経皮毒で講演会
鳥取民報 2007年11月18日〜12月9日
近頃、鳥取市内で経皮毒についての講演会が開かれ、「見てわかる 図解 経皮毒」著者の山下玲夜さん、「『経皮毒』からの警告」宝島社発行)の著者、帝京平城看護短期大学の稲津教久教授が講演しました。
原因不明の病に倒れて
山下さんは、原因不明の子宮内膜症と卵巣脳腫を患い、1日10錠の痛み止めでは足らず、起立できなくなり、ホルモン治療に望みを託しました。
治療の結果楽になりましたが、2カ月後、今度は排尿ができなくなり、再び、ホルモン治療に取り組むものの、髪の毛は真白になり、手の施しようがなくなりました。友人から「シャンプーに毒が入っているよ」と言われ、シャンプーを見直しました。
山下さんは、自らの体験を通して、経皮毒の問題を真剣に考えるようになったと言います。
つづいて、シャンプー、リンス、洗剤、ハミガキ、化粧品、入浴剤、白髪染め、建材、蚊取り線香、除草剤、タバコなどの日用品に使われている合成界面活性剤や化学物質が、呼吸や皮膚吸収で体内に取り込まれる危険性について触れました。
「肝臓で80〜90%解毒される経口毒と比べ、直接血液に入り全身に回る経皮毒は危険です。できるだけ、合成界面活性剤や添加物の入っているものは避けるか、薄めて使うことをすすめます。合成界面活性剤には塩素と反応してダイオキシンを発生する成分も一部に含まれています」
さらに、経皮毒は女性の子宮内膜症や男性の生殖機能に影響が大きいと指摘しました。
「韓国に呼ばれて、話をする機会がありました。若い女性の生理痛が酷いということで、話をすると、さっそくテレビが女子高生を対象に、無農薬の米、自然水、無添加のシャンプーに替え、プラスティックの容器をやめる実験を始めました。追跡調査で、86%の高校生に症状の改善が見られたとのことです。男性の陰嚢など皮膚の薄いところは他の部位より数十倍も浸透するので注意が必要です」
化学物質が皮膚から体内に
経皮毒の研究者である帝京平城看護短期大学の稲津教久教授は講演で、化学物質の経皮吸収について警告しました。(以下要旨)
気管支喘息や狭心症の治療薬、ニコチンパッチに使用される貼付薬は、経皮吸収製剤です。薬物がリンパ・毛細血管を通して全身にまわることによって、患部に到達し、効果を発揮します。内服薬は、肝臓の解毒作用によって80〜90%が分解されることを考慮して、量が決められています。貼付薬は、リンパ管ルートが肝臓による代謝を受けないため、少量でも確実な効果が得られ、消化器官への副作用が少なくてすみます。一方で、細胞組織や臓器に化学物質が蓄積していきます。
農薬、殺虫剤、化粧品、洗剤などの成分には、経皮吸収されやすい分子量200以下の化学物質が多く存在し、これらの物質は、石油を原料とした合成化学物質で皮脂によく溶け、濃度の高いものほど吸収率は高くなります。
しかも、洗剤や化粧品には、経被吸収を促進する成分が含まれています。合成界面活性剤や湿潤剤・乳化剤のプロピレングリコールやエタノールなどで、水と油を融合させる作用をもっていて、細胞膜を溶かします。こうなると、角質層に「穴があいた状態」になり、経皮吸収されにくい物質まで吸収してしまいます。
また、温度が高いほど吸収率も高くなるので、入浴中のシャンプー、リンス、ハンドソープ、入浴剤に気をつける必要があります。体の部位によっても角質層の厚さが異なります。
性器周辺部は男女とも経皮吸収率が高く、煙突掃除夫の職業病は陰嚢がんでした。顔も吸収率が高いので、洗剤や化粧品に気をつけることが大切です。さらに、肛門や舌下などの粘膜はもっとも吸収率が高く、ハミガキ剤の発泡剤として使われる合成界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムは、溶血作用や白内障を引き起こす危険があります。
経皮吸収される化学物質は微量でも、毎日蓄積されるため、発がん性のある有害物質や環境ホルモンなどの蓄積が問題です。
脳と性機能犯す経世代毒性
二十世紀半ばから、石油化学の開発はめまぐるしく進み、石油化学製品は身の回りにあふれています。また、焼却によって発生するダイオキシンや農薬は、土壌、大気、水を汚染しています。
生物には、合成化学物質に対処する機能が十分に備わっていません。合成化学物質の中には、肝臓で代謝したり腸内の善玉菌が捕食・分解できない物質が存在し、体内に蓄積します。
さらに危険なのは、母親が体内に蓄積してきた有害化学物質が妊娠や授乳を通して、胎児・乳児に移行する継世代毒性です。
人間の脳と胎盤には、血液の関門がありますが、生後六カ月頃までの乳児は、血液―脳関門ができあがっておらず、脳が環境ホルモンなどの影響をまともに受けてしまいます。
環境ホルモンには、ビスフェノールA、フタル酸エステル、ノニルフェノール、スチレン、ダイオキシンなど百五十種類以上の化学物質に環境ホルモンの疑いがあり、缶詰の内側のコーティング剤、食器、哺乳瓶、接着剤、塩ビのおもちゃ、化粧品、揮発剤、洗剤、シャンプー、発砲スチロールの原料などに使用され、子宮筋腫、乳がん、発ガン性、催奇形性、免疫機能低下、アトピー症、子宮内膜症、尿道下裂の原因物質として疑われています。
稲津教授は、継世代毒性がかかわっていると思われるものに、自閉症、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、情緒障害、脳の発達障害、神経系障害、生殖器の発達不全、精子数の異常、精子・卵子の異常、尿道下裂、停留精巣、子宮内膜症、不妊症、精巣がん、前立腺がん、子宮がん、卵巣がん、乳がん、アレルギー疾患、アトピー性皮膚炎、気管支喘息などがあると指摘しました。