きょうのコラム「時鐘」 2009年11月3日

 紫綬褒章を受章する歌手・中島みゆきさんの喜びの言葉が楽しい。棚からぼたもちでなく、「棚から本マグロ」の驚き、と紙面にあった

ぼたもちと違って、本マグロはとても一人で食べきれない。近くの店でさばいてもらい、近所や知り合いにたっぷりおすそ分けができる。「周囲と喜びを共に」といった紋切り型の言葉より、気持ちが伝わる。思わず「うまい」と手をたたきたくなる

取材のついでに、何度か文化勲章を見せてもらったことがある。額に入れて掲げたり、大事に手元に置いてあったりした。「孫たちが小さかったころ、よく首に下げていた」と聞かされ、ビックリしたことがある

粗略に扱ったのでは決してない。これも、喜びのおすそ分けだろう。勲章を下げて、孫たちは得意げに笑う。その笑顔が、新たな励みの力になってくれる。栄誉とは、時に窮屈で肩の凝るものらしいが、自分も周囲も喜ばせるおすそ分けの役目も果たしてくれる

きょう「文化の日」。ふるさとに大きな足跡を刻む人たちに、栄誉が授けられる。祝福と共に、文化の実りがさらに広がる「おすそ分け」をねだりたい。