森首相の「ミートゥー」

(2000/07/28)

 今週の週刊文春(8月5日号)に「サミットで首脳夫人にも嫌われた森喜朗首相の英会話」という見出しで、以下のような記事が載っていた。

(前略)もっとも、わが総理に国際センスを望むのはムリというもの。五月の日米首脳会談の際クリントン大統領に、「ハウアーユー(ご機嫌いかが)」「ミートゥー(私も)」とだけ言うようにアドバイスされていたが、いざ会うや「フーアーユー(あなたは誰)?」とやってしまった。大統領が苦笑いしながらも、ユーモアなのか、と思い「アイム・ヒラリーズ・ハズバンド(ヒラリーの夫です)」と答えると、森首相はなんと、「ミートゥー」と答えた−−。(後略)

 政治部の記者が作った小噺としては、なかなか面白いと思った。森とクリントンのキャラクターを上手く取りこんでいる、と。ところが、これはどうやらアメリカが発信元のジョークであったようだ。インターネットで原文らしきものを拾えた。

A true story from the Japanese Embassy in US:

Prime Minister Mori was given some basic English conversation training
before he visits Washington and meets with President Bill Clinton. The
instructor told Mori " Prime Minister, when you shake hand with President
Clinton, please say 'how are you'. Then Mr Clinton should say "I am fine,
and you ?" Now you should say 'me too'. Afterwards we translators will do
all the work for you."

It looks quite simple, but the truth is ................
When Mori met Clinton, he mistakenly said "Who Are You ?".
Mr Clinton was a bit shocked but still managed to react with humor :
"Well, I am Hilary's husband, ha ha..."
Then Mori replied confidently "Me too, ha ha ha.."
Then there was a long silent moment in the meeting room.

 こうやって英語で読まされると、「一国の指導者のくせに英語もできんのか」という英米人の差別感覚が、確実に匂い立ってくる。宗主国の言語をマスターするのが当然の、植民地の土人のリーダーがヘマをしでかしたのを嘲笑するセンスだ。ジョークの舞台を東京に代えて、韓国や台湾、インドネシアやミャンマーの指導者が慣れない日本語で失敗する内容にすれば、左翼進歩派諸氏におかれても(笑)、その「国辱性」が理解できることだろう。

 また、森&クリントンで英語だから面白いのであり、森&江沢民で中国語だったり、森&シラクでフランス語だったりしたら、中国人やフランス人には笑えても、大多数の日本人は笑えないだろう。中国語もフランス語も知らない森首相に共感し、外国人が中国語やフランス語をマスターすべく努力するのが当然と思ってる中国人やフランス人に対し、「てめえは何様なんだ?」と怒ってしまうんじゃないか? そっちのほうが、日本人としては、ずっと自然な反応だと思う。

 それが「アメリカ&英語」だと面白く感じてしまうところに、現在日本の「植民地的状況」が、端的に露呈しているように思う。

 不覚にもこの小噺を笑ってしまった自分(正直、ホントに良く出来ていると感心した)なんぞオキュパイドジャパン(バイ米帝)のインテリ土人のハシクレってとこなんだろな、ぐっすん、と、思わず自虐に身を任せてしまった三鷹だったんよ。

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