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コラム「The Road 2010年W杯南ア大会へ」

岡田監督、ジダン氏と語る 代表とは

2009年11月6日

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写真対談するサッカー日本代表の岡田監督(右)と元フランス代表のジダンさん

写真元フランス代表のジダンさん=豊間根功智撮影

写真サッカー日本代表の岡田監督=豊間根功智撮影

 ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会まで残り7カ月余りとなった。限られた時間のなかで、チームに何が必要なのか。W杯と日本代表チームを支援するアディダスの招きで来日した、元フランス代表のジネディーヌ・ジダンさん(37)と日本代表の岡田武史監督(53)が対談した。自国開催された98年W杯でフランス代表を初優勝に導いたスターと、98年に日本を初出場に導いた指揮官。未公開の秘話も含めて代表論を語り合った。

    ◇

 ――ジダンさんは、試合をする上で必要なものとは何だと思われますか。

 ジダン 最も大切なのはチームとしてプレーできるか。選手の能力がどんなに高いとしても、ひとりでは何もできない。パワー、テクニックなどチームにとって大切な要素はいくつもあるが、やはり連帯感が不可欠になる。

 ――岡田さんにとって、代表に必要なものとは。

 岡田 まだまだ個人の強化も体力も上げなければならないが、自分たちの力を信じてチャレンジし続けること、そしてチャレンジする気持ちを持って臨むことが何より大切だ。

 ――ジダンさんはW杯決勝に2回チームを導き、98年には優勝しています。

 ジダン 世界王者になるのは大変なこと。そのためには監督がしっかりとした目標を定めて、目標に到達しようと努力を続けることだ。4強という日本の目標はかなり野心的かもしれないが、明確な目標を立てることで選手は頑張れるものだ。

 岡田 日本の進むべき方向性と、W杯本大会までの8カ月で何をやるべきかがはっきりと見えている。W杯を迎えたその時に何かをやろうとしても遅い。一歩ずつ地道にやっていくことが大切。この8カ月、本気でチャレンジできるか。目標を達成できるかはそこにかかっている。

 ――代表選手として必要なものは何ですか。あるいは、代表選手はどうあるべきですか。

 ジダン 一番大事なのはまず代表監督が誰を呼んで、どんなチームにするかを決めることだ。選手はその中でいろいろな条件を満たしていかなければならない。パワーもテクニックも必要だが、何よりも大切なのは連帯感がチームに存在すること。それなしにチームは機能しない。

 ――岡田監督はフィロソフィーという言葉で、忠誠心やハードワークといったものを選手に求めてきました。

 岡田 代表選手というのは日の丸をつけてプレーしたいという強い思いがないと大変。ほかの選手が休みをとっているときに海外遠征に出なければいけないこととか。ジダンさんがいう通り、代表選手として強いモチベーション、強い意欲を持った選手たちがひとつの目標に向かって一体になって戦うことが一番大切だと思う。

 ――岡田監督は一体感を作り出すために様々な工夫や問い掛けをしてきました。フランス代表ではどんな取り組みをされていましたか。

 ジダン 大切なのは監督と選手との間に対話がしっかりとあることだ。忘れていけないのは、実際にピッチの上に立つのは選手だということ。選手は監督から授けられた戦術を表現するために、あらゆるものを身につけて戦わなければいけない。そのために監督はどういう方向性を目指すのかを共通のコミュニケーション、同じメッセージで選手に伝えることが必要だ。お互いに分かり合えることができれば、選手は持てる以上のものを出そうとする。

 ――フランス代表でプレーする喜びは常に感じていましたか。

 ジダン ものすごく大きなものだった。代表選手としてプレーすることは、フランスでは「ケーキの上にあるイチゴ」と例えられる。それは、これ以上おいしいイチゴはない、つまり代表が最高のものという意味。国を代表してプレーすること以上に素晴らしいことはない。

 岡田 私はどんなにうまい選手でもそういう気持ちを持っていない選手は代表から外してきた。現在の代表選手たちは日の丸をつけて戦うことへの誇りをものすごく強く持ってくれている。たとえフランス代表と試合をするとしても、「かなわない相手だ」ではなく、代表選手として十分にやれるという気持ちがなければいけない。自信を持って、どんな相手に対しても勝つためにベストを尽くせること。今の代表はそれを持ってくれている。

 ――98年のW杯フランス大会で、決勝の夜のパリでのことを岡田監督は印象深く記憶されているそうですね。

 岡田 決勝を観戦してホテルに戻る時に、シャンゼリゼ大通りに多くの人々が繰り出していた。100万人とも言われているらしいけど。フランス代表はジャケ監督が批判されていて、最初から支持されていたわけではなかったが、勝ち上がるたびに国中が盛り上がっていった。単純に世界一ってすごいなと感じた。選手時代を含めて私はアジアでも日本でもナンバー1になったが、あれを見て、いつか世界一になってみたいと思った。

 ――優勝して、まさにチームの一体感が国全体に広がった瞬間でした。

 ジダン ある程度のところまで勝ち上がっていくと、どこの国でも国民みんなが興味を持つようになる。だからこそ、岡田監督が掲げた目標は志の高いものだが、必要でもある。実現することを期待している。

 岡田 大丈夫。以前にジャケさんはメディア嫌いだと話していた。私も似たところがあるから、多分実現する。

 ――98年W杯では移民出身の選手が多く、開幕当初はフランス国歌も歌えない選手がいるといった批判もありました。周囲からの重圧や批判が一体感をもたらすきっかけにもなっていたのでは。

 ジダン 勝ち上がっていくと批判する人はいなくなった。歌うことで自己表現する選手もいれば、歌わずに気持ちを高ぶらせる選手もいる。両方とも尊重されるべきだろう。

 岡田 話は変わるけど、選手として日本に来ることを考えたことはない?

 ジダン ない。最高のクラブでプレーしたいと思い、そうしてきた。アジアと欧州のレベルの差は縮まってきているが、世界最高のサッカーは欧州にある。

 岡田 横浜マ監督時代に代理人からジダンさんの移籍話を持ちかけられて、交渉したことがあった。当時30億円と言っていたけど、私がだまされていたわけだ。

 ――岡田監督はW杯本大会までの8カ月間、日々の積み重ねが大切だと強調しています。ジダンさんから何かアドバイスがあれば。

 ジダン できれば、頻繁に山に行ってください。いわゆる高地トレーニングによって心肺機能が高まるだけでなく、よく眠れるし、いい練習ができる。(聞き手・潮智史、撮影・豊間根功智)

    *

 ジネディーヌ・ジダン 72年6月生まれ。両親はアルジェリアからの移民でマルセイユで育った。カンヌ、ボルドーを経て、96年にイタリアのユベントスに移籍。01年からは当時最高額となる約80億円の移籍金でスペインのレアル・マドリードでプレーした。フランス代表には94年にデビューし、98年W杯フランス大会決勝で2得点を挙げて優勝に貢献。00年欧州選手権も優勝。02年W杯日韓大会はけがを抱えて1次リーグ敗退。04年に代表引退を表明したが、05年に復帰して06年W杯は準優勝。98、00、03年と国際サッカー連盟最優秀選手に。抜群のテクニックで司令塔として活躍した。

■ジダン、見せた世界の技 フットサルマッチに出場

 ジダンさんは10月31日、スポーツ用品メーカーのアディダス・ジャパンが東京・味の素スタジアムで開いたフットサルマッチに出場し、約1万人の観衆の前で世界の技術を披露した。

 ジダンチームに前園真聖さん、小倉隆史さん、名波浩さんらが入り、対するJリーグOBチームは柱谷哲二さん、山口素弘さん、小島伸幸さんらで編成。「世界と戦うための技術と精神を伝える」と、真剣勝負を望んだジダンさんはトラップ、パス、判断の速さなどのあらゆる要素で、元日本代表勢とは違うレベルのプレーを見せた。

 20分ハーフで行われた試合は、8―7でジダンチームが勝利。ジダンさんは2得点4アシストの活躍だった。

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