米国に亡命した中国人の元スパイ李鳳智(Li Fengzhi)氏〔AFPBB News〕
3.リクルートが容易な一般中国人
国家組織が一般市民に対し圧倒的に強い立場にある中国のような一党独裁国家では、諜報機関が様々な利益、不利益をちらつかせながら一般中国人に情報収集を強要することは決して困難ではない。
また、文化大革命以降、少なからぬ中国人が歪んだ倫理観と拝金主義の中で生活してきたことを考えれば、彼らは自己の利益を守るため外国に対するスパイ活動に従事することに大きな抵抗感、罪悪感を感じていないのだろう。
4.長期的利益の重視
中国人特有の長期的利益を重視する視点は、中国諜報機関の行動原理にも大きな影響を与えているようだ。ロシア式諜報工作にも利点は多々あろうが、中国諜報がロシアと大きく異なるのは、その歴史観、人間観である。
限られた諜報を短期間にターゲットから直接獲得すべく努力する「狩猟型諜報」よりは、浅く、広く、間接的ながらも、数多くの中国シンパから末永く様々な情報を収集する「農耕型諜報」の方が最終的利益は大きいのかもしれない。
気になる日本に対するスパイ活動
それにしても、気になるのは中国の対日諜報活動である。今回ご紹介した文書の内容が正しいとすれば、「中国の友人」を自認する日本人の一部は、確たる意識もないままに、既に中国諜報機関の「潜在的」エージェントになっている、または、されてしまっているということだ。
日本政府でもこのような「マニュアル」を作成しているかどうかは知らないが、少なくともこの種の情報は日本の与野党政治家、中央・地方政府の公務員から、ビジネスマン、学者・学生に至るまで、広く共有されてしかるべきである。
この点を再認識するだけでも、今回の英国防省の「秘密文書」を読んだ甲斐はあったと思うのだが、読者の皆さんはどうお思いだろうか。
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