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日本が変わる:業界と団体/7止 政権と「親密」日教組

 ◇生き残りへの道模索

 衆院選での民主党大勝の余韻が残る9月上旬。東京・一ツ橋の日本教職員組合(日教組)事務所で、文部科学省の前川喜平官房審議官が中村譲委員長に話しかけた。「民主党の政策への意見を聞かせてください」。官僚が自ら日教組に足を運ぶ異例の訪問を、文科省幹部が解説する。「影響力の大きい輿石さんの機嫌を損ねないよう、先手を打った」

 幼稚園から高校まで全国の教職員(約100万人)のうち約30万人が加盟し、同党の有力な支持組織でもある日教組。党参院議員会長を務める輿石東氏をはじめ、衆参の現役議員10人が日教組の政治組織出身だ。

 日教組は自らも文科省との関係作りに動く。今月14日、中村委員長が川端達夫文科相を表敬訪問した。委員長の大臣訪問は2年ぶり。自民党政権時は訪問自体が容易でなく、話もかみ合わなかった。中村委員長は「(2人の)違いは、阪神ファンと巨人ファンというぐらい」と親密ぶりをアピールし、定期的な会合を申し入れた。

  ◇  ◇

 新政権の教育政策で日教組の影響が強まるのでは、と懸念を隠さないのが日本私立中高連合会だ。

 「公立だけの無償化は不公平だ」。民主党がマニフェスト(選挙公約)に掲げ、日教組も賛成する「公立高校の授業料無償化」の意見交換会が9日開かれ、連合会の吉田晋会長が同省幹部に訴えた。緊迫した空気を和らげるように鈴木寛副文科相が「公私格差が拡大してはいけない」と、私学支援に含みを持たせた。

 自民党が議員立法で75年に成立させた私学振興助成法で、年間約6200億円の公費が私立校に渡り、予算規模の3割超を占める。吉田会長は「日教組の意向で助成法が見直されたら大変」と、毎年開かれる私学振興全国大会に、今年初めて民主党議員を招く。

  ◇  ◇

 その日教組は、若い教職員を中心に組合離れが進む。赤池浩章広報部長も「組織率回復のラストチャンス」と意気込み、組織の生き残りをかけた変化の道を探る。

 だが、米軍基地がある神奈川県横須賀市の小学校で教壇に立ち「基地反対」のデモ行進に参加したこともある30代の女性組合員は冷ややかだ。「デモで世の中は変わらない。忙しすぎる先生の環境改善に、組合は時間を割くべきだ」。中村委員長も「教職員の勤労条件や学校施設を整えるのが我々の使命」と認めるが、青写真はまだ描けていない。

 政権発足から1カ月が過ぎ、文科省幹部のささやきが漏れてくる。「警戒したほどの力は日教組になさそうだ」【内橋寿明】=おわり

毎日新聞 2009年10月31日 東京朝刊

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