今年8月、合成麻薬MDMAを使用したとして麻薬取締法違反罪に問われた元俳優押尾学被告(31)に、東京地裁は2日、「麻薬使用者との交友関係が深く、麻薬に親しむ傾向も強い」として、懲役1年6月、執行猶予5年(求刑懲役1年6月)の判決を言い渡した。井口修裁判官は「MDMA使用の経過など被告の法廷での説明は不自然で信用し難い」と述べ、執行猶予期間としては最長の5年を適用。専門家は「極めて実刑に近い判決」とみている。
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午前11時に開廷。証言台に立った押尾被告は、黒いスーツにネクタイ姿、左手に数珠のようなものを2本巻いていた。量刑に続き、異例の5年という執行猶予を告げられると、固い表情で「はい」とだけ答えた。
裁判官は、判決理由で「前科がないことからも一度は社会内で自分の力で更生する機会を与えるのが相当だ」と説明する一方、10月23日の初公判で押尾被告が検察側と繰り広げた問答について「被告の説明は不自然で信用し難い」と、バッサリ切り捨てた。
押尾被告の事件では、一緒にMDMAを使用した女性が死亡。初公判で検察側は、押尾被告が女性と会う直前「(部屋に)来たらすぐいる?」とメールを送ったことを暴露した。検察側にMDMAのことではないのかと問われ、押尾被告は「自分(の陰茎)がすぐにいるのか」という性行為を示す内容だったと説明していた。
判決は、この発言などの信ぴょう性を疑う格好で、裁判官は「MDMAの使用の経過など、法廷での説明は不自然で信用しがたい」と断罪。女性がMDMAを用意したとの押尾被告の主張にも暗に疑問を投げかけた。さらに押尾被告の長期間にわたる薬物常用を認めた上、裁判官は「相当長期間、再び違法薬物に手を出さないか見守る必要がある」と、最長の執行猶予期間が付されたことを説明した。
芸能人の薬物使用に関する判決では、報道などで社会的制裁を受けているなどとして、情状酌量されることも多く、最近では覚せい剤取締法違反(使用)罪に問われたタレントの小向美奈子も執行猶予3年(懲役1年6月)だった。
控訴期間は2週間あるが、押尾被告はこのまま判決を受け入れる可能性が高いとみられている。ひとまず執行猶予が得られ、裁判官に控訴手続きの説明を受ける際、押尾被告の肩からは、スーッと力が抜けたようにも見えた。
判決によると、押尾被告は8月2日、港区の六本木ヒルズのマンション一室でMDMAを若干量飲んだ。初公判で、押尾被告は「軽い気持ちで飲んだ」などと起訴内容を認めていた。