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創業地の文化施設撤退…サントリーミュージアム休館

統合交渉影響か、「想定上回る負担」強調

 サントリーホールディングスが複合文化施設「サントリーミュージアム天保山」(大阪市港区)の休館に踏み切るなど一部の文化事業の縮小に乗り出した。背景には、キリンホールディングスとの統合交渉が影響しているとの見方がある。創業の地である大阪で唯一の文化施設の休館を決断したことで、今後、東京都港区にあるサントリー美術館や、サントリーホールをどう維持していくのか注目される。

(井岡秀行)

来場者減少

 サントリーはこれまで、株式を上場しない「非上場企業の名門」として、多彩な文化活動を行ってきた。 ミュージアムは、当時会長だった創業家出身の佐治敬三氏が周囲から「大阪発祥なのに東京にばかり文化施設を作っている」と言われたのを気にして建設を決断したといわれる。

 だが、ミュージアムは当初目標としていた年150万人の来場者を毎年達成したとしても赤字が見込まれていた。2008年の実績は約65万人にまで落ち込み「想定を上回るコスト負担が出ていた」(品治利典執行役員)という。

企業イメージ

 上場企業であるキリンとサントリーの経営統合が実現すれば、新会社は株式を上場することになり、経営を監視する株主の目を意識せざるを得ない。株価を高い水準で維持し、株主配当を増やすことも求められる。このため「統合後は、非上場企業ならではの思い切った文化貢献活動を継続するのは難しい」(食品メーカー)との見方が多かった。

 サントリーは、ミュージアム以外にも、1961年にサントリー美術館を開設。86年には東京都内初のコンサート専用ホールとしてサントリーホールを建設した。いずれも収支は赤字だが、「文化活動に熱心」という企業イメージを培ってきた。

 ミュージアムの赤字額は、ほかの文化施設に比べて突出していた訳ではないが、企業ブランドの価値向上への貢献度がほかの施設より低いと判断して休館を決めたという。ただ、今後の統合交渉では、ほかの文化事業も協議の対象となるとみられる。企業ブランド価値の向上という数値で計ることができない効果を巡り、サントリーは難しい判断を迫られそうだ。

2009年8月22日  読売新聞)

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