日本映画黄金期を代表する女優の岡田茉莉子(76)が、30日に自伝「女優 岡田茉莉子」(文芸春秋刊)を発売する。51年に18歳でデビューし、東宝と松竹の看板スターとして150本以上の映画に出演。現在もテレビドラマや舞台で演技を続けているが、映画全盛期を記録に残す責任感を抱き、2年半かけて自伝を完成させた。自ら筆を走らせ、400字詰め原稿用紙で約700枚。587ページの単行本は、3センチ3ミリの厚さになった。
「夫の吉田(喜重監督)や評論家の方に『自伝を書いてみたら』と勧められていたんです。昔のような映画界が、今はない。それを知っている人が書き残しておいてもらいたい、という気持ちがあったんですね」。小津安二郎氏や木下恵介氏ら名監督に愛され、月に1本以上の映画に出演。作品別の解説や、撮影所で過ごした日々を詳述した。「台本やパンフレット、新聞や雑誌の切り抜きを見て、年代別に正確に書いた。これが一番大変な作業でした」と振り返った。
今月21日には、同い年の女優南田洋子さんが亡くなった。かつての映画界を知る同僚が、少なくなりつつある。「女優は私の人生すべて。死ぬまで女優でいたい。舞台なら年齢は関係ないですから、まだまだいろいろやれる。今は女優と呼べる人がいなくなっている時代なので、私の自伝を書きたかったんですね」。書名に付いた「女優」という冠には、本格的な役者が少なくなった現状への危機感が漂っている。