自民党内で、麻生太郎首相(写真)に辞任を迫る“麻生下ろし”が活発化してきた。
直接のキッカケは、日本郵政の西川善文社長の再任を巡るゴタゴタと、支持率の急落である。盟友である鳩山邦夫・総務相を更迭したことで世論は硬化。大手マスコミの調査でも内閣支持率が二〇%前後へと急降下し、「とても衆院の解散、総選挙を打てる数字じゃない」(町村派幹部)ところまで追い詰められている。
「辞任問題は、誰が考えても鳩山総務相に分と理がある。国民もそう思っている。だから支持率が急落した。それなら、麻生では総選挙は戦えないということだよ」(自民党幹部)
実際、千葉市長選では大敗した。
これを受けて永田町では、こんな政治カレンダーがささやかれている。
「首相サイドは、七月八日からのイタリアサミットだけは『どうしても行かせたい』と各所に“懇請”している。現職の総理だし、仕方がない。“花道サミット”にすればいい。十二日の都議選は与党が負ける公算が大きいが、そうなれば“麻生下ろし”で総裁選が前倒しになる。投票日を八月二日にするか、あるいは月末の三十日、九月六日にするかで、動きは少し変わるがね」(永田町筋)
すでに水面下では、ポスト麻生の候補名が蠢いている。
「本命は谷垣元財務相。対抗に舛添厚労相、与謝野財務相、石原幹事長代理、石破農相、町村元官房長官らだが、“隠れ本命”は鳩山だな」(自民党幹部)
各候補には寸評も付いて回る。
「谷垣では大勝できない。舛添は青木(幹雄・前参院議員会長)が推しているだけ。石原や町村は本人だけが大乗り気。逆に鳩山なら人気もある。総裁になって総選挙なら“兄弟対決”でワイドショーも乗ってくる。いい勝負になるな」(事情通)
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そこまでコケにされている麻生首相が耳を傾ける盟友は、今や菅義偉・自民党選対副委員長と公明党の東順治・副代表の二人だけとなった。首相はこの二人とは波長が合うらしく、両氏の助言には心底信頼を置いている。衆院解散の先送りも、二人の助言を採用したものだった。
その菅氏が今進言しているのは、総選挙前の内閣改造と党役員人事。人事の狙いは、細田博之・幹事長と河村建夫・官房長官の「首のすげ替え」にある。選挙戦に入ると、テレビの討論番組で各党幹事長は何度も引っ張り出される。口が重たい細田氏は、コミュニケーション技術に長けた岡田克也・民主党幹事長に太刀打ちできないし、河村官房長官の説明能力は内閣のイメージアップに貢献していないという理由だ。
幹事長候補に挙がるのは、ポスト麻生候補にも名前が挙がる舛添厚労相、石破農水相、石原幹事長代理の三氏。首相周辺の見方では「舛添幹事長、園田博之・政調会長」がベストの組み合わせで、後任官房長官には豪腕の菅氏が納まりがいいということで衆目が一致している。
ただ、これまで何回も菅氏の進言を取り入れてきた麻生首相だが、内閣改造、党役員人事だけは聞き入れないだろうという見方が支配的だ。
首相の最側近の一人は「いったん信頼した人となら多少のことには目をつむる麻生気質を考えると、細田・河村を外して他の閣僚に横滑りさせるミエミエの人事で恨みを買うようなことはしない」と断言する。
もっとも、現状では麻生内閣の入閣待望組もいない。となれば、総選挙前のサプライズもなく麻生内閣はジリ貧に向かうことになる。都議選で負けたら「首相は引責辞任する」と盟友・菅氏がオフレコ懇談で言っているが、これも首相と打ち合わせ済みの決定事項というのが永田町の見方となっている。
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麻生下ろしは党内だけではない。「決断が遅く、結論が出ない。指導力に疑問符が付くことは否めない」
麻生首相が鳩山総務相を更迭した六月十二日、連立を組む公明党の漆原良夫・国対委員長はこうコメントした。公明党の幹部が首相を公然と批判するのは極めて異例。支持母体である創価学会員の声を代弁したもので、支持者の首相への不満が頂点に達しつつあることを物語っている。
党や創価学会にとっては、昨年九月の麻生政権発足以降、苛立つことの連続だった。東京都議選前に総選挙という進言は受け入れられず、西松事件での「敵失」を生かすことなく、公明党が最も嫌う女性問題で鴻池祥肇・官房副長官(当時)が辞任。厚労省の分割構想でのブレ。そして鳩山氏更迭と、麻生政権が「オウンゴール」を重ねた“とばっちり”で、公明党も逆風下にある。
実際、創価学会は首都圏を中心に五月下旬から、紹介者カードを基に一般の有権者に会い、都議選での支持を働きかけているが、麻生政権への不満をぶつけられることも多く、「感触は良くない」(同筋)と言う。
党や創価学会幹部は、「政治とカネ」の問題など「自民党のせいで負けた」(同)〇七年参院選の悪夢の再来を懸念している。
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民主党を取り巻く情勢が好転、政権交代近しのムードが広がり、意気軒高だ。「西松建設違法献金事件」に直撃された小沢一郎代表が辞任、鳩山由紀夫・幹事長(写真)と党首交代したのが転換のきっかけとなった。名古屋、さいたま、千葉と政令都市の首長選で連勝したのも、予想以上に鳩山民主党への国民の支持率が高まっているのと無縁ではない。
しかし裏返せば、麻生自民党があまりにもお粗末で、失態続きのせいであり、いわば敵失による側面も見逃せない。麻生首相は、「かんぽの宿」一括売却問題をめぐり西川善文・日本郵政社長の責任を追及していた盟友の鳩山邦夫・総務相を更迭、評判を落としたほか、減反見直しや厚生労働省分割をいったん表明しながら党内の反対ですぐに撤回するなど、統治能力の欠如をさらけ出した。
勢いづく鳩山民主党は、国会対策でもそれまでの強硬な対決方針を転換、補正予算関連法案や海賊対処法案、年金改正法案といった重要法案の審議促進に踏み切り、六月二十日前に成立させた。政治日程に余裕を持たせることで、早期の解散、総選挙に誘い込む作戦である。
「骨太の方針」で消費税増税を示し、党内から「カチカチ山のタヌキ」と酷評された麻生首相が、直面する難局を打開できるかどうか。東京都議選(七月十二日投開票)で自民党が敗北すれば、総裁選前倒しで交代を迫られるか引責辞任という見方が出始め、このため七月二日にも衆院を解散、七月二十一日公示、八月二日投票とする、一か八かの勝負に賭けるとの観測も出ている。
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政権交代を賭けた総選挙を控えて、外務省に激震が走っている。
民主党は政権を掌握した場合、霞が関全官庁の局長以上にいったん辞表を提出させ、民主党に忠誠を尽くす者だけを再登用する方針を打ち出しているためだ。「民主党政権なら、外交・安保政策の動揺は避けられない」(外務省霞クラブ記者)。
「鳩山首相」の下での外相候補としては、「朝日新聞」のワシントン支局長などを務めた船橋洋一主筆が挙がっている。船橋氏は一九九八年発足の小渕政権下でも外相を打診されたが、断った経緯がある。しかし、民主党の外交政策はリベラルな同氏とも近く、今度要請されたら本気で検討するとみられている。
ただ、外相は権威や利権を伴う、おいしいポスト。やっと獲得した政権で、これをみすみす民間人に渡すことには、民主党内で反発も強まるだろう。
一方、民主党政権の外務副大臣には新党大地の鈴木宗男・衆院議員が抜擢されるとの噂もある。鈴木氏は小沢前代表との間で選挙協力に合意した際、外務副大臣ポストが条件だったとの密約説がある。副大臣ポストを得ることで、同氏を塀の中に追いやった外務官僚に報復するとの噂もあり、外務省幹部は戦々恐々だ。
外務省では、来年一月に大型人事が行われ、藪中三十二・外務次官が退陣する予定だ。「外務省内では、次の次官は佐々江賢一郎・外務審議官、次の次は別所浩郎・総合政策局長という“規定路線”がありますが、民主党政権なら全く異なる人事になるでしょう」(外務省筋)。
「国益より私益」の外務官僚にとって、いまや外交どころではない。「外務省幹部は全員が自民党に投票する」(霞クラブ記者)ことになりそうな雲行きだ。
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鳩山邦夫・総務相の辞任後の六月十七日、通称・鳩山御殿で開かれた慰労会には、なんと二十七人もの国会議員が参加、自民党関係者を驚かせた。鳩山氏はもともと政界再編論者。「永年続く政局の混迷を落ち着かせるには、理念を同じくする者同士が集まって安定した新党を結成すべきだ」とこれまで一貫して主張してきているだけに、再編の動きが注目される。
鳩山氏は、その新党の名前を「環境党」とすることまで決めて、数年前から密かに同調者を集め、音羽の鳩山御殿に定期的に同志を招いて「勉強会」名目で絆を強めてきた。
一方で鳩山氏の頑固さは誰しも認めるところ。先般の西川日本郵政社長解任騒動でも、「自分の信念は曲げられない」「正義を唱えて何が悪い」と、大の盟友である麻生首相の説得をも振り切って、総務相を辞任した。とかくポストにしがみつこうとする政治家が目立つ中、異色だ。
民主党代表の鳩山由紀夫氏は、いわずと知れた邦夫氏の実兄。兄弟は長年不仲だったが、最近よりを戻し、政治に強い関心をもつ人たちを対象に鳩山友愛塾を共同で設立するなど、関係を深めている。きたる総選挙では自民党の苦戦が必至と各メディアの調査で分析されており、与党の自民、公明の当選者を合わせても過半数割れとする観測がもっぱら。そのような事態となった場合、キャスティングボートを握るのは新党となる可能性が高い。
邦夫氏が持論の政界再編成で新党結成に走ると、政界、政局を左右しかねない存在になりそうだ。
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厚労省の現職局長逮捕にまで至った、障害者団体・凛の会(現・白山会)による郵便不正事件は、国会議員にまで追及の手が伸びるのではないかと取り沙汰されている。
「名前が挙がっているのは民主党の石井一・参議院議員と牧義夫・衆議院議員です。倉沢容疑者は石井一氏の元私設秘書。凛の会に早く許可を出すよう厚労省に電話を入れたのが石井事務所で、日本郵政に陳情に行く傍らで凛の会のライバル団体の不正を国会で質問したのが牧議員です」(大手新聞社会部記者)
この二人の議員、共通項は「民主党」だけと思われがちだが、思わぬ人脈図でつながっている。
「石井一議員の実弟で参議院議員だった石井一二事務所という補助線を引くと、よく分かる」(議員秘書)
この兄弟は事務所ぐるみで仲が良く、倉沢容疑者も後に石井一事務所から一二議員の秘書になったが、いわば両方の事務所の仕事に関わっていたようだ。そして、牧義夫議員の秘書もかつては石井一二議員の秘書だったのである。
「石井兄弟は金の話が多いと昔からいわれていた。党の役員時代は、経費をたっぷり使い、後任に引き継ぐときには金庫が空っぽだったなんていう金にまつわる噂は枚挙に暇がなかったんです」(元政党職員)
石井兄弟の秘書たちが今度の事件の水面下で動いていたのか。
取り沙汰されている二人の現職国会議員をつなぐ秘書の人脈。根深いところに真相があると見て捜査が進んでいるのだろう。
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農林中央金庫と農林水産省が天下りを巡り、水面下で熾烈な神経戦を展開している。
農林中金は農水省にとって、有力事務次官が理事長として天下ってきた、いわば「天領」。日本中央競馬会、旧農林漁業金融公庫(現・日本政策金融公庫)と並び、農水省の「天下り御三家」とも呼ばれてきた。
しかし農林中金が、サブプライム問題に端を発する世界的な金融危機の影響で二〇〇九年三月期に巨額の赤字を計上。系統組織から一兆九千億円もの資本支援を仰いだ責任をとって、上野博史・理事長が退任。後任に生え抜きの河野良雄・副理事長が四月一日付で昇格した。
だが、有力な天下りポストを失うことになった農水省がすんなりと、この人事を受け入れたわけではない。
「農水省は河野氏の理事長昇格が決定した後も空席となった副理事長に、元次官で農林中金総合研究所顧問に就いている小林芳雄氏を潜りこませようと画策した」(関係者)という。
しかし、全国農業協同組合中央会(全中)がこれに反発。「河野新理事長の求心力が低下するような天下りの継続は再建を危うくする」として、農林中金出身で全中専務の向井地純一氏を副理事長に送りこんだ。
農水省側はこれに対抗して農林中金総研に理事長職を新設させ、小林氏を昇格させる一方、後任顧問にやはり元次官の白須敏朗氏を押し込もうと圧力をかけているという。「農林中金の理事長職はあきらめるが、総研に天下りポストを二つ確保することで焼け太りを狙った」(関係者)というわけだ。
だが、もはや天下りは過去の遺物化しはじめており、社会的な批判も強い。農林中金は今年度九月中間期決算で黒字転換する可能性が高く、そうなれば天下り話は雲散霧消するとみられている。
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二〇二〇年までの日本の温室効果ガス排出削減の中期目標は、麻生太郎首相が六月十日、「〇五年比一五%減(一九九〇年比八%減)」とする方針を発表したことで、ようやく日本の姿勢が固まった。
麻生首相は「野心的な目標」との認識を示したものの、欧州連合(EU)の一三%減、米国の一四%減を上回る水準なだけに、もともとゆるい削減幅を求めてきた経済界にとって「極めて厳しい目標」(日本経団連の御手洗冨士夫会長=写真)となった。経済団体の足並みの乱れが経済界の最大の敗因になったことは否めないだろう。
そもそも、経済三団体が五月に入ってそれぞれ公表した意見書を見れば、足並みの乱れは一目瞭然だった。削減目標として経団連は四%減、日本商工会議所が六〜一二%減で、経済同友会は政府案に最も近い一四%を掲げた。団体を構成する会員のうち大企業の顔ぶれはほとんど変わらないことから、経済三団体は政策要望でこれまでほぼ方向性を一にしてきた。それだけに、経済三団体がこれほどバラバラな見解を示したことはかつて例がない。
経済三団体が一枚岩になれなかった要因は、ひとえに経団連が実行可能性を最優先に、〇五年比四%減に頑なに固執したことが大きい。世界的な潮流を読み切れず、斉藤鉄夫・環境相に「世界の笑いものになる」と酷評された、極めてゆるい削減目標を提示することになった経団連。経済界の意思統一を図れなかった責任は、いうまでもなく御手洗冨士夫会長にもあるだろう。
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電気事業連合会の森詳介会長(関西電力社長)は六月の記者会見で、二〇一〇年度までに十六〜十八基の原発で実施すると公約していた電力業界のプルサーマル(軽水炉でのプルトニウム利用)計画を一挙に五年延期するという方針変更を発表。この問題に取り組んでいた現場の電力関係者や政府関係者を驚かせたが、この変更の引き金を引いたのは、核燃料サイクル計画の絡みで最も積極的であるはずの青森県の三村申吾知事だったことが判明した。
三村知事自身は、延期を報告に来た電事連の森本宜久・副会長には「(核ゴミの)プルトニウムを平和に使い切るという国の大方針がある。計画の早期実施、体制確立は不可欠だ。だらけちゃ困る。ちゃんとやってくれ」と厳しく注文をつけたという。それだけに、同じ三村知事がどうして変更の引き金を引くのかという疑問が浮上する。
ある電力関係者は「たしかにそういう話がある。悩ましいところだが、われわれが関与する日本原燃の六か所再処理工場の側もトラブル続きで計画がスムーズに進んでいないため、三村知事にも、目前の一〇年の計画目標を先延ばししたほうがいいのでないかという政治的・行政的な判断があったのでないか」と言う。
三村知事周辺は、この問題に関してはノーコメント。ただ、核燃料サイクル計画にかかわる当事者だけに、行政が延期を指示したというのも妙な話。それに六か所再処理工場のトラブルもあり、電事連側にうまくゲタを預けたのでないかという見方がもっぱらだ。
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東証一部上場で、原油タンカー主力の老舗海運会社、太平洋海運が「難破」した。昨夏以降の景気低迷に端を発した契約上のトラブルで経営が急速に悪化。筆頭株主の日本郵船の支援を仰いだ結果、年内に同社の完全子会社になり、上場を廃止することが決定した。関田滋社長は六月末に引責辞任。後任には日本郵船元常務の松永武士氏が乗り込み、再建の指揮を執る。
契約上のトラブルが発生したのはリレット(再用船)と呼ばれる事業。船主から借りてきた船に自社の利益を上乗せして別の会社に貸し出す、いわゆる「又貸し」だ。太平洋海運は用船したばら積み船四隻を複数の海外海運会社に再用船していた。ところが、昨秋、これら海運会社が市況暴落を理由に一方的に船を返してきた。
期待していた再用船料収入がゼロになったことに加え、返船に伴う解
約料の集金が滞る始末。出戻り船の船主への返却もままならず、太平洋海運は不要船の自主的な赤字運航を強いられることになった。
そしてこの損を埋めるため、急遽タンカー一隻をマレーシア企業に売ったものの、譲渡契約をきちんと結んだにもかかわらず今度は期限までに代金が払い込まれないという事態が起きたのだ。
これに加えて、今年に入ってさらなるトラブルが発生する。用船したばら積み船二隻の再用船先である韓国船社サムスンロジックスが信用収縮の影響でまさかの経営破綻。損失をもろにかぶり、結局、太平洋海運は二〇〇九年三月期に二十四億円の最終赤字に追い込まれ、最終的には日本郵船に泣きつくしかなかったというわけだ。
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運用資金はついに10分の1、「清原ファンド」が壊滅寸前 |
二〇〇四年の高額納税者番付で「申告所得百億円」と公示され一躍、有名になったのが、タワー投資顧問の清原達郎氏だった。肩書は運用部長で、一介のサラリーマン。国民はファンドマネージャーにもたらされる巨額成功報酬に驚いた。
しかし、清原氏が買えば「清原銘柄」として儲かるといった時代は〇六年一月のライブドア事件までだった。新興市場の暴落で行き詰まり、さらにサブプライムショックが追い打ちをかけ、今や「清原ファンド」は壊滅寸前だという。
ファンド関係者が明かす。
「ピーク時に三千五百億円近かった運用資産は三百億円を割っていると思います。残っているのは昔からのつき合いの年金が多いのですが、清原さん自身が投じている資金も百億円近い。本人はもう一度やり直したいと思っているようですが、オーナーが手を引きたがっている」
実は清原氏のタワーグループは、タワー証券とタワー投資顧問の二社で構成され、役員に名を連ねていないYという人物がオーナーで、雇われファンドマネージャーの清原氏は、「利益の二割」という成功報酬をYオーナーと折半している。
Y氏は、清原氏の“腕”もあって十分に儲けたから、これ以上傷口が広がらないよう、証券会社も投資顧問会社も一旦閉じたいのが本音だ。
「タワーグループは、清原氏と野村證券で同期の谷村哲夫(タワー投資顧問代表)と、同じく同期の時岡慎(タワー証券前社長)の野村トリオで引っ張ってきた。でも、Y氏は昨年、時岡氏を辞任に追い込み、谷村氏にも辞任を迫っている。いずれ会社を清原氏に譲るか、強引にファンドを閉じるだろう」(証券界事情通)
「清原ファンド」のいさかいと衰退は、管理相場の色合いを濃くした今の証券市場を象徴している。
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ネット銀行の中で今も預金量が最も多いソニー銀行。同じ先発組で、決済に重点を置いたジャパンネット銀行やイーバンク銀行に比べ、資産運用のネット銀行評価を高めてきた。失速の兆候が現れ始めたのは、一昨年九月、住信SBIネット銀行が登場してから。同行はSBI証券との即時の資金移動や決済、優遇制度を打ち出し、傘下にソニーバンク証券という小規模証券しかないソニー銀行は劣勢に回った。昨年七月には、KDDIと三菱東京UFJ銀行の合弁による、じぶん銀行も登場した。注目されたこの夏の一年定期の預金金利は、住信SBIが〇・九%、じぶん銀行が〇・八%、ソニー銀行は〇・七五%と、完全に存在感を失っている。
ソニー銀行は手数料でもビハインドだ。住信SBIは月三回まで他行への振込手数料を無料化し、みずほ銀行でさえ、六月から残高五十万円以上を条件に月三回まで無料にしてきた中、ソニー銀行はしっかり二百十円では、いかにも分が悪い。入出金のたび、あるいは定期預金の満期が近づくとメールで知らせてくれる機能は他社にないケアぶりだし、サイトのレイアウトも見やすく、デザインも「ソニー」らしく洗練されてはいる。が、いかんせん、肝心の内容で他社に引き離されるようでは、資金流出は必至だ。
親会社のソニー本体も体制が変わり、「世界のソニー」の明確な方向性がいまだ見えない。ソニー迷走を象徴するかのような、ネット銀行の雄、ソニー銀行の失速だ。
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東京・丸の内のみずほフィナンシャルグループ(FG)本店地下にある理髪店「ほづみ」が今、ちょっとした賑わいを見せている。
午後二時あたりから、企画部門をはじめとしたFG中枢の幹部行員らが、看板の出されていないこの理髪店のドアをくぐっていく。
何のことはない、勤務時間中にのんびりと髪を刈ってもらっているのである。関係者によると、この理髪店は、多忙で床屋に行く時間さえない首脳陣のために設置されたもの。それが今や幹部行員らによる「昼下がりのサロン」(事情通)と化してしまっているわけだ。
「いまウチが置かれている状況は危機的。ましてこれから投資家に頭を下げて六千億円もの公募増資をお願いしなければならない時に、肝心の中枢部が揃いも揃って呑気に……」。都内支店勤務のみずほ銀行(BK)中堅行員の一人は憤懣やる方ない。
二〇〇九年三月期決算。みずほはメガバンク最悪となる五千八百八十八億円の連結最終赤字を計上、三月末の自己資本比率は一〇・五五%と、前期末の一一・七%から一ポイント以上も低下した。何より衝撃的だったのは、金融機関の資本の健全性を示す国際指標ともなりつつある「コアTier1」の劣化。中核的自己資本から優先株や優先出資証券、繰延税金資産などを差し引いたそれが二千百億円余りに激減し、コアTier1比率が〇・三五%にまで目減りしてしまったのである。
BK若手行員からは「FG幹部なら頭を刈るのではなく、むしろ頭を丸めるべき」といった声がしきりだ。
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経営再建中の「新銀行東京」の社長に、旧三菱東京UFJ銀、新生銀OBの寺井宏隆氏が就任したことが金融関係者たちの関心事になっている。何しろ新銀行東京は、石原慎太郎・東京都知事が積極的に創設に関与し、都が一千億円の出資、さらに四百億円の追加出資をしたのに、スタート当初から赤字続きの、いわくつきの銀行だ。
このため今回、四代目の寺井氏の社長就任について、金融関係者の間では「泥舟に乗ってどうする気だ。半ば官僚銀行みたいな銀行に入っても腕の振るいようがないはず」という批判的な見方の一方で、「旧三菱東京UFJ銀を経て新生銀では専務を務めており経験豊富だ。寺井氏なりに考えているはず」と理解派もいる。
その理解派によると、寺井氏は今回、就任に際して外資系銀OBや弁護士などによる経営監査役会を組織し、みずほ銀OBの伊藤勝教氏らを招き入れて経営監査を厳しくやる方針でいる。また、政策金融機関にセーフティネット融資のニーズが強いため、新銀行東京も審査を厳しくしながらも同じような融資に積極姿勢を見せれば、存在感が出てくる。それを経営再建のきっかけにするビジネスモデルを考えているのでないかという。
とはいえ、NPO「情報公開クリアリングハウス」から一千二百五十五億円を求められる住民訴訟など難しい中で、メガバンクOBといえどもボロボロになるリスクもある。
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600億円の社債を高利調達、ソフトバンクの台所事情 |
「これは、メーンバンクのみずほフィナンシャルグループが融資を絞っているということだ。ソフトバンクは相当に厳しいようだ」
こう顔を曇らせるのは、携帯電話事業を担当する総務省幹部。
気にしているのは、ソフトバンクが五月二十六日に発表した無担保社債のこと。二年後の償還で六百億円を集めるが、金利は五・一%。有利子負債が二兆円近く、投機的格付けのソフトバンクとしては高利調達も仕方がないのだが、それが「みずほに見捨てられたからだ」ということになると、風景が変わってくる。
連結売上高は微減ながら二兆六千七百三十億円を確保、営業利益は三千五百九十一億円と四期連続で最高益を更新しているソフトバンクだが、負債の重圧は大きい。中でもみずほは、ボーダーフォン日本法人買収に全面的に協力、ソフトバンクが一兆七千五百億円の買収資金をリファイナンスした際、みずほ信託を窓口に一兆四千五百億円を融資した。
その分、厳しい特約条項がついており、売上高や新規契約数などで少しでも手を抜けば、みずほの厳しいチェックが入ることになっている。
その最たるものが純増数で、ソフトバンクはこの純増で二十四カ月連続一位と驚異的な実績をあげている。だが、光通信の協力を得て始めた新規獲得で、法人会員獲得の際、新規を水増しする大量の「寝かせ」が発覚し大問題となった。特約条項を“違法”にすり抜けていることが判明したため、「少し距離を置く」(みずほ関係者)ことになったという。
みずほが今後もソフトバンクに対して厳しい姿勢を取るようなら、携帯電話部門の身売りなど、具体的な撤退策を考えなければならない可能性もある。
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六月の改正薬事法施行に伴い、一般用医薬品、いわゆる大衆薬の店頭販売規制が大幅に緩和された。これまで薬剤師を配置しなければ販売できなかった大衆薬だが、新資格の「登録販売員」を店に置きさえすれば、一部商品を除き、ほぼ九割超の大衆薬を販売できるようになった。
イオンの岡田元也社長は「この成長分野にかかわらないということは考えられない」と述べ、約一兆二千億円近い大衆薬市場で一気呵成に攻勢をかける考えを示した。そのうえで法施行の六月一日に、グループのドラッグストア十社などで販売するプライベートブランドの大衆薬を一新し、同時に価格も引き下げた。
これに負けじとセブン&アイホールディングスも、昨年資本・業務提携した大手調剤薬局のアインファーマシーズと共同で、ドラッグストアの運営会社「セブンヘルスケア」を設立して、大衆薬市場に積極参入した。
さらに流通二強は大衆薬の値下げ競争を展開。「ジャスコ」は三百品目の値下げに踏み切り、イトーヨーカ堂は六月の一カ月間、二百品目を値下げした。まさに“解禁”に歩調を合わせた真っ向勝負の様相だ。
この“乱戦”で煽りをくらうのが大衆薬メーカーだ。新しい売り場の創出により、当面、販促費など販売管理費の負担がかさみ、大衆薬事業の営業損益の減益は必至。
一方、改正薬事法で大衆薬販売に対面販売を義務づける規制を強化したため、通販業者が打撃を被り始めた。その結果、厚生労働省を相手取った訴訟にまで発展している。
規制のさじ加減次第で関係業界が明暗を分けた格好で、消費者目線が欠落したまま無謀な社会的規制を振りかざす、相変わらずの厚生行政の横暴さが垣間見られる。
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トヨタ自動車は、豊田章男・新社長(写真)の周辺で、トヨタ本体から宣伝部門を分離し、グループ内の広告会社などと統合して新たに設立するマーケティング調査会社に吸収する構想が進んでいる。そのため広報・宣伝部門は戦々恐々なのだという。知られていないが、豊田氏はトヨタの広報・宣伝部門にきわめて批判的だと見られている。だから「今後、トヨタの広報・宣伝部門には粛清人事が待っている」(大手紙トヨタ担当記者)という声もある。
新会社は早ければ来年一月にも設立され、豊田氏が会長に就く予定だという。市場の動向を読んで顧客のニーズを汲み取り、それを新車開発につなげたい考えで、トヨタ自工とトヨタ自販の合併以降、ともすれば製造側の主導で車が開発されがちだったのを、販売サイド主導に転換しようという思いが伝わる。
宣伝部の切り離しには、豊富な宣伝予算でマスコミを懐柔してきたトヨタの広報部門への強烈な牽制も込められている。奥田碩・元会長は昨年十一月、自らが座長を務める厚労省の懇談会の場で、厚労省批判をするマスコミに対しては「広告宣伝費なんか出さない」、「スポンサーを降りてやる」と発言して、その傲岸不遜な態度が批判にさらされた。豊田氏は、こんな奥田発言が出てくるトヨタ広報の風土に非常に冷ややかなのだという。
一方、マーケティング新会社をめぐってはマスコミ側も戦々恐々としている。一千億円といわれる年間の宣伝広告費を、代理店を通して分け前にあずかっていた構図が否定されそうだからだ。特にトヨタと直接的なパイプを持たない地方紙や地方のテレビ局は危機感を募らせており、本社からの要請を受けた東京支社長が「トヨタ詣で」を開始している。
「何を提案すればよいか。いい知恵があれば教えてもらいたい」。こんな会話が最近、地方紙の東京支社長の間で交わされている。東京支社長らの頭痛の種は「対トヨタ戦略」。広告が激減する中、喉から手が出るほど欲しいトヨタ広告。しかし、これまで広告代理店に頼り切った営業を続けていた地方紙には、トヨタへの具体的な広告提案など期待できない。
当のトヨタも「費用対効果を意識しろ」――。宣伝広告担当には上層部からこんな指令が下されている。電通を中心とした広告代理店の裁量で広告掲載媒体が決められ、巨額な広告費用を垂れ流してきた方式を改め、効果を最優先に検討する。メディアを自社でコントロールするのが新マーケティング会社に託された使命の一つで、全国紙、地方紙問わず、「待ちの営業」はもはや通用しないことを意味している。今春、某全国紙にトヨタの「記事広告」が掲載されたことなど象徴的前触れだろう。
当然、今後、メディア各社に求められるのが「提案力」。トヨタが目指すべき方向性を的確に把握し、広告という商品を売り込むことができるかが焦点となる。しかし、「トヨタの営業担当者の顔も知らない」(ある有力地方紙幹部)のが現実で、人間関係の構築から始めなければならない。かつて電通が本社を構えていた東銀座周辺に支社を設け、電通詣でを繰り返してきた地方メディアだが、今後は水道橋に日参する幹部の姿が見られることになる。
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エアバスなどを傘下に持つ欧州航空防衛大手EADSのヘリコプター事業会社、ユーロコプターが日本市場の開拓に本腰を入れ始めた。四月に伊藤忠商事から販売代理店権を買い戻したのに続き、七月には全日本空輸グループのヘリ整備部門を買収する。納入からメンテナンスまでを直営拠点で行う体制を整える狙いは、ズバリ、防衛省への食い込みだ。
ユーロコプターは緊急医療や防災、報道などに使われる民間ヘリ「AS/EC」シリーズ、戦闘ヘリ「ティガー」「パンター」などを主力製品とし、二〇〇八年は四十四億八千六百万ユーロ(約六千二百億円)を売り上げた。世界での販売台数シェアは民需と軍用を合わせて三割を占め、米国ベル社に次ぐ第二位の座にある。
日本では三月末まで伊藤忠を代理店に使い、民需では三百六十機以上を販売した。五割強のシェアを持っているが、市場は既に成熟しており、今後は大きな成長は期待できない。一方で防衛省向けは、潜在需要は大きいのだが、実績では要人輸送用ヘリ三機の納入と、練習用ヘリ二機の年内納入内定にとどまっている。
不振の理由は簡単。防衛省が日米安保と産業育成の観点から、米国メーカーと国内ライセンスメーカーからの調達を優先してきたためだ。だが、米国自体がコスト抑制の観点から欧州機の調達に前向きになったことで、風向きが変わりつつある。さらに、防衛専門商社「山田洋行」に関連した汚職事件を受けて、防衛省は装備品を商社を通さずに製造元から直接調達する方法を検討している。ユーロコプターはこうした流れにいち早く沿うため、日本の事業を直営化したわけだ。
営業、整備とくると、次の直営拠点のターゲットは組み立て・製造部門。富士重工の宇都宮製作所などが候補に挙がっている模様だ。
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注目高まるケータイ視聴率、調査会社の主導権争い激化 |
「ケータイのネット視聴率」をめぐる調査が本格化しそうだ。
「モバイル広告」のニーズの高まりから、ネット調査大手が競って本格参入、総務省主導の官民共同参加の実証実験も今秋にはスタートで、にわかに注目が集まっている。
携帯電話のサイト視聴は急速に伸びているが、「ユーザーがどのサイトをよく見ているか」といった利用実態は調査の困難さもあり、これまで明らかにされていなかった。
ところが、モバイル広告の料金算定のために、広告効果の精緻なデータを求める声が広がり、「ケータイ視聴率」の指標の確立がネット広告市場の大きなテーマとなっていた。
まずビデオリサーチインタラクティブが、NTTドコモのユーザーを対象にした試験的な調査結果を五月中旬に公表した。それによると、利用サイトのランキング上位には、「ヤフー」「グーグル」「楽天」など、おなじみの顔ぶれが並ぶ一方、検索サービスの「イーチャ」が「トップ10」入りするなど、ケータイならではの使われ方が浮き彫りになった。
後を追ったのが老舗のネットレイティングス。同じNTTドコモのユーザーを対象にして、生活慣習に関するアンケートなども実施し、六月末から利用者数や接触時間など独自のデータを加えて提供している。
モバイル広告は、二〇〇八年に約九百三十億円、前年比四七%増という急伸ぶりを見せる「期待の星」だ。それだけに、クライアントの出稿基準となる「ケータイ視聴率」の指標を確立すれば、調査会社のうまみも大きい。主導権をめぐって激しい火花を散らしそうだ。
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「ふるさとケータイ」始動、害獣駆除から漁船監視まで |
携帯電話を利用した地域限定の通信サービス「ふるさとケータイ」が七月から動き出した。総務省の後押しで地方自治体が実施する「地方再生戦略」の一つで、携帯電話の新しい使い方として注目される。
その第一号として認定されたのは全国で四地域。
京都府丹後地域では、農作物を食い荒らすイノシシなどの有害鳥獣の駆除に用いる。罠を仕掛けたオリに監視カメラを設置し、捕獲すると猟師の携帯電話に情報が届く仕組みだ。多数の罠を見回る猟師の人件費などが不要になり、約四千万円のコスト削減につながるという。徳島県三好市では、外出中でも、かかりつけの医師や遠距離の家族と映像・音声で連絡がとれる緊急通報システムを構築する。また福岡県前原市は、通信機能付きカメラをビニールハウスに設置し、農作物の育成状況を監視するサービスを提供する。
一方、沖縄県の離島の北大東村の計画は、GPS機能を使った海上保安サービス。操業中の漁船の位置をチェックし操業の安全を支援するとともに、漁船から海上の気象情報を役場経由で村民のケータイに配信する双方向システムだ。
総務省は、四地域それぞれに約四千万円を拠出し、初年度の回線使用料や通信機器費用に充てる。次年度以降も、数カ所を追加指定する予定だ。
かつて「犬や猫や道具にもケータイを持たせれば、いくらでも契約数を増やせる」と豪語した携帯電話会社のトップがいたが、「ふるさとケータイ」が、音声通話、ネット・メールに続く第三の利用方法として定着すれば、飽和状態とされる携帯電話市場に明るい展望が開けるかも。
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進む高齢化社会の急務は、介護現場の改革だ。介護職員の待遇改善が大きな課題なのはいわずもがなだが、介護現場でのもう一つの悩みが、痰の吸引や経管栄養の取り扱いだ。
痰などの吸引(口腔内吸引)や、管から直接胃に栄養を送る経管栄養の取り扱いは医療行為とされていて、医師や看護師以外の者、つまり介護職員には許されていない(ただし、家族には許されている)。ところが、違法行為と知りつつも現場では介護職員による痰吸引などは日常的に行われているのだ。
日本介護福祉会の調査(「特養での介護福祉士らの吸引、経管栄養の実施状況」)では、口腔内吸引は、夜間看護師がいない時間帯に七割以上の介護職員が行っており、鼻腔内吸引では四割以上、経管栄養の処置では六割以上が行っていた。そして、これらを行っている介護職員の八割以上が、違法行為を行っていることと、きちんとした技術を研修していないことへの不安を感じている。
在宅介護でも、痰の吸引は家族ならできるが、ホームヘルパーは法の壁で、やってあげたくてもできない。
そもそも、痰の吸引は「医療行為」として、医療者しかできないほど危険なものではない。以前から現場の実態にそぐわないと改善を求められてきたが、ようやく介護現場での痰吸引を可能にする動きが始まった。
厚生労働省の「特別養護老人ホームにおける看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方に関する検討会」(特養検討会)で、介護職の口腔内吸引・経管栄養でモデル事業を実施することが決まった。特養ホームなどで介護者が痰の吸引などを行うためのガイドラインや研修内容を作るためで、指定された施設で、まもなく実施される。しかし、実施できる範囲はまだ限定的だ。
かつて救命士が気管内挿官などの蘇生行為さえも認められなかったほど、日本の医療現場は実態とかけ離れた法律でがんじがらめにされていきた。現場の実情に合わせた、迅速な法改正が必要だろう。
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「竹中平蔵君(写真)が開銀時代、同僚のS君の研究成果を勝手に自分の論文として発表したのは事実です。私はS君を慰めた。S君はその後、立派な教授になっている」(発言要約)――。「世界」六月号で宇沢弘文・東大名誉教授が語っている。宇沢氏は、日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)当時の竹中氏の指導官。その宇沢氏本人の弁だけに衝撃的だ。
竹中氏の論文盗用疑惑については、これまでも何度か雑誌等で取り上げられたが、竹中氏自身はこれを否定してきた。それが、また新たに、当時を知る竹中氏の指導官であった宇沢氏本人の弁で語られたのだから、これは見すごせまい。
問題となった論文「研究開発と設備投資の経済学」(竹中平蔵著 東洋経済新報社 一九八四年刊)は、竹中氏がまだ無名だった日本開発銀行員時代に発表したもので、竹中氏はこの論文でサントリー学芸賞を受賞し、学者としての道を切り開いたとされる。そして、経済財政・総務相として小泉政権の中枢に上りつめたことは記憶に新しい。
宇沢氏は、その友人をS君と匿名で表現しているが、当時、竹中氏と開銀の「設備投資研究所」で同僚だった鈴木和志氏(現・明治大学教授)であることは、学者の間では周知の事実。この時、宇沢氏は同研究所の顧問として、竹中、鈴木の両氏の指導にあたっていた。竹中氏に自分の研究成果を利用された事実を知った鈴木氏は、あまりの悔しさに同僚たちの前で泣き崩れてしまったといわれている。
恩師にここまで言われても、当の竹中氏は、発言が掲載された「世界」には何の弁明もないという。
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創価学会援護のために誌面を提供していると思われるような記事が毎号のように掲載されるのが特徴である「リベラルタイム」という月刊誌をご存じだろうか。
その「リベラルタイム」の記事で名誉を傷つけられたとして、矢野絢也・元公明党委員長が発行元のリベラルタイム出版社に損害賠償を求めていた裁判で、東京地裁は六月十日、同社に二百二十万円の支払いを命ずる判決を言い渡した。
裁判は、「リベラルタイム」が二〇〇六〜〇七年にかけて「矢野絢也氏(公明党元委員長)『武富士・巨額資金』の海外移転に関与か!?」、「矢野絢也氏(元公明党委員長)宅に運び込まれた数億円の札束」等、思わせぶりなタイトルで四回にわたって掲載した記事を巡って争われてきた。
「リベラルタイム」は、「事実関係を記述しただけで名誉毀損には当たらない」として全面的に争った。だが判決では、その主張がそれこそ全面的に否定され、四回の記事は「原告(矢野元委員長)の社会的評価を低下させるものであり、原告の名誉を毀損することは明らかである」と、その記事のいい加減さが指摘されたのである。
それにしてもこの雑誌、何でいつも「創価学会批判者」批判をする?
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ソマリア沖の海賊対策に派遣された中国海軍がフル回転で活動を続けている。昨年十二月に派遣された第一次隊は百二十四日間の派遣中、実に百日にわたって中国船舶を護衛した。同じ海域で活動する海上自衛隊の幹部は「驚異的な頑張り」と言う。
派遣されたのは、南海艦隊のミサイル駆逐艦「武漢」「海口」、補給艦「微山」の三隻。中国船舶を率いてアデン湾を四十一回航行し、計二百十二隻を護衛した。
驚くべきことに、駆逐艦二隻は派遣期間を通じて一度も寄港していない。燃料や水、食料は洋上で補給艦から受け取るから、乗員は中国出国から四月の帰国まで五カ月間、地べたを踏まなかったことになる。
海自幹部は「びっくりです。海自は十日に一回程度、ジブチに寄港している。中国海軍は不眠不休で平気なのか」と驚きを隠さない。四月に交代した第二次隊の活動も同様だ。
だが、無理はいつまでも続かないようだ。中国海軍はソマリア沖で海賊対処を行う各国海軍に、海域ごとに担当を分けて警戒する「ゾーンディフェンス方式」を提案した。しかも、ローテーションを組んで洋上に出るから休みもとれる。
別の海自幹部は「疲れが出てきたのでしょう。マラソンでも、最初にリードしたランナーが一位になるのは難しい」と冷ややかだ。
第一次隊は、一月にソマリア沖でインド海軍の潜水艦から追尾を受けたとされる。同幹部は「他国にマークされてこそ一人前。追尾はデータ収集が目的だからです」。海賊対処の艦艇が無寄港だったと分かったのも、各国が注目している証拠。海軍力増強の効果が現れつつある。
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パリのテロ情報専門メディアによると、フランスの治安当局はこのほど、国際テロ組織アルカイダが他のイスラム過激派と連携し、パキスタンの核兵器を奪取する計画を練っているとの情報を入手した。
同治安当局は五月末、複数の中東および欧州のイスラム過激派が運営するウェブサイトで、アブ・ヤヒャ・アルリヒと名乗るアルカイダ幹部が、アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンに対し、パキスタンのザルダリ現政権の打倒を呼びかけるジハード(聖戦)宣言をしたことを確認したという。
さらに六月初め、同治安当局には、この呼びかけを受ける形で、いくつかのイスラム過激派がインターネットを通じ、パキスタンを攻撃して核兵器を奪取する計画への協力を支持者に訴えているとの情報が寄せられたといわれる。
ある過激派のサイトでは、攻撃対象とすべき世界の核施設リストを挙げ、最初の標的として十七カ所のパキスタンの核施設に対する攻撃計画に着手したことが示唆されているとの情報も流れている。
フランスの治安当局関係者は「タリバンやイスラム過激派が共闘を組み、『パキスタンの核開発の父』とされるカーン博士を拉致し、核技術を入手する計画を画策している可能性もある」と述べている。
一方、フランスと英国の情報機関は、アルカイダのナンバー2であるザワヒリが五月以降、パキスタン南西部のクエッタに潜伏し、タリバンやイスラム過激派と接触したとの情報を中東駐在の両国外交官から得ており、タリバンのパキスタン攻撃計画との関連で注目しているという。
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ソウルやワシントンの北朝鮮情報専門家らの間では、北朝鮮の金正日・総書記(写真)の後継者として指名されたと噂される三男の金正雲氏の陰の後援者が偽ドル工作の首謀者であるとの説が流れている。
この金正雲氏の後援者と目されるのは、四月の北朝鮮最高人民会議で国防員会副委員長のポストに正式就任した呉克烈大将。呉大将は旧ソ連時代にモスクワの軍事大学に留学し、空軍司令官、軍総参謀長などを経て、一九八九年からは労働党作戦部長を務めたロシア通の軍人。金総書記とは長年にわたり極めて親しく、家族的な付き合いもあるという。
呉大将はこの数カ月間、金正雲氏を金総書記の後継者とするための準備工作を、軍部を中心に密かに進め、大方の支持を固めるのに成功、金総書記の厚い信頼を受けているという。
呉大将は軍人としての表の顔とは別に、作戦部長時代から対外秘密工作の実質的な責任者とみられている。特に偽百米ドル紙幣「スーパーノート」の印刷・流通では中心的役割を担い、海外での偽ドル工作を自ら立案、指示したとの見方が有力だ。平壌にある偽札印刷工場は呉大将の家族が責任者を務め、金総書記も足を運んだこともあるといわれる。
呉大将が偽ドル工作の責任者であるとの情報は、米国がマカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)の北朝鮮関連資金を調査していたころからつかんでいたようだ。
ソウルの北朝鮮ウオッチャーらは、北朝鮮の偽ドル工作任務は現在、党から軍部に移管され、呉大将が引き続き指揮を執っている可能性が強いと述べている。
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有力シンクタンクの国際危機グループ(ICG)はこのほど、北朝鮮に関するリポートをまとめた。ICGはその中で、北朝鮮が先に一連の核実験を強行したのを受け、制裁だけでは問題の解決とはならず、あくまで外交を通じた解決を目指すべきだと提言している。
リポートは、北朝鮮の核計画について、「一般に受け止められているよりも進んでいる可能性がある」と指摘。「年を追うごとに、実験を積むごとに核能力は高まる」と警告する。
また、北朝鮮は日本を射程に収める中距離ミサイル「ノドン」を既に最大三百二十基保有している可能性があり、約二百基とされていた従来の予想を大幅に上回るという。
北朝鮮はこのほか、韓国を射程に収める短距離ミサイルを六百基以上展開している可能性があり、核弾頭もしくは起爆装置を六〜十二個保有している可能性もあるという。また、核計画だけでなく、大量の化学兵器を保有しているほか、生物兵器計画も持っていると警告している。
リポートはしかし、「国際社会による(対北)非難は最初の一歩にすぎない」と指摘。「核問題がいったん解決されれば、国際社会は北朝鮮を交渉のテーブルに連れ戻す必要もある」としている。
リポートは、外交による解決を模索すれば北朝鮮の挑発行為を容認することにもなりかねないことを認めながらも、「軍事力(による制裁)は選択肢とはなりえない」と否定。
その上で、北朝鮮との交渉に当たっては米国が鍵を握るべきと強調。米国に対し、六カ国協議の参加国と調整した上で、「高級レベルの特使」を平壌に送り、暗礁に乗り上げている六カ国協議再開への道を探るよう呼び掛けている。
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ドル基軸は不公平だと言ってIMFのSDR(特別引き出し権)債を購入すると言い出した中国とロシア。今や米国財務省を揺さぶっている。
特に神経過敏なほどにロシアと中国の発言を警戒しているのはガイトナー米財務長官(写真)だ。中国が「米国債の購入を考えたい」と発言しただけで北京へ飛んで行き、「米ドルは強く、米国債は安全な投資先です」と言って失笑を買ったという。
中東産油国や、カナダ、豪州、ニュージーランドなど大英連邦もガス、原油、鉄鉱石などはドル建て取引だから、ドルの目減りは損になる。一方、ロシアはユーロ建てが多いため、中国の米国挑発に便乗するのだ。
ドルが目減りすれば猛烈なインフレに襲われるのは必定だが、それを防止する唯一の手段は、今のところ金貨、プラチナへの投資だろう。
ロシア議会ではボリス・グリズロフ議長が「世界市場にパラジウムのロシア通貨を提示したい。実現すれば帝政時代のゴールド金貨のごとく強い通貨となる」(「プラウダ」六月八日付)と言いだし、ロシアの銀行家や経済評論家も「希少なメタルで出来たコインは世界市場で歓迎され、インフレ予防に役立つ。ロシアが発行しない手はない」と前向きだ。
パラジウムは?びない銀色の希少金属で、一八〇三年に発見された。 プラチナ属でインジウムなどとともにレアメタルだが、プラチナより融点が低い。例えばK18金ではゴールド七五%、銀一五%、パラジウム一〇%で成り立つ。プラチナ合金ではプラチナ九〇%、パラジウム一〇%。ほかに眼鏡フレーム、歯科医療器具、メッキ液などに広く用いられ、コインとしても五百円硬貨くらいなら需要があるという。
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金正日・総書記の症状の悪化に伴い、北朝鮮では、水面下での後継者争いが激しくなってきている。後継者の最有力候補とされる三男の金正雲は父親と軍主流派の支持を取りつけ、目下、軍幹部から帝王学を受けている。補佐役に叔父の張成澤・国防委員がついているが、一方で多くの懸念材料も指摘されている。
北朝鮮住民の間では写真も公表できない正雲がいきなり国家の指導者として登場してくることには批判が強い。三十歳になるまでの四年間は後継者教育が続くため、食料危機など国内の改革を求める声に答えられない弱みがある。兄の正哲は性格も穏健でかなり賢いとの評価があり、国民はもちろん党と政府の官僚にも正哲を推す声は依然として強い。
しかし正雲の最大のライバルは依然として長男の正男だ。在日出身の高英姫が生んだ正哲、正雲が次の指導者になるのはこれまでの反日姿勢からして納得できない国民が多いのだ。実はこの反日感情は、南北共に大きな要素なのだ。
最近、暗殺を免れた正男は当分マカオに滞在し、中国に亡命する見通し。彼を保護する中国は、正雲を担ぐ軍の若手将校団がいずれ今回の国連による経済制裁で追い詰められれば反中、反日の線で暴発する可能性が高いと見ている。その際は、中国国内に正男を首班とする北朝鮮臨時政府を樹立させ、正雲派との内戦も覚悟しているようだ。
金王朝世襲体制の最後になる指導者には大混乱が待っている。
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