不景気に苦しむ食料品業界だが、根強い人気を誇るのが定番商品だ。メーカーが新商品の研究開発費の捻出に苦しむ中、「ポッキー」(グリコ)や「チップスター」(ヤマザキナビスコ)のような定番商品を持つことはそれだけでアドバンテージとなる。
ではアイス業界の定番商品と言えば何だろうか? そう聞かれて「ガリガリ君」を思い浮かべた人は少なくないだろう。1981年に開発された当たり付きの棒アイスは今や子どもはもちろん20~30代にも人気のロングヒット商品に成長している。年間2億5500万本も売れる定番商品はいったいどのようにして生まれたのだろうか。
今でこそアイス業界でゆるぎない地位を築いたガリガリ君だが、実は深刻なスランプも経験している。コンビニの普及もあって、90年代に入ってから売り上げは順調に伸び、94年には販売本数6600万本を達成していたが1995年以降、他社製品との競争が激化し、勢いが止まってしまったのだ。
ガリガリ君を製造する赤城乳業は事態を打破すべく、全国1万人規模の消費者調査を試みたが、そこで得られたアンケート結果は予想以上にきびしいものだった。ユーザーの多くが商品パッケージのキャラクター「ガリガリ君」に「汗が泥臭い・歯ぐきが汚い・田舎臭い」などのマイナスイメージを抱いていたことがわかったのだ。
しかし商品自体は嫌いでないという消費者も多かったので製造・販売の継続を決定し、2000年にキャラクター・デザインも含めてガリガリ君の大リニューアルを図った。その時に同社がこだわったのがガリガリ君の「ドジで間抜けだけど、いいヤツ」といったキャラクター。これはいつの時代でも絶対に譲れない点だった。「元気で、楽しく、くだらない」というガリガリ君の世界観を守ることで地道にファンを拡大する戦略をとったのだ。
ガリガリ君が消費者に愛される理由は、赤城乳業の社風を抜きには語れない。ホームページひとつ見ても、会社案内はかじりかけのアイス(図)の中に書かれていたり、売上高の棒グラフの棒は、ガリガリ君で構成されているなど、遊び心満載だ。くだらないと言ってしまえばそれまでだが、商品を越えて同社のファンになっている消費者も少なくない。
同社は90年代後半のスランプの後、ガリガリ君の認知度を広げるために、テレビCMなどにも果敢にチャレンジした結果、00年に年間売上本数は1億本を突破、その後もシーズンごとに新フレーバーを出す戦略が功を奏し、04年には1億4800万本を売り上げるなど完全復活をはたした。さらに雑誌社とコラボし、ガリガリ君が主人公の漫画を掲載したり、ガリガリ君の登場するゲームソフト制作など、次々と知恵を絞った企画が生み、時間をかけてファンを獲得し、現在では年間2億5500万本を売るヒット商品に成長している。
ロングヒット商品は、一度作ってしまえば売れ続けるほど簡単なものではない。消費者に飽きられず、関心を抱き続けてもらうために、ぶれない商品のコンセンプトを企業が信念を持って貫けるかが重要だ。同社は09年現在従業員 300名足らずの規模だが、売上げの半分以上を、新商品発売競争の激しいコンビニで占めている。ガリガリ君の他にも「濃厚旨ミルク」などを生み出した自社オリジナル商品の企画開発力は、企業規模で上回る他社も注目している。
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