「子ども手当創設VS二大控除廃止」の損得勘定プレジデント11月 3日(火) 10時 0分配信 / 経済 - 経済総合
「配偶者控除」「扶養控除」とは、扶養する家族や配偶者がいる場合、税金の計算上、課税前に所得から差し引くことができる「所得控除」のこと。これらがなくなれば、課税対象となる所得が増えて課税額も増え、手取り収入が減ることになる。 なお、妻がパートで働いている場合は、妻の給与収入が年間103万円を超えると夫が配偶者控除を受けられなくなる。俗に言う「103万円の壁」で、パート主婦が夫の扶養にとどまり続けるため、この金額以内に年収を抑えようとする傾向がある。 現行の配偶者控除額は38万円。扶養控除額は1人につき38万円だが、対象者が16歳以上23歳未満の場合は25万円加算され63万円になる。 たとえば年収700万円のサラリーマンで試算してみよう。妻が専業主婦で中学生の子ども2人の世帯であれば、控除の合計は114万円。子どもが2人とも16歳以上の世帯の場合は、控除額は計164万円となる。 これらの控除がすべてなくなったときの増税額の目安は、中学生の子ども2人のケースで16.4万円、16歳以上の子ども2人のケースで21.4万円。年収1000万円なら、前者が22.8万円、後者が32.8万円の手取り減となる(その他の控除は一般的な額で試算)。 ただし、中学生の子どもが2人いるケースの場合、子ども手当が2万6000円×12カ月×2人分で年間計62.4万円となるため、差し引きすれば年収700万円の場合は約46万円、年収1000万円の場合は約40万円の手取り増となる。 しかし、子どもが2人とも16歳以上の世帯に子ども手当の恩恵はない。公約には公立高校授業料の無料化や奨学金の拡大もうたわれてはいるが、教育費がもっともかかる時期に、増税が重くのしかかることになる。 さらに、子どものいない家庭に恩恵はなく、特に妻が専業主婦の場合は税金が増えるだけだ。結局、一番得をするのは、中学生以下の子どもがたくさんいる共働きの夫婦ということになる。 ところで、民主党の政策で、より財源が問題視されているのが、年金・医療制度の改革だ。 1989年に約20兆円だった年金支払額は、2005年に約50兆円に膨らみ、13年には約80兆円と予想される。国庫負担は2分の1だから、05年から13年にかけて、約15兆円増加するわけだ。このうえ、公約に掲げた年金・医療改革を実行しようとすれば、消費税率を20%まで引き上げる必要が出てくる。1年後にはボロが出るのではないかと私は予想する。 09年現在、日本の国民負担率(社会保障+税負担の国民所得に占める割合)は39%。海外を見ると、06年度ではドイツ52%、フランス62%、スウェーデン66%と、欧州各国は日本よりかなり負担率が高い。一方、35%と負担率が低いのはアメリカである。 民主党の政策は、いわば「低負担・低福祉」のアメリカ型より、「高負担・高福祉」の欧州型に近い。今後、出生率向上と働く人への待遇改変を志向するなら、増税の可能性が高いと考えて間違いないだろう。 この状況下で家計を守る一番の方法は、妻に働いてもらうことだ。配偶者控除がなくなれば、夫の扶養でいるために「103万円の壁」を考慮する必要もなくなる。妻がどんどん稼ぎ、税金も社会保険料も自分の収入から十分に支払うぐらいにならないと、家庭年収を維持するのは難しい時代になりそうだ。 ----------------------------------------------------- 社会保険労務士 北村庄吾 構成=有山典子 【関連記事】 ・ 十分な教育を受けさせてやれない子に何を話すか/堀田 力 ・ 「私立」にこだわる妻に「公立行き」を納得させる/山本一力 ・ 鳩山新政権に告ぐ「悪しき中央集権」を解体せよ!/大前研一 ・ 民主党の政権公約実現の鍵を握る男 ・ 民主党の「ワンマン社長根絶作戦」
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