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【社会】

いじめた4人を賠償提訴へ 岐阜・瑞浪の中学生自殺から3年

2009年11月7日 朝刊

3回目の命日に友人らが持参した供花に交ざり、誕生日祝いのカーネーションもあった=岐阜県瑞浪市で

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 部活動でのいじめが原因で、2006年10月に自殺した岐阜県瑞浪市の瑞浪中2年生の女子生徒=当時(14)=の両親が、いじめたとされる4人の生徒と両親に対し、計4000万円を求める損害賠償請求訴訟の準備を進めていることが分かった。

 女子生徒は10月23日、同じバスケットボール部員の4人の名前や「お荷物が減るからね」「もう何もかもがんばる事に疲れました」などと記したメモを残して自室で自殺した。学校側の生徒へのアンケートなどから、日常的に無視されたり「うざい、きもい」といった言葉をかけられていたことが判明。学校側はいじめによる自殺と認め、岐阜地方法務局も07年に「人権を侵害したいじめが自殺の要因」と認定した。

 女子生徒の父親(47)によると、メモで名指しされた4人の家族は当初、いじめについて謝罪の意思を示した。しかし08年1月以降、接触はなくなったため、「相手側が心から反省し、娘の死に正面から向き合ってもらいたい」と提訴を決めたという。

 両親は弁護士を通じ9月29日付で4人に逸失利益と慰謝料として損害賠償を請求する旨の通知書を郵送。期限とした14日以内に相手側から返答はなかったといい、半年間の民事訴訟の時効期限内に提訴する考え。

◆あの日から止まったまま

 女子生徒の誕生日であり、3回目の命日となった10月23日には、自宅に幼なじみや学校の校長らが焼香に訪れた。「お誕生日おめでとう」のカードを添えたピンクのカーネーションも。女子生徒は17歳を迎えていたはずだった。

 「みんな成長していくけど、娘は14歳のまま。17歳の顔を思い浮かべられない。あれから時間が止まったままなんです」。母親(44)は、こみ上げる涙をぬぐった。2階の娘の部屋は、勉強机も壁のアニメのポスターも当時のままだ。

 自殺の前日、娘は「お父さん、誕生日ケーキ買ってこないかなあ。明日は焼き肉にしようね」と笑みを浮かべていた。だが翌日、学校から戻った彼女は死を選んだ。「がんばる事に疲れた」と記したメモには「じいやん、早く良くなってね」と病気がちの祖父を最後まで気遣う優しさを見せた。

 父親(47)はこの3年間、愛知県西尾市の大河内清輝君はじめ、いじめで命を落とした子の親を各地に訪ねて状況を聞いた。実感したのは、いじめ自殺の大半は、事実関係があいまいに風化していく現実。娘の自殺でも、直接の引き金となった当日朝の部活動で、どんな言葉を浴びせられたか判明していない。訴訟を通じて明らかにする考えだ。

 10月初めに川端達夫文部科学相あてに「いじめは人権侵害であり、犯罪行為にほかならない」として、法律で明文化するよう求める請願書を送った。両親は訴える。「血は流れなくても、心を傷つけ、死に追いやるのがいじめ。それって犯罪ではないのですか。心にも命は宿っているのです」

 (多治見支局・有賀博幸)

 

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