きょうの社説 2009年11月5日

◎能登丼の発信 絶えず積極的な話題づくりを
 「ご当地グルメ」を核とした地域おこしを持続させ、成果を拡大していくためには、切 れ目ない話題づくりが欠かせない。「能登丼」の発信に取り組む奥能登ウェルカムプロジェクト推進協議会が1月、金沢市で「全国丼サミットいしかわ2010D−4」を初開催するのも、そうした意識があるからだろう。今後も、より多くの人の関心を引き寄せる仕掛けを絶えず模索する積極的な姿勢を持ち続けてほしい。

 能登丼の発信は2007年12月にスタートし、今年8月までに約8万8千食も売れた 。その勢いは2年目に入っても衰えず、はしや器を含めた売り上げは約1億6千万円に達しているという。フードピアランドへの出店やスタンプラリーの実施などが奏功して、能登丼の名は県内を中心に着実に浸透しており、奥能登の活性化策としては既に一定の成功を収めたと言ってよい。ただ、知名度を「全国区」に高め、観光誘客などにつなげていくためには、さらなる努力と工夫が必要だろう。

 全国丼サミットには、奥能登のほか、同じく特色ある丼の売り込みに力を入れている神 奈川県小田原市など3地域が参加し、友好協定が締結される予定である。こうした連携は、それ自体も一つの話題になるが、それだけで終わらせてしまうのは惜しい。この枠組みを生かし、次の話題づくりも考えていきたいところだ。

 隣県の高岡市は、「コロッケのまち」という共通点を持つ茨城県龍ケ崎市や静岡県三島 市と「三コロ会」を結成しており、先ごろ開催された「高岡B級グルメ博」でも、両市を招いて全国コロッケコンテストを企画し、来場者の注目を集めた。奥能登もこうした事例を参考にしてもらいたい。

 もちろん、話題になった地元産の食材を能登丼にうまく取り入れて、知名度を引き上げ ていくことも大切である。たとえば、県がブランド化を目指している「能登本まぐろ」は、出荷量がまだ心もとないという課題さえクリアすることができれば、丼に最適の食材の一つになるのではないか。これからのメニューの「進化」にも大いに期待したい。

◎首相の偽装献金 「知らない」では済まぬ
 鳩山由紀夫首相が衆院予算委員会で、自らの偽装献金問題について、個人資産の流用を 認めながらも、「元秘書を信頼していた。全く承知していなかった」と改めて関与を否定した。自身の責任については「地検の捜査に委ねたい。いずれ全容が解明する」と述べるにとどまった。ずさんな資金管理の実態を自ら調査し、国民に開示しようとする意思がまったく伝わってこないのは残念というほかない。

 鳩山首相は野党時代、「疑惑を指摘された閣僚が資料を提示し説明責任を果たすのは最 低限の務め」「政治家は金銭に絡む疑惑事件が発生すると、しばしば『あれは秘書のやったこと』とうそぶいて、自らの責任を逃れようとしますが、とんでもない。秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべき」などと発言してきた。首相の過去の言説と照らし合わせても「知らない」では済まされない。

 4日の衆院予算委員会で、鳩山首相は元公設第1秘書が鳩山家の資産管理会社「六幸商 会」から資金を引き出した際に自ら署名し、引き出しを承認していたことを初めて認めた。引き出した理由については「政治活動資金が足りなくなったから借用するとの認識だった」などと述べた。

 引き出した資金を偽装献金に使うとは思っていなかったと言いたいのだろうが、これほ ど巨額の資金の用途を「誤解」していたというのは説得力に欠ける。02年5月、鈴木宗男衆院議員の秘書が偽計業務妨害容疑で逮捕された際には、「議員の分身と言われている会計責任者の逮捕は議員本人の責任」と厳しく断罪しながら、我が身にはね返ってきた今、自分の責任については一切語らず、人ごとのように軽く受け流す態度には、あきれるばかりだ。

 首相の「政治とカネ」をめぐっては、08年の株売却益7200万円の申告漏れも新た に発覚した。鳩山首相は「うかつだった」と陳謝したが、偽装献金問題に続く巨額の申告漏れであり、経理のずさんさは目に余る。この問題についても国民への説明責任をしっかりと果たすべきだろう。