臨時国会の焦点に6日、永住外国人への地方参政権付与法案が急浮上した。民主党の山岡賢次国対委員長が今国会に議員立法で提出し、党議拘束をかけずに採決する考えを示したためだ。参政権の付与に積極的な公明党と、消極的な自民党の間にくさびを打ち込む狙いがあるとみられるが、法案の成立を図るには会期延長は必至だ。10年度予算編成への影響を懸念する政府は反発し、逆に政府・民主党の足並みの乱れが露呈する結果となった。
「今国会で(の提出を)考えている」
山岡氏は6日、民主・自民両党の国対委員長会談を終えた後、記者団に語った。民主党は政権交代後、政策決定を内閣に一元化し、議員立法を原則行わない方針だったが、早速、例外が生じる。
同党内では鳩山由紀夫首相や岡田克也外相、小沢一郎幹事長ら付与への賛成議員が多い一方で、平野博文官房長官、松野頼久同副長官ら反対派も一定数おり、意見集約は終わっていない。平野氏は10月22日の記者会見で「(衆院選で初当選した)新人が百四十数人いる。党内でしっかり議論する場面が必要だ」と強調しており、議員立法での提出は党内の意見集約を省略する意図もある、とみられる。
小沢氏は、衆院選前から在日本大韓民国民団(民団)の会合に出席するなど接触を続けており、民団側は付与に賛成する候補者の支援に踏み切っていた。
政府は10年度予算の年内編成を確実にするため、今国会への提出法案を絞り込んでいる。賛成派の鳩山首相も、5日の衆院予算委員会で「前向きに考えるが、党内でも大変大きなテーマ。さまざまな意見があり、強引に押し通さない」と述べた。
野党側も、付与に積極的な公明党でさえ「党の意思と確定したとは思えない」(幹部)と疑心暗鬼だ。自民党の大島理森幹事長は6日、党議拘束なしの採決に関し記者団に「臓器移植法とは異質だ。主権にかかわる問題で、いささか抵抗感を持つ」と反対の考えを示した。【田中成之、田所柳子】
毎日新聞 2009年11月7日 東京朝刊