすれば、買取り価格は最大に見積もっても200円前後ということになる。

 CDやDVDのレンタルを中心に書籍の販売も手がけるゲオとCCCは、それなりの営業利益率を確保。ただし、CCCの子会社でAVソフトやゲーム、書籍などを販売しているすみやは赤字基調が続いている。

 書店の努力にも限りがある。書籍や雑誌の作り手である出版社、流通を担う取次ぎも含めたスクラムの強化で顧客(読者)を呼び戻すことが不可欠。それなしに書店を取り巻く環境の好転や出版不況の克服は難しい。

 ちなみに、書籍取次ぎの大手2社、日本出版販売(未上場)の従業員平均年間給与は673万円(従業員平均年齢42.0才)、トーハン(未上場)は606万円(同42.7才)である。そのトーハンから年間800億円を超す仕入れをしているセブン-イレブン・ジャパンも、書店大手といえるだろう。

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