2009年10月27日
東京ドラマアウォードの受賞者ら=岩本写す
日本のテレビドラマやバラエティー番組を、世界に向けて発信する動きが活発になってきた。日本の存在感を高めることはもとより、新たな収入につなげる狙いも放送局にはある。業界関係者はよりよい売り込み方を探っている。
海外に通用するドラマを表彰する東京ドラマアウォード(TDA)の授賞式が19日、東京都内であった。
「『風のガーデン』がいい。人の情け、感情的なものを豊かに感じた。『アイシテル 海容』は子どもが子どもをあやめる重い問題で、ベトナムでうけるか心配」。ベトナムの国営テレビ局でフィルムセンターのゼネラルマネジャーを務めるブー・ティ・キム・オアインさんは会場の片隅でこう話した。
「風のガーデン」はフジテレビ系で放送された連続ドラマで今回のTDAで優秀賞、日本テレビ系の連ドラ「アイシテル」はグランプリ受賞作だ。
「アイシテル」はフランスの番組見本市では好評で、欧州などの番組買い付け人たちが日本の優秀作に選んだ。「近年どこの国でも起こりうることで共感を得られる。俳優陣の演技も素晴らしい」と評価された。
国によって求める作品の傾向は違うものだ。昨年はTDAグランプリを中心に海外に売り込んだが、今年はグランプリに加え、優秀賞として6本のドラマを提示する。「国情にあわせて選んでください、と選択権を与えることは大事」。TDAを創設した国際ドラマフェスティバルの重村一・副委員長(ニッポン放送会長)はそう話す。
15日に都内であったアジア・コンテンツ・ビジネスサミットでは、フジテレビの大野幸正・国際局次長が中国での表現上の「壁」を説明した。「のだめカンタービレ」に出てくるケンカの場面は、ギャグ的描写にもかかわらず、望ましくない暴力シーンと判断されるという。同様の壁は、学園ドラマや刑事ドラマも直面する。
番組販売は、番組自体を売るものと、番組の形式を売る手法が一般的だが、「それだけでは大きな売り上げにはつながらない」と大野局次長。フジテレビは、バラエティー番組「逃走中」の米国版を現地法人と共同でつくって放送するなど一歩進んだ道を模索している。(岩本哲生)