January 14, 2008
医学的カラダ自己改善トレーニング�� 「脛」を強力な武器に変える
「脛」を強力な武器に変える■当たり負けしない、強い脛
コンタクトスポーツである格闘技において、脛の強さは必須です。キックのときはもちろん、相手のキックを防御するときにも脛で受けるパターンもあります。
また柔道のようにキックのない競技でも、脛がぶつかることはしょっちゅうですし、球技であるサッカーにおいても、自分の脛に自信がなければアグレッシブにボールを奪いには行けません。
相手とぶつかる、もしくはぶつかるリスクのあるスポーツでは、レベルが高くなればなるほど、当り負けしない、怪我をしない身体づくりが大きなウェイトを占めてきますから、フィジカルに自信のない方は、脛の強化にも積極的に取り組んでみてください！
■前脛骨筋を強化する
脛を強くするには２つの要素が必要です。ひとつは筋肉を強くすること。一般的に脛と呼ばれる部分は、脛骨（けいこつ）という骨とその外側に前脛骨筋（ぜんけいこつきん）という筋肉から成り立っています。前脛骨筋は、膝の下から足首まで脛骨に添うようにくっついていますから、前脛骨筋を鍛えることは、脛骨を刺激することになります。
骨は機械的な刺激が加わると、太く強くなりますから、前脛骨筋を徹底的に鍛えることは脛の強化につながります。
【かかと立ち・かかと歩き】
前脛骨筋を鍛えるのに効果的なメニューが「かかと立ち・かかと歩き」です。
前脛骨筋の主な作用は、足関節を背屈（足の甲が脛に近づく方向の動き）することです。ですから、かかとだけで立つと前脛骨筋がぐっと収縮した状態になります。
これで歩き回るだけでもかなりの負荷になりますし、かかとだけを接地してスイングや投球動作、パンチなどを併用することでバランス感覚養成と筋力強化が同時に可能になります。
さらに対人でゲームのように行うのも面白いでしょう。かかと立ちをしたまま向かい合って手で押し合い相手のバランスをくずす、ボールを使ってフェイントをかけながらパスをする、かかと歩きでサッカーボールをドリブルで奪い合う、など遊びの要素をたくさん織り交ぜながらやるととても楽しく強化できます。
■骨と外力について
脛を強くするもうひとつの要素は骨の強さです。骨は、機械的な刺激を受けると骨形成が促進され太く、強くなります。脳梗塞などで運動麻痺になってしまった患者さんや、寝たきりで動けない高齢者の方は、手足がやせ細ってしまい使えなくなるのですが、この状態を廃用(はいよう)といいます。
廃用になってしまうと骨は薄くペラペラになり、ほんの小さな外力でも小枝が折れるようにぽきんと骨折してしまうのです。
若い皆さんでも入院などでベット上の生活を余儀なくされると、あっという間に骨がやせ細ってしまうでしょう。骨は、硬くて、不変の組織のようなイメージですが内部では常に「つくっては壊し、つくっては壊し」の破壊と形成を繰り返す組織です。使わないと破壊がすすみ、使えば形成がすすむという特性を持っているのが骨という組織なのです。
いま、あなたの骨がその強さをキープできるのも、ふだん体重や運動によって、機械的な刺激が加わっているから。地球の重力のおかげです。
使わなくなれば骨は細く弱くなり、適度な刺激が加われば、骨は太くしっかりした強い組織に生まれ変わるのです。
■脛骨をぶつけて鍛える
あらゆるスポーツの中でも、もっとも骨の強さが大きなウェイトを占めるのはやはり格闘技、それも素足で戦うカラテやキックボクシングでしょう。
弁慶の泣き所といわれる人間の弱点を逆に武器として戦う競技ですから、脛と脛がぶつかることもしばしば。脛が弱いと成り立たない格闘技には、他のジャンルではなかなか見られない、様々なトレーニング法が存在します。
脛骨を鍛える場合、最初は柔らかいもので刺激を与えていくというのが安全です。読み終わった週刊誌や硬めの紙を丸めて脛骨の上をコツコツと叩いていきます。これで痛みに慣れたら、丸い木の棒にタオルを巻いてテープや輪ゴムなどで固定するか、タオルを脛に置いて上から棒で軽く叩きます。
いきなり直接ですと、骨へ十分な刺激が行く前に、皮膚や皮下組織が壊れてしまいますから、最初はタオルなどでプロテクトすることをおすすめいたします。
慣れてくればプロテクトを薄くしていきましょう。
これで問題なければ、いよいよ硬くて重いものにチャレンジします。
コーラのビンやビール瓶で、脛の上をごろごろ転がして刺激になれてから、ゴツゴツと叩きます。これも棒のときと同じく、タオルなど柔らかいものでプロテクトしてからはじめ、徐々に薄くしていきましょう。
物を蹴って脛骨を鍛える際も、考えかたは同じです。最初はマットやクッションなどの柔らかいもの蹴って慣らし、徐々に対象物をミットやサンドバッグ、タイヤなどの硬くて重いものにレベルを上げていきます。
トップ・レベルのカラテ家の中には、金属パイプを脛で蹴って鍛えたり、生脛をガンガン他の選手に蹴らせて鍛える（しかも全く動じない！）、ものすごい達人もいます。それらの達人たちも、ライトなものからヘビーなものに、またソフトなものからハードなものにステップ・アップしていくやり方を薦めています。遠回りに思える方法が、実は強くなるいちばんの近道だったりします。
■トレーニングのステップ・アップ
すべてのトレーニングにいえることですが、運動を始めたばかりの方の中には、一気に強くなろうとしていきなり無茶をやり、身体を壊してしまう方が少なくありません。
ローキック一撃で相手を倒し、野球のバットを折り、時には金属バットさえも曲げてしまうような強靭な脛を持つ格闘家たちも、段階を経ながら、十分な時間をかけて、鉄を切れ味鋭い名刀に変えるように、じっくりと丁寧に最強の脛をつくっていったのです。
算数でも足し算や掛け算を何度も繰り返すから、将来難しい方程式や微分積分が解けるのですし、山登りでも、まずはハイキング・レベルの低い山から体験し、徐々に高度と危険度を上げるというステップ・アップの過程を経て高い山に挑戦できるのです。
いきなり何の経験もなしにエベレストに登頂しようとすれば危険ですし、ふつうはまず無理でしょう。
私も格闘家・アスリートのリハビリテーションや、トレーニング指導の際、ゴールをイメージしつつも、今の位置をしっかり把握して、いまやるべきことに集中する、ことを意識してもらっています。
ゴールはエベレスト、と明確であれば、富士山に登ることはエベレスト登頂のための様々な準備の場になりますし、試行の場になりえます。ゴールをイメージし、現在の位置がわかっていれば富士山は富士山ですが、登山者にとってエベレストを見据えた富士山になりえるということです。