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売れねえが…ロック一筋30年 「アンヴィル!」泣き笑いの記録

2009年10月31日

写真:サーシャ・ガバシ監督(左端)とアンヴィルのロブ(中央)、リップス=東京都内拡大サーシャ・ガバシ監督(左端)とアンヴィルのロブ(中央)、リップス=東京都内

 売れなくたって食えなくたってロック一筋30年、純情男二人組、バンド人生泣き笑い――。映画「アンヴィル!〜夢を諦(あきら)めきれない男たち〜」が東京のTOHOシネマズ六本木ヒルズなどで公開されている。カナダのメタルバンドの哀愁漂う悪戦苦闘を追ったドキュメンタリーだ。

 リップスとロブは、80年代に人気を得たバンド「アンヴィル」のメンバー。給食センターや建設現場で働きつつ細々と活動を続けているが、成功を諦めてはいない。無謀な欧州ツアーを敢行し、宿なしギャラなしトラブル続きでボロボロ。家族から借金して久々に本格的なレコーディングをするも、レコード会社はどこも買ってくれず。それでも2人は夢を追う。「絶対スターになってやる!」

 監督のサーシャ・ガバシは高校生の時、アンヴィルの熱烈なファンでツアーにスタッフとして同行した。20年ぶりに2人に連絡を取り、今も現役と知って撮影を始めた。

 「こんなに長く売れずにいたら、普通はシニカルになるか悪い意味で賢くなるのに、2人は純粋で若々しく、20年前と同じ情熱で貪欲(どんよく)に夢を追いかけている。この魔法のように美しい光景を多くの人に伝えたかった」とガバシ。

 映画は笑って泣ける感動作として北米でヒットし、2人に注目が集まった。ロブは「おかげでレコード会社もつき、日雇い労働とはおさらばして、家族みんなハッピーさ。でもオレもリップスも前と変わっちゃいないよ」。

 映画のラストは来日公演だ。「いつまでも忘れずに応援してくれる日本のファンに、監督として感謝だね。おかげでハッピーエンドになった。今回の来日でも公演があって、ボロボロ泣いて感激してるファンがいたから撮ってきたんだ。ほら見てよ」

 ビデオカメラを掲げて記者やロブに楽しげに見せて回り、陽気にしゃべりまくるガバシ。「彼は昔、どんな少年でした?」と聞くと「今と同じだよ!」とアンヴィルの2人がユニゾンで答えた。「ガキのまんまだな」「男ってもんは成長しない。トシを取るだけだ」

 映画でも2人の含蓄に富む言葉の数々が印象に残る。そのつぶやきには、夢の甘さと現実の苦さが入り交じる。

 「誰でもトシを取る。腹が出て顔がたるみ、時間がなくなる。だから今やるしかない」「音楽は永遠に残る。借金も残るかもしれないがな」(小原篤)

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