神仙と井出商店とオレ

自分探しのオレ

オレには2つ年上の兄貴と5つ年上の姉貴がいる。
両親は共働きで幼少時から鍵っ子だった。

そういう家庭環境で育ったオレは小、中、高校と水泳にひたすらのめり込んだ。
部活を終えてクタクタの体で明かりの消えた誰もいない家に帰ると、
いつも台所の棚にはインスタントラーメンだけが置かれていた。
オレが1週間の間に食うインスタントラーメンは約7食!!
ほぼ毎日インスタントラーメン漬けだったわけだ。

毎日毎日、同じ物を食っているといつしかオレはいっちょ前に頭を使い
美味しく食べれる方法を考える様になった。
例えばカツオ節を入れてみたりガキのオレは色々試行錯誤し、
ついには昆布と煮干しでダシを取る様にまでなっていた。

小、中、高校と水泳バカだったオレは
一つの事をやり出すとそれしか見えなくなる性格が災い?
して、いつしか平泳ぎで国体やインターハイへ出場するまでに成長してしまった。

やがて月日も流れオレも大人という者になりスポーツクラブで
インストラクターという職業に就き平穏な毎日を送っていたのだがある日、
そう!ある日、本当に突然!運命的な衝撃的な出会いをする。そう!
その男こそ「スグル」といい (今でもオレの兄貴的存在だが…)
その時23歳ですでに飲食店を経営する青年実業家で、
とにかく持ち前のブッ飛んだその性格でオレと初めて会うと開口一番に
「お前イイ男やな。女にモテるやろ?じゃウチで働け。」
と、オレに言い放ちとにかくそのブッ飛んだワケのわからないパワー
に惹かれ昼間はインストラクターをしながら夜は水商売をするという
典型的な荒んだ生活に突入することになる。

ここから女には真面目だったはずのオレがあの男のせいで、
まぁ今の言葉で云うチャラ男ってヤツになってしまうのである…。

その後、紆余曲折がありオレは自分で店を構えられるまでに成長し、
金沢市随一の繁華街、片町
と郊外でラウンジとスナックを経営するまでとなった。
そこでオレは第二の衝撃的な出会いをする事になるのだった。

ある一人の女。

それは自分にとって初めて訪れた本当の恋。
その頃いつも女に対して不真面目だったオレがその女に対してだけは
心の底からコイツを幸せにしてやりたい!
と、思う様になりいつしかオレは夜の世界から足を洗う決断に至る。
その女は県外出身で両親が大変、躾に厳しくいつも早く実家に戻ってくる様に言われていた。

オレはその女の両親に
結婚を前提に娘さんとお付き合いさせてもらっています!」

と、挨拶へ行くのだが見事に玉砕!!
バカ野郎!お前みたいな夜の世界で生きてきた野郎に大事な娘はやれん!」
切り捨てられ、オレは人生で初めて自分というものを見つめ直す事になるのだ。