第5回
更新日時:2009年11月04日
■ジュリについて(外見と性格編)
塚本です。
先週に引き続きジュリについて語って行きたいと思います!
といっても私ではなく、今回はデザインディレクターの亀井とシナリオデザイナーを呼んでおりますので
じっくりしっかり面白い話を聞いていきたいと思います。
―では今回もゲストさんの自己紹介からどうぞ
川崎:
シナリオデザイナーの川崎です。
前作はいろいろな人がストーリーに関わってたので、
その時私が携わったのはライバル戦と勝利台詞などでした。他には背景関係とかも。
今回はシナリオ周りをまとめてやってますね。
キャラとしては、…なんだろう、一人キャラです。
仕事の忙しい時期が他のパートとずれてるので、会社に泊まるときも一人だったりして、
真夜中ひとりぼっちでテンション高くやってたりします。
素面なのに呑んでるくらいのハイテンションになれるので、低燃費キャラでもありますね。
―外見が決定するまでの経緯を教えてください
亀井:
小野プロデューサーからは韓国キャラで女性って指示が来たんで、
それを元にどんどんデザインを進めていきました。
髪型や服装のバリエーションも含めて400か500くらいの案が出ましたね。
最初は「韓国」「女性」だけで、「風水エンジン」はなかったんです。
その頃の案にはおばあちゃんキャラなんかもいましたし、アイススケートのキャラとか…。
書いていくうちにシナリオ側から風水エンジンの案が出たんで、
身体に風水エンジンを搭載したキャラが出てきました。
風水エンジンの位置も最初はセスと同じお腹とか、手のひら、
あとは蹴りが主体ってことで、足首についているのもありましたね。
―最終的に目に決まったのはなぜですか?
亀井:
やはり女性の身体にでかい球を埋め込むっていうのがきれいな表現にならなかったんですね。
じゃあどこがいいかなっていうときに、目だったら元々丸いですし、
代替として入れてるっていうのでも眼球がいいんじゃないかっていうところで、
決まったと思います。
―上半身の蜘蛛は特徴的ですね
亀井:
最初に「今回のキャラは悪くてちょっとエロいキャラにしたい」という話があって。
それで小野プロデューサーから提案があったのが「横乳を出してみよう」と。
そこからいろんなアイディアを考えていって、
今回のモチーフの蜘蛛を加えたトップスが採用になりました。
だから紐も8本ですし、胸の部分も蜘蛛の柄になってます。
―では下半身の服装などについてはいかがですか?
亀井:
シルエットはテコンドーの胴着を元にしています。
あそこは最後までデザインのコンセプトの中でも残したポイントです。
やはりストリートファイターのキャラクターとしては衣装のどこかには格闘技の要素が
きっちり残っていないと、ということで。
横の黒ラインは本当はテコンドーの胴着には入っていないんですけど、
他の胴着キャラと被らないために入れています。それと蹴りが映えるようにということですね。
―色についてはいかがでしょう?
亀井:
色は最初結構地味だったんですけど、
キャラを全部並べたときにいない色ってことでピンクを選びました。
ただ全身ピンクばかりだとすごく浮いちゃうキャラになるんで、
黒なんかも合わせて今の色になっています。
―外見のこだわりポイントはズバリ?
亀井:
こだわりっていったら女性キャラクターは顔しかないですね。顔というか頭部ですが。
頭部は非常に手を入れてると思います。
前作ストIVよりは短い開発期間で5、6回は顔が変わってると思いますよ。
主に顎のラインとか、肉の付き方が一番変わりました。あとは目の形ですね。
最初はもっとぽっちゃりしてたんですけど、ぽっちゃりしてる人って悪そうに見えないんで、
だんだん顎が細くなって肉が無くなっていって。
一時期やりすぎたんでちょっと戻したりして(笑)。
最終的に小野プロデューサーのOKを見事勝ち取ったのが現在の顔というところです。
担当モデラーも最初は方向性がぜんぜんわからなくて結構迷ってたみたいなんですけども、
今は「俺のジュリ」って言ってます(笑)。
―顔以外の部分で言うと、ジュリは女性キャラの中でもほっそりしてますね
亀井:
上半身のプロポーションは最初から細かったです。
テコンドーということで足技を強調したいというのがありまして下半身は太くする予定だったので、
上も太くするとメリハリが無くなってしまうということで。
「上はできるだけ細くする感じでいきたいなあ」と、
ディレクターの岡田と相談しながら決めていった経緯があります。
他のキャラとの対比でいうと本当はもう少し体格を小さくしたいとかはあったんですけど、
やっぱり足技が映えないんですよね。
足がある程度長くないと、動いたときに画面できれいに見えないので。
―外見と性格の関連について教えてください
亀井:
今回のジュリに関しては、チーム内の色々なパートからいいアイディアがでてきて、
それを足しつつ引きつつ、っていうので決まっていったんじゃないかな。
川崎:
そうですね。悪役だっていう設定がこちらから出て、それに対してデザインができて顔が決まって、
今度はそれを見てシナリオ側で「あ、この顔なら口調はこうしましょう」という感じで。
亀井:
作っては確認してみんなの意見を聞いて、みたいな…。
もちろん平均的な意見ばかりだとキャラクターが埋没しちゃうんで、
尖らせるところはみんなの意見を否定してでも尖らせるっていうのはありましたけど。
―尖らせたのはどの辺ですか?
亀井:
やっぱり一番は表情ですね。
―ジュリらしい表情とはどんなものでしょう?
亀井:
表情についてはデザイン的にずいぶん試行錯誤がありました。
最初はやっぱり女性キャラということで、かわいい表情とかもいっぱいあったんですけど。
―かわいいというと、例えばどういう表情ですか?
亀井:
他の女性キャラにある、口角が全部上がっているような笑みとかですね。
でもそれだとやっぱりジュリとしてキャラが立ってないな、っていうのがあって、
そこからいろいろ作ったんですよ。面白い顔、怖い顔…。
それで一番似合ったのが冷徹な顔で、基本的に相手を正面にとらえなくて、流し目で見るんです。
戦う相手を探ろうとして、正面から向き合わずに斜めにのぞき込む、みたいな。
口元もにっこり笑うって感じじゃなくて、大体どちらかの口角だけが上がっています。
眉毛もそうですね。
―では中でも一番ジュリらしいと思う表情を挙げてください
亀井:
フェイシャル担当のデザイナーがいろんな顔を作ってくれたんですけど、
その中で「これだ!」って思ったのが、楽しんでるときの顔なんです。
ジュリが戦うことを楽しんでる表情を作ったときに「あ、このキャラはこういう感じなんだ」って
わかった感じですね。
そこまでフェイシャル担当のデザイナーがみんなにダメ出しをされながらも、
数え切れないほどの表情を作ってきてくれたから見つかったんだと思います。
―目つきも印象的ですね
亀井:
ストIVでは表情に特に力を入れて作ってるので、
殴られたときなんかは黒目と白目の比率が変わるんです。
で、他のキャラクターは極限状態じゃないと変わらないんですけど、
ジュリに関してはより表情を出すために通常の笑いとか怒りとかでも結構自由に変えています。
眼で語らせるって感じです。
―前作ストIVには無かったタイプですよね
亀井:
不安もありましたけどね。
社内的には「ああこれはいい感じだな。キャラ立ってきたな」とは思ってたんですけど、
やっぱりストリートファイターの王道からはちょっと外れてると思うんです。
ただストリートファイターIVとしてはありなんじゃないか、ってことになって、
そこでやっと枷が外れたってとこですね。
川崎:
私はジュリの表情が本当に好きです。
実はジュリの勝ち台詞を丸ごと変えた時期が二回あって、
まず最初に声を聞いたときに「この声でしゃべるんなら、
口調はもっとこうだ」って変えたんですよ。
それでもう一回が、表情が実装され始めたとき。
すごくいい顔だったんで「もっとやろう」と思って。
段階を追って台詞の内容がひどくなっていったという(笑)。
表情によってすごくジュリって人がわかった、「こうだ」って思えてきたんですね。
亀井:
デザインチームでも表情が入ってからジュリ親派が増えてきたんですよ。
川崎:
「自分が作ってるゲームだから好き」というんじゃなくて、
「俺このキャラ使う!好きだから!」って。
開発内でもそういう風に好かれているっていうのはいいことだなと思います。
亀井:
うん、完成に近付いていく過程で気に入ってくれる人も増えてきた感じで。
何故かみんなジュリのあのサディスティックな感じが好きみたいです。
…うちのチーム、Mが多いんですよきっと(笑)。
―ジュリの性格のコンセプトはどんなものですか?
川崎:
初期の頃、小野プロデューサーから
韓国の人が怒って抗議にくるような、強烈なキャラにしよう」という話がありまして(笑)。
つまり万人に好かれる平均的な感じよりも、
嫌う人もいるけど一部の人にはすごく人気のあるようなキャラにしたいってことですね。
―風水エンジンの話がシナリオから出てきた過程について教えてください
川崎:
シナリオ的には、最初は「敵の女の子」ってことだけが決まってたんです。
で、敵方っていうと、ストIVではシャドルーとS.I.N.と二つあるんですけど、
シャドルーの絡みでやるとしたら、メインで出てくるキャラはバイソンとかバルログになるんです。
反対にS.I.N.がらみだとヴァイパーとかアベルとかセスになる。
それでストIVからのキャラを育てていく意味でもS.I.N.の話でいきましょうということになって、
セスとのつながりを作るために風水エンジンが出てきたわけです。
―ボツになった設定などはありますか?
川崎:
一番最初のジュリは、悪側にいるけど中身は真面目で一途な子で、
最後は悲恋ぽく終わるみたいな設定だったんですよ。
それで打ち合わせに持っていったら小野プロデューサーが「全然違う」と(笑)。
「いい子じゃだめだ。みんながびっくりするような悪いヤツにしよう」って。
―デザインからきた設定などはありますか?
川崎:
やっぱり風水エンジンの場所ですね。
シナリオの方では最初は仮設定で義足ってことにしてたんですけど、
途中でデザイン側から義眼の案をもらったので、
それでジュリの過去設定や能力設定なんかも一緒に変えていきました。
―ジュリの台詞について注意していることは?
川崎:
これはバトル中の台詞を担当してる玉村とも相談して決めたんですけど、
ジュリの台詞にはできるだけダブルミーニングっていうか、裏の意味をつけようとしてます。
登場時の台詞で「いい身体してるじゃねえか」って言うんですけど、
あれもどう考えてもただ相手の体格を褒めてるだけじゃない。
相手も多分言われてもあまり嬉しくない(笑)。まあそういうギリギリを狙おうと。
―技や動きの見所は?
亀井:
ストリートファイターのキャラとして、一言でどんな技か言えるような技を入れたい
っていうのがあって、出てきたのが穿風脚のモーションですね。
だから見た目の部分でジュリの代表的な技になるようにっていうことで考えました。
それからウルコンに関して言うと、ジュリの残酷なところ、
冷徹なところの表現を押し進めてああいう演出になりました。
放り投げたりとかじゃなくて、あくまでも自分の身体を使って相手を直接痛めつける
っていうところですね。
―現時点での手応えは?
川崎:
例えば春麗なんかは「春麗はこんなこと言わない」「この語尾は春麗じゃない」みたいな
縛りがすごくたくさんあるんです。
キャラの好き嫌いは別として、やっぱりそういう真面目できちんとしたキャラの台詞には、
悩むことも多いです。
その点ジュリは何言わせてもいいんで、新キャラの割にはスムーズに制作できましたし、
すごく楽しかったです。
過去に似たキャラがいないので表現の幅も広くとれて、
面白いものになってるんじゃないかなと思います。
亀井:
さっきの話と被るんですけども、今までのストリートファイターの路線からは
ちょっと外れるキャラだと思うんで、不安に思ってたところもありました。
でも先日公開されて、ジュリを好きになってくださってる方がたくさんいたんで、
ジュリというキャラを立てるためにもっと試行錯誤したいなと。
今回の皆さんの反応を見られたことによって、より工夫できるところが見えた気がしてます。
一方で、できるだけ皆さんの予想を超えて裏切りたいってところもありますね。
川崎:
そうですね。「ここまでやっちゃうか!」みたいなところをもっと出せたらいいですね。
ストリートファイターなので旧キャラに懐かしいって思っていただくことも大事なんですけど、
新キャラでびっくりしてもらえたら更に嬉しいなと。
―ジュリが気になっている人へのメッセージ
川崎:
今回はユーザーの皆さんに、ジュリを通してストIVのストーリーの裏側を見て頂きたいと
思っています。
そういう意味ではスパIVはある意味ジュリを中心にまとめたので、
お家でゲームを始められるときに最初にジュリを選択していただくと、
いきなり中心のストーリーが見られます。ぜひ一度はジュリを使ってクリアしてください。
亀井:
ユーザーの皆さんに見て欲しいところは本当にたくさんあるんですが、やっぱり一番は動きですね。
サディスティックな感じっていうのが要所要所に見えてるんで、
その動きと表情がマッチしたときのジュリの楽しそうな姿をご覧頂けるといいかと思います。
あと個人的に一番好きなのはジュリのウルコンのフィニッシュですね。
ジュリが相手を踏みつけたときの顔です。
踏みつけられた相手の顔とジュリの顔が同時に見えるんですが、その対比がいいんですよ。
蹴りなんかも足の裏で蹴ったりとか、相手を踏みつける動きが多いんで、いい感じです。
塚本:
ありがとうございました!
いやぁ、さすが新キャラ。みんな思いが詰まっているのでコメントが多い!
ブログのネタに使えてうれしいです!
皆様、ジュリについて2週連続で4人のスタッフに語ってもらいましたが、いかがでしたでしょうか。
ジュリ開発真っ最中ですが、これからもがんばりますので、応援よろしくお願いします!