営業率の低さが目立つ書店
愛知県や岐阜県を中心に、首都圏や関西圏でも展開している三洋堂書店の場合はどうか。1店舗平均の1日売上高はおよそ86万円。うち書籍の売上が6割を超える。土地付き自社物件が多いこともあって、店舗価額はおよそ8000万円。店舗従業員は2.9人である。
三洋堂書店は連結を組んでいないが、賃貸収入などを含めた全体の決算を1000円にたとえてみると、原価705円、経費276円、営業利益は19円だ。経費の内訳では、給料手当が95.5円、地代家賃49.8円などとなっている。従業員の平均年間給与は約425万円である。
もちろん、経営成績を1000円にたとえた図表の数値は変動する。実際の金額でいえば、トップカルチャーの給料手当は26億円、三洋堂書店は27億円。それが1000円当たりトップカルチャーは95.5円、三洋堂書店は88.7円と出ているわけだが、この数値も、売上が伸びれば低く出ることはいうまでもない。
また、トップカルチャーと三洋堂書店の営業利益は、期せずして1000円につき19円と同額。同じ基準で計算すれば200円を超す靴のABCマート、150円程度のファーストリテイリング、およそ135円の家具のニトリとまではいかなくても、もう少しほしいところだろう。
その他上場している書店はどうか。興味深いのはヴィレッジヴァンガードコーポレーション、ブックオフコーポレーション、まんだらけの3社。個性的な書店、ヴィレッジヴァンガードは、雑貨の販売も手がけていることで高い営業利益率をマーク。中古本のまんだらけやブックオフコーポレーションも、流通業としては比較的高い営業利益率といっていいだろう。
新刊が中心の丸善や文教堂グループHDの原価率が76%台なのに対して、ブックオフとまんだらけは極めて低いことが最大の要因。新刊価格1000円だった書籍をブックオフで500円で販売しているとすれば、買取り価格は最大に見積もっても200円前後ということになる。
CDやDVDのレンタルを中心に書籍の販売も手がけるゲオとCCCは、それなりの営業利益率を確保。ただし、CCCの子会社でAVソフトやゲーム、書籍などを販売しているすみやは赤字基調が続いている。
書店の努力にも限りがある。書籍や雑誌の作り手である出版社、流通を担う取次ぎも含めたスクラムの強化で顧客(読者)を呼び戻すことが不可欠。それなしに書店を取り巻く環境の好転や出版不況の克服は難しい。
ちなみに、書籍取次ぎの大手2社、日本出版販売(未上場)の従業員平均年間給与は673万円(従業員平均年齢42.0才)、トーハン(未上場)は606万円(同42.7才)である。そのトーハンから年間800億円を超す仕入れをしているセブン-イレブン・ジャパンも、書店大手といえるだろう。
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