|
|
きょうのコラム「時鐘」 2009年11月6日
観衆が興奮し、ベンチもざわめく中、テレビカメラがとらえる松井秀喜選手は終始、落ち着き払っていた。2本、3本と殊勲打を放った後も変わらなかった
入団1年目、雄たけびをあげ、飛び上がって本塁を踏んだ姿が強く印象に残る。そんな歓喜の姿は見られず、喜びには節度があった。ジャンプして喜びを表すのが米国流なら、松井選手は変わった 小紙の番記者に、松井選手は世界一の目標を繰り返し語ってきた。「新聞の見出しは『ヤンキース優勝。松井は5打席無安打』。それでもいいんだ」とも。うれしいことにそうはならず、自分のバットで念願をかなえた。長い苦闘の道のりを「つらいことはなかった」と言い切る強さ、自分を律する喜びの姿は、紛れもない日本人の美徳であろう 栄光を手にして、今度は球団との契約という闘いが待つ。晴れやかな気分のとき、松井選手は番記者に「グッド・ラック、トゥモロー」と声を掛けて別れる。勝負は時の運。ニューヨークの女神は、世界一の幸せを授けてくれた ヤンキースが大好きな松井選手に、女神がもう一度、ほほ笑んではくれないだろうか。 |