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インタビュー:日本は円高容認していない、G20で主張=財務副大臣

2009年10月29日16時35分

 [東京 29日 ロイター] 財務省の野田佳彦副大臣は29日、ロイターのインタビューに応じ、藤井裕久財務相の代理として出席が予定される11月6─7日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議(英セントアンドリュース)について、意見交換を行う場があれば、1)為替は安定が望ましい、2)通貨安競争は避けるべき、3)日本は円高を容認しているわけではない──の3点を伝える意向を示した。

 ただ、G20は為替を主たる議題とする場ではないと述べ、主要議題にはならないと語った。

 また、9月下旬に開かれたG20首脳会合(金融サミット)から世界経済動向に劇的な変化はみられず、出口戦略のあり方については検討を継続することになるとの見通しを示した。

 09年度国債発行額については今年度の税収減を赤字国債で補てんする結果、50兆円台に乗せる可能性を明らかにする一方、個人向け国債の販売不振で市中消化額がさらに増額され8兆円程度膨らむ可能性については「税収落ち込み分に加え、個人向け国債が予定より消化できなかった分について、円滑に消化していく必要がある」と述べるにとどめ明言を避けた。

 日銀の金融政策については「金融面から経済をしっかり支える役割は大事だ」としながらも、国債増発懸念による長期金利上昇抑制のための国債買いオペ増額の是非や年末に期限を迎えるCPや社債買い入れ、企業金融支援特別オペの打ち切りの是非については日銀の判断を尊重する考えを強調。ただ、企業金融支援措置の打ち切りを決定するような場合には「国民とマーケットにきちんとした説明をすることが最低限必要」と語った。

 30日に開催される日銀の金融政策決定会合には、財務省から野田副大臣が出席する予定。G20財務相・中央銀行総裁会議についても、藤井財務相は野田副大臣が代理で出席することを明らかにしているが、まだ正式には決定していない。

インタビューの概要は以下の通り。

 ──G20議題と日本のスタンスは。

 「前回のピッツバーグ会合のフォローアップが主たる議題だと思う。世界経済では、引き続き出口についてどういう戦略で取り組むかその検討を続ける。各国の政策をお互いに監視する色彩が強まるので、日本の経済政策をしっかり各国に訴え理解を求めたい。内需主導の安定的成長を実現するために鳩山政権が何を行おうとしているか説明することが一番大事だ。気候変動についての議論もあると思う。いずれにしても積極的に参加しわが国の立場について意見表明したい」

 「世界経済は劇的に変わった状況ではない。出口のあり方については検討継続ということだろう」

 ──G20の中長期的課題として財政再建もあがっている。日本の立場は。

 「中長期的な財政健全化目標設定の必要性については藤井大臣なども言及されており、その姿勢は変わらない。ただ、いつ、具体的に掲げるかは、確定的に言えないが、その必要性は間違いないことはきちんと主張しなければならない」

 ──為替は今度のG20で議論の対象になるか。

 「G20は為替を扱う性格のものでは本来ない。インフォーマルなところも含めて意見交換はあるかもしれないが、主たる議題とする場ではない。いずれにしても意見交換があれば、藤井大臣が主張されている通り、為替は安定することが望ましい、通貨安競争は避けるべきである、決してわれわれは円高を容認しているわけではない、この3点はしっかり言うことが大事だ」

 ──世界的な不均衡是正には、日本としてどのようなスタンスで取り組む考えか。

 「日本は内需中心の安定成長軌道に乗せることがまず大事だ。そういう役割を果たしていく」

 ──内需中心の安定成長軌道に乗せるのはいつごろを展望しているのか。

 「日本経済は生産を中心に持ち直してきているが、雇用情勢は依然として厳しい。引き続き景気動向を注視していくなかで、予算を含めきちんと対応していく。何よりも、年内に予算編成をして最低限の責任を果たす。機動的に対応するかどうかは、これから7─9月GDPなど重要な経済指標が出てくるので、それを踏まえた判断になるだろう」

 ──来年1月の通常国会に提出される2次補正では追加対策の可能性もあるのか。

 「2次補正の性格を言える段階ではない」

 ──09年度の国債増発が既定路線となったことで、国債市場の警戒感も高まり、長期金利は1.4%台に上昇している。予算編成基本方針では、10年度予算編成において「国債市場の信認確保」を掲げているが、国債発行当局として具体的にどのように国債市場と対話する考えか。

 「マーケットとの対話とは、国債市場特別参加者会合や国債投資家懇談会などでの意見をしっかり聞き、同時に私どもの現状を説明し緊密にやっていくということ。発行の工夫はもちろする。なるべく早い段階から円滑に消化できるように戦略的にやっていきたい」

 ──09年度国債発行額が50兆円台に乗せる可能性は。

 「税収は当初見込み(46兆円)に対して40兆円を切る可能性がある。(補正後の公債発行額)44.1兆円に足すと50兆円に乗せる可能性がある」

 ──個人向け国債の販売不振で市中消化はさらに2兆円超増え全体で8兆円超膨らむとみてよいか。

 「数字が一人歩きするとつらいが、今回の税収落ち込み分に加えて個人向け国債が予定より消化できなかった分など、円滑な消化の工夫をしていかなければならないと思う。ただ、借り換え債も含めて百数十兆円の規模をどうやってなだらかにやるかの工夫をしており、市場との対話を通じてきちんと消化できる、またさせなければならない」

 ──インフレ懸念がないなかで国債増発に伴う金利上昇を抑制するには、金融政策も重要だ。金融政策への期待は。

 「金融面からしっかり経済を支える役割は依然として大事だ。その意味で、日銀と政府が緊密な連携をとり、共通認識をもちながら対応していければと思っている」

 ──将来、国債買いオペの増額は検討課題にはならないか。

 「あくまで金融政策は日銀の判断だ。日銀の独立性を最優先で考えなければならないが、景気に対する認識など含めて連携はしていく。具体策については今申し上げる段階ではない」

 ──年末に期限を迎えるCP・社債買い入れや特別オペの打ち切りの是非は。

 「それぞれの措置の検証を行ったうえで明日議論があると思う。その議論をよく聞きたい」

 ──打ち切りが決定された場合、政府の対応は。

 「仮の話には答えられない。いずれにしても、どんな議論がなされどんな決定をしても、日銀は国民と市場に対してきちんとした説明は最低限必要だ」

 ──政府・日銀間の定期会合が設置される見通しだが、狙いは。

 「従来は、経済財政諮問会議に日銀総裁も出席されていた。諮問会議がなくなった分をどうするかという話で、特定の目的のための協議ではない。日常的な意見交換、コミュニケーションを図ることは大事だ」

  ──経済に対する認識の共有が狙いか。

 「そうだ」

 ──来年度国債発行を44兆円以下に抑制するというのは、政府方針か。

 「藤井大臣は強い決意を示している。ひとつの目安として予算関連閣僚のなかでは共通認識だ」

 ──一般会計を概算要求から92兆円まで切り込んだとしても、税外収入が相当なければ国債発行44兆円以下は難しいと思う。実現可能性は。

 「まだ予測をする段階でなく努力する段階。行政刷新会議中心に一段と歳出削減を行っていくことに加え、特別会計の見直しのなかで税外収入をどの程度増やせるかという努力も合わせてやっていく。最低限といった44兆円以下になるよう取り組む」

 「行政刷新会議だけでなくて、政府をあげて、与党議員の総力を挙げて、歳出削減に取り組むことで結果を出していく」

  (ロイターニュース 吉川裕子 梶本哲史)

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