2009年11月5日
画像1:セキュリティエッセンシャルズの公式ページ。なお、インストールすると、ビスタや7に付属のスパイウエア検知ソフト「Windows Defender」は機能が重複するため自動的に無効化される
画像2:セキュリティエッセンシャルズの画面はシンプル。「ホーム」画面では現在の状況確認ができ、ハードディスク内のウイルスチェックを行う「今すぐスキャン」ボタンがある
画像3:タスクバーの右側、タスクトレイ内に表示された緑色の旗つき工場のようなアイコンがセキュリティエッセンシャルズ。緑色+チェックマークは正常動作のしるし(画面はウィンドウズ7)
画像4:設定画面。標準設定では、毎週日曜日午前2時にスキャンを実行するように指定されている
画像5:マイクロソフトが調べた2008年7〜12月の各地域におけるウイルス(マルウエア)感染率。日本など緑の地域が一番低く、0〜2パーセント。赤の地域が一番高く、24〜30パーセント。(画像提供マイクロソフト)
「正しく対策されていない」パソコンを減らしたい
マイクロソフトは、ウイルス対策ソフトを無償で提供して、ほかのセキュリティーソフトメーカーから市場を奪おうと考えているわけではありません。セキュリティエッセンシャルズの公開には2つの目的があります。
一番の目的は、ウイルス対策ソフトが入っていない、もしくは正しく利用されていないパソコンを減らすことです。こうしたパソコンはウイルスに感染しやすく、感染したパソコンは、ほかのパソコンを標的にウイルスの被害を拡大しようとします。ウイルスを媒介にして、迷惑メールの配布や他のパソコンに対する攻撃などに使われてしまうケースもあり、「感染したパソコン」だけで被害がとどまるわけではないのです。
現在、日本国内で出荷されているウィンドウズ搭載パソコンのほぼすべてに、最初からウイルス対策ソフトがインストールされています。ただし、30日、90日などの期間限定版。期間中はウイルス情報が更新されますが、期間が過ぎると情報の更新はなくなり、新種のウイルスに対応しなくなります。代金を支払って登録をすると製品版として情報の更新も行われるようになりますが、お金を払いたくないからと、期限切れの状態で使い続ける人も少なくありません。また、自分で組み立てたパソコンなど、ウイルス対策ソフトが最初から入っていないケースもあります。
海外に目を向けると、中南米やロシア、アジア地域など、パソコン自体がまだあまり普及していない国ではソフトウエアも高価です。国産ウイルス対策ソフトや海外メーカーの現地法人などが無く、高額な輸入製品に頼らざるを得ない国も多くあります。その結果、ウイルス対策ソフトの導入が進まず、ウイルス感染率が非常に高くなっているという調査結果もあります(画像5)。
マイクロソフトは、これらの状況にあるパソコンでも最低限のウイルス対策ができるよう、無償のセキュリティエッセンシャルズを提供することにしたのです。すでに他社の対策ソフトを使っているならそれでOK。わざわざ乗り換えてもらう必要はなし。マイクロソフトはそう考えています。
ただし、例外があります。今、実際には何の役にも立たない、「自称ウイルス対策ソフト」が、世界中で被害を拡大しているのです。
悪意ある者たちが仕掛けを施したウェブサイトを用意しておき、閲覧者が訪れると「あなたのパソコンはウイルスに感染している」などとブラウザーに表示し、「駆除するにはこのウイルス対策ソフトを買いなさい」とソフトをダウンロードさせて、利用代金をクレジットカードで支払わせようとします。ところが、そのソフトは実際には何もしない、あるいは、存在しないウイルスを駆除した「振り」だけをするのです。もっと悪いケースでは、そうして買ったソフト自体にウイルスとしての機能が含まれていることすらあります。
そんな「自称セキュリティーソフト」は、利用者をだましてソフトを買わせることから、「詐欺的セキュリティーソフト」、「ミスリーディング(誤解)アプリケーション」などと呼ばれます。海外では「無料」「ウイルス対策ソフト」などの語でウェブ検索をすると、こうしたソフトを販売するページがリストアップされるケースもあり、金銭的な被害はかなり大きくなっているようです。
実は「日本語版」の詐欺的セキュリティーソフトもあるのですが、画面の日本語がおかしかったこともあり、幸いなことにあまり被害は拡大していません。
少なくとも、マイクロソフトが無償でウイルス対策ソフトを提供すれば、こうした「自称ソフト」にだまされてしまう人が減るのではないか。これが、同社がセキュリティエッセンシャルズを公開する2つめの目的です。
繰り返しになりますが、すでに、いわゆる「メーカー製」の名の知れたセキュリティーソフトを使っているなら、セキュリティエッセンシャルズを入れる必要はありません。セキュリティーソフトを更新せずに使い続けている人、対策ソフトを入れていない人は、ぜひ、セキュリティエッセンシャルズの導入を検討してくださいね。
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ウイルス対策ソフト「セキュリティエッセンシャルズ」(マイクロソフト)公式サイト http://www.microsoft.com/security_essentials/?mkt=ja-jp
1969年東京都生まれ。主に初心者向けのデジタル記事を執筆。朝日新聞土曜版beで「デジタル若葉マーク」を連載中。近著に「パソコンで困ったときに開く本」(朝日新聞出版)、「グーグル100%利用術」(同)、「てくの生活入門」(講談社、一部を担当)がある。新刊「すごく使える!超グーグル術」(ソフトバンククリエーティブ)が3月19日に発売!
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは「電気かデータが流れるもの全般」。朝日新聞、アエラ(朝日新聞出版)、AV Watch(インプレス)などに寄稿。近著に「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの」(朝日新書)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)がある。