あの人は今こうしている　ＷＨＯ（世界保健機関）の認定曲を歌って、１７年ぶりに復活した

　芸能界を席巻したアイドル歌手ブームが下火になるのは９０年代はじめ。それに代わって登場するのがバラドル、グラドルたちだが、そんな時代に“最後のアイドル”と呼ばれた１９歳の女の子がいた。９１年、「マーメイドプリンセス」でデビューした山本智美さんだ。しかし、わずか４年で姿を消した。今どうしているのか。

●舌の病気で故郷に帰り、そのまま生活していたが

「１０月２１日にＣＤが発売されました。『たべものワルツ』ってタイトルで、なんとなんとＷＨＯ、世界保健機関の認定曲なんですよ。食事の栄養バランスや摂取量をわかりやすく紹介し、お母さんとお子さんとで楽しく覚えてもらおうという曲なんですけど、ワタシ、この歌でＷＨＯの認定歌手になりました、ハハハ」

　千代田区四番町にあるレコーディングスタジオで会った山本さん、こういって笑った。

「お話があったのはこの春。アイドル時代にお世話になった事務所の社長に声をかけていただいたんです。９２年に『ハロー・グッドバイ』をリリースして以来の新曲でしょ。ずっと田舎に引っ込んでたし、当然、不安でしたよ。でも、せっかくいただいたチャンスを生かさなくてはと思い、お引き受けしました」

　山本さんは現在、石川県内灘町在住。この日も石川からやって来た。

「２２歳のとき、郷里に戻りました。突然、声が出なくなりましてね。風邪かなと思ってたら、病院で舌根に腫瘤ができてるって診断されたんです。その手術を受けるために内灘町に帰ったんですが、改めて病院で診てもらったら、手術の必要はないといわれ、不思議なことに声も出るようになった。本来なら、そこでカムバックですよね。だけど、ワタシはそのまま故郷にとどまりました。また東京に行くより、そのまま地元で生活する方がワタシには合ってると思ったんです」

　山本さんは作曲家の平尾昌晃が主宰する歌謡スクール在学中にスカウトされ、９１年、１９歳のときに「マーメイドプリンセス」で歌手デビュー。翌年には「ハロー・グッドバイ」をリリースするなど順調なスタートを切った。しかし、芸能界はアイドル歌手に代わって、バラドル、グラドルが台頭し始めた頃。よって、山本さんは“最後のアイドル”とも呼ばれた。

「思い出？　上京してから代々木の都立高校に通ってたんです。そこの同じクラスにＳＭＡＰの中居正広クン、木村拓哉クンがいました。向こうはもう忘れてるでしょうが、ハハハ」

●「せっかくいただいたチャンスを生かさなくてはと思って」

　２４歳で結婚するも、離婚。中１の息子、両親の４人暮らしだ。

「内灘町でダンススタジオ『ベイビーヒップス』とブティック『ＨＯＭＩＥ』を経営してます。あと、メディア関係ではＦＭかほくで音楽番組『アーティスト・ボーンズ・パラダイス』のプロデューサー、情報誌『灘ｃｏｌｌｅ』のライターもやってます。結婚生活で失敗した分、仕事でガンバってるって感じですかね、ハハハ。内灘は“恋人の聖地”なんて呼ばれ、とってもロマンチックな町なんです。機会があったら、ぜひ遊びに来て下さい」

　山本さんはそう言い残して、最終便で石川に帰っていった。

（日刊ゲンダイ2009年11月5日掲載）