きょうの社説 2009年11月4日

◎教員養成6年制 現行制度を検証するのが先決
 文部科学省は教員を養成する期間を6年に延長し、大学院修士課程(2年)の終了を義 務づける制度の検討を始めた。教員免許制度の根幹にかかわる大きな見直しとなるが、一律的に6年制にすることが果たして望ましいのか慎重な判断が求められる。

 人づくりを担う教員には教える力や情熱が欠かせず、6年かけて知識や理論を深めても 現場に出て役に立つとは限らない。大学で学んだことがそのまま当てはまらないのが教員という職業の難しさでもある。現場で質の高い教員を増やすには、採用試験や採用後の研修システムの工夫も重要であり、教員養成の在り方はこれらと一体的に考える必要がある。

 金大では今年度から教員養成に特化した大学院教育と、従来の4年制の2本立ての養成 システムが新たに始まった。全国では昨年度から学校運営のリーダーを育てる教職大学院が24校で設立されている。このような取り組みがどのように機能していくのか現行制度の検証が先決である。

 教員養成6年制の構想では修士号取得のほか、現行2〜4週間の教育実習を1年に延ば し、免許取得後8年以上の実務経験者のうち「教科指導」「学校経営」などの分野で高い能力を持つ教員には専門免許状を与える。来年度予算概算要求に調査費を計上し、早ければ2011年度から新制度に移行する。大学などで10年ごとに講習受講を義務づける今年度からの教員免許更新制は10年度で廃止するという。

 教育の質を確保するために、教員の資質を高めるという方向性自体に異論はない。だが 、教員養成期間を延ばすのであれば、現行の4年制のどこに不備があるのか洗い出す必要がある。その検証結果次第では、学部教育の強化で対応可能な場合もあろう。専門性を高める機会は、現場を経験後に増やすという考え方もある。

 大学関係者からは免許取得に6年もかければ志望者が減り、人材確保が困難になるとの 懸念が出ている。私学への影響も見極めにくく、課題は多い。6年制は民主党の政権公約に明記されたが、結論ありきでなく、時間をかけて導入の是非を判断してほしい。

◎能登有料の無料化 国の支援得て「痛み」回避を
 鳩山政権が実施を目指している高速道路無料化が実現した場合、能登有料道路の割高感 がこれまで以上に際立ち、観光をはじめさまざまな面で、能登がほかの地域より不利になる可能性が高まる。能登有料道路をめぐっては、能登の自治体や各種団体などから早期無料化要望が出されるたびに県がこばんできた経緯があるが、このような状況に至った以上は、県も対応を考える必要があるのではないか。

 能登有料道路は、2014年1月まで料金徴収が行われることになっており、県は、0 8年度末の未償還額が166億円に上ることなどを理由に、無料化を前倒しするのは難しいとしている。県だけの力で壁を乗り越えるのが難しいのなら、国にも支援を求めて、能登ばかりが「痛み」を強いられないようにしてほしい。

 高速道路では、今年3月から土日祝日の大幅値下げが実施されている。前政権が打ち出 した経済対策の一環であり、大型連休などにはマイカーで遠出する家族連れらが目立った。ただ、能登は、能登有料道路がネックとなって値下げの恩恵を十分に享受できていないとみる向きが少なくない。

 前政権以上の高速道路の「価格破壊」を掲げる鳩山政権が発足したのを受け、能登のゴ ルフ場は能登有料道路の早期無料化を求める署名活動に乗り出した。苦い記憶も新しい観光関係者が危機感を抱くのは当然だろう。あちこちの高速道路が、土日祝日に加えて平日も無料化されれば、能登はヒトだけでなくモノの流れの面でも厳しい競争を余儀なくされ、企業誘致などに影響が及ぶ恐れもある。

 馬淵澄夫国土交通副大臣は先月15日の会見で、高速道路無料化に向けて国交省が来年 度予算の概算要求に盛り込んだ6千億円の一部を、無料化の影響を受ける他の交通機関対策にも振り向ける考えを示している。主に鉄道やフェリーなどを想定しているのかもしれないが、能登有料道路のようなケースも、支援を受ける「資格」はあろう。県は、同じ悩みを抱える自治体と連携して、あらためて声を上げてもらいたい。