その現場は、死後1週間で発見された変死現場だった。
当然、きつい孤独死の現場にはつきものの死臭が部屋中を占領していたのは言うまでもないのだが・・・
その現場には、死臭とはまた違う臭いが漂っているような気がしたのです。
それは、鼻で感じる臭気ではなく眼で感じる臭気だったのです。
まだ、若い50歳の故人は10年前に離婚して家族の去った、自宅で独居生活をしていたそうです。
しかし、中年の男性は不器用なもので、食事や炊事、洗濯だけでなく地域とのつながりを保つ事も全て放棄しながら、生きていたのでしょう。
室内は乱れまくり、衣類は散乱し、その10年間は全く掃除なんてしたことがないと想像がつくのです。
そして、死臭よりもさらに強烈なインパクトを私に与えたのは、無数に転がっている飲み干して空になった缶ビールです。
「こんなに転がっていたら、踏んじゃって怪我するよな・・」
「本当ですよね。なぜ空き缶を捨てなかったんでしょうか・・」
「まあ、めんどくさがり屋さんだったとしか言い訳も出来ないだろうな」
「こんなにアルミ缶ばっかりだった、かえってお金にもなるんじゃないですか」
「そうだけど、そんな事普通は思いつかないだろう・・」
通常の作業では、分別した遺品は段ボールケースに仕分けしていくのですが、今回は段ボールケースには少ししか入らず、まるで空気を運んでいるような状況になってしまいます。
空き缶を一つづつ足で踏んで潰していく事も考えましたが、あまりの量で時間的に難しいという結論に達し、大きなゴミ袋にまとめる事に・・
そして、出てきた袋の数は30袋以上。一袋の数までは数えませんでしたが、少なく見ても70缶位は入っていたでしょうか、ざっと見積もっても2100本って事です・・
毎日6本ぐらいのペースで飲んだら、1年でも2100本を超えますので10年近く捨てていなかったとしたら大した量ではないのかもしれませんが、まとめて見るとエゲツない量です。
そして、蒸発しているはずのアルコールの臭いが死臭とともに襲ってくるのです。もしかすると、蒸発したアルコールが室内に染みついていたのかも知れませんね。
とにかく、容積的には家財の量に匹敵する物量になったのには、ちょっと驚きでした。
「これも故人の遺品なんだよな・・・」
「そんな事まで考えるんですか?」
「だって、これが故人の生き様をめっちゃリアルに表しているやないか・・」
「そうですね、故人の大好きな物だったんですよね」
「でも、中身やけどな。」
「もう、いいですよ早く会社へ帰りましょ!!!」
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男女に限らずアルコールに依存していたのではないかと想像してしまう遺品整理現場はとてもたくさんあります。
独居→孤立→孤独→独死→腐乱死
離婚後の、この哀しい死へのスパイラルを加速させたのは”アルコール”にも原因が有るのは確かでしょう・・
もちろん孤独な酒が悪い事では有りません。
しかし、人によってはほどほどにしておかないと、このような孤独死に至ってしまうかも知れないんだという事も頭の片隅に置いていてもらいたいのもですね。
他の人は、堪らない臭いと感じるでしょうね。
空き缶が何か物悲しさを語ってますね。
…寂しいですね。
孤独って辛いよ。
だから別に好きな訳じゃないだろう…
理解していないんだな、ここのブログ主