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【社会】

都会に紛れ、整形次々 岐阜出身、名古屋に土地勘 市橋容疑者

2009年11月8日 朝刊

千葉県警が公開した整形後の市橋達也容疑者(右)と指名手配当時の写真

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 二〇〇七年三月に千葉県市川市で起きた英国人英会話講師リンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=の殺人・死体遺棄事件で、死体遺棄の疑いで全国に指名手配されている市橋達也容疑者(30)が先月、名古屋市や福岡市に現れ、事件から二年七カ月ぶりに足取りが浮かび上がった。別人のような整形手術後の顔。どこで生活し、どう資金を捻出(ねんしゅつ)していたのか。

 ■目立つ180センチ

 十月二十三日、市橋容疑者は手術の予約のため名古屋の病院を訪問。翌二十四日に手術を受け、術後の処置にも訪れた。その後、病院スタッフが男性に珍しいほくろを消したあとをカルテで見つけ、市橋容疑者とみて千葉県警に通報。捜査員が病院を張り込んだが、三十一日の抜糸には現れなかった。

 捜査関係者らによると、市橋容疑者は予約前にインターネットカフェからメールで病院に問い合わせたとみられ、予約時は「ラブホテルに宿泊している」などと話したという。

 十月十三日に福岡の病院で手術を断られた際も、ネットカフェを訪れたとの情報がある。

 名古屋、福岡という大都会。捜査本部は、身長一八〇センチと目立つ市橋容疑者は人込みに紛れやすい繁華街で生活しているとみて、東京・新宿などを重点的に調べてきたが、足取りはつかめなかった。名古屋に現れたことについて、捜査幹部は「出身が岐阜だから、土地勘もあるのではないか」と指摘する。

 ■強迫観念?

 名古屋の前にも、複数回の手術を受けたとみられる市橋容疑者。名古屋では鼻を数ミリ高くしただけで、手術後の容姿はほとんど変わらなかったという。「常に顔を変えないと捕まるという強迫観念があるのでは」と捜査幹部は話す。

 一回数十万円に上る高額な手術代や逃走資金について、県警は強い関心を持って捜査しているが、親からの送金はないとみている。

 リンゼイさんの失跡直後に、警官が自宅マンションを訪れると、ほとんど何も持たずに逃走した市橋容疑者。捜査員は「出頭するようなタイプではない」と逮捕に執念を燃やしている。

◆市橋容疑者の母が胸の内

 市橋達也容疑者の母親は七日、名古屋市に近い岐阜県羽島市の自宅前で本紙の取材に応じ「息子を(警察に)差し出すことが親としての責任だと思っている」と心境を語った。

 母親は「連絡は一度もなく、整形したなんて知らなかった」とした上で「手術代金もどこから出ているか分からない。私たちが逃がしているかのような見方があるけど、今の状態は私たちにとっても地獄」と胸の内を明かし「実家に立ち寄れば必ず警察に連絡する」と強調した。

 リンゼイさんの両親に対しては「とにかく申し訳ない」と話し、「私たちにとっても(息子が)早く捕まることが一番。亡くなったリンゼイさんが戻るわけではないが…」と目を潤ませた。

 高校まで過ごした地元の羽島市では、活発で人気者だった少年時代を知る恩師や級友の間にも「整形手術までして逃げるなんて」と驚きが広がる。

 中学時代に所属したバスケ部の顧問だった男性教諭は「今の姿と当時は全く結びつかない」と信じられない様子。「部では副主将を務め、早朝練習を毎日こなすまじめな子。社交的で明るい性格は目立っていた」とも。

 中高で同級生だった一人は「高校では陸上部に所属し足が速かった。運動神経の良さは有名だった」と話す。中学の卒業文集に掲載されたクラスの人気投票で、スポーツとユーモア部門の一位に選ばれるなど、快活な少年像しか浮かばない。

 幼少時代を知る実家近くの七十代の主婦は「全然違う顔。顔まで変えて逃走するなんて」とショックを受けた様子で、「本当に彼がやったのなら、早く出頭して罪を償ってほしい」と話した。

 

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