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日本が変わる:衆院予算委質疑 自民、普天間で攻勢/民主、応対に余裕も

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>

 ◇「先送り」厳しく批判--献金問題は追及鈍く

 各党代表質問で鳩山由紀夫首相の答弁に押された自民党は、2日の衆院予算委員会を今国会最大の山場と位置付け、質問者に大島理森幹事長らベテラン議員を配した。民主党政権のアキレスけんである米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を追及し、首相から「県民の理解を頂ける結論を出さなければならない」との答弁を引き出すなど、政権の選択肢をさらに縛って追い込むことには成功した。それでも、焦点と目された、首相が抱える偽装献金問題への追及は鈍く、自民党の存在感を示すまでには至らなかった。

 「県外に移すのか、県内に残すのか。いつまでに結論を出すのか」

 普天間移設計画を巡り、大島氏は移転先と方針決定時期に焦点を絞った。政権発足から48日目を迎える政権に対し、町村信孝元官房長官も「先送りは許されない」と迫った。同党が普天間問題にこだわるのは、民主党が外交・安保政策に不慣れな上、「いろんな問題を先送りし、答弁に具体性がない」(町村氏)という政権批判の象徴ととらえるからだ。

 これに対し、首相は「政府として結論を出す前に県民の理解を得ないと話にならない。若干時間がかかることをご理解願いたい」と強調。首相との答弁の食い違いを指摘されていた岡田克也外相は「そう時間をかける問題ではない」と言いながらも、「首相と相談しながら、私なりの思いを伝え、内閣としての結論を得る」と述べるにとどめた。

 また、加藤紘一元幹事長はマニフェストの再考を促した。高速道路無料化などについて世論調査で「反対」が多いと例示し、「国民の意識の上では拒否されており、我々が『やめなさい』と言っているのだから考えなさい」。町村氏も、「マニフェスト至上主義に陥らず、率直に考えてほしい」と皮肉った。

 しかし、民主党が強く警戒した首相の偽装献金問題では、自民党の追及は表面的な批判にとどまり、新たなスキャンダルを示すことはできなかった。

 民主党が今国会の会期を短くしたのは、この問題で傷口が広がるのを恐れた面もあったからだ。自民党も、今国会で献金問題を最大の争点にしようと、先の衆院選の最中から独自調査を続けてきた。

 しかし、大島氏は「(国民との)『信頼が大事だ』と言った首相のためにも、国会で説明した方がいい」と迫った程度で、首相には「私なりにすべてを説明したつもりだ」との釈明を許した。

 この日は、攻守が逆転した光景もあった。

 「暫定税率廃止で道路財源がどうなるか地方が心配している」。後藤田正純元内閣府政務官はそう攻めたが、前原誠司国土交通相には「道路予算を確保してきたのは自民党政権。なんで今まで(地方に道路を)造ってこなかったんですか」と反撃された。

 予算委開会前、事前に手の内を明かさないため、質問の詳細を通告しない戦術に出た自民党に対し、政府側は「最初から答弁できずに議事が止まるかもしれない」とピリピリしていた。前日の1日には、松野頼久官房副長官が首相公邸での打ち合わせを抜け出し、議員会館の質問者の部屋を訪れた。が、あいにく日曜日だったため不在が多く、後藤田氏としか面会できなかった。

 もっとも、自民党の質問者は大島氏や町村氏、加藤氏らの大物。細かい質問は少なく、事前通告がなかったために閣僚がまごついたのは、直嶋正行経済産業相が09年度補正予算で執行停止した具体的な事業の説明を求められた場面ぐらいだった。

 背景には、与党時代の自民党が「もっと大所高所に立った質問をすべきだ」と野党・民主党の質問を批判していたことがある。加藤氏は2日の予算委終了後「細かくて事実関係が分からなければ答弁できない質問はしていない。どうして事前通告が必要なのか」と語った。

 大島氏も同日の記者会見で「政治家同士の議論をしたいと言ってきた」と述べ、今後も同様の方針で臨む姿勢だ。

 平野博文官房長官は2日の記者会見で「詳細なテーマについて具体的な要求がない。議論がややもすると抽象論で終わる」と自民党の戦術に苦言を呈したものの、民主党内には余裕もうかがえる。副大臣の一人は「一番いやな質問は、具体的な数字を出されて矛盾を突かれるもの。それがない今日みたいな質問なら別に怖くない」と話す。

 「大所高所」か「追及」か、野党・自民党の模索は続きそうだ。【中田卓二、坂口裕彦】

 ◇官僚の答弁なし 町村氏、政務官に直接質問

 政権交代後初となった2日の衆院予算委員会は、委員会室の光景もこれまでとは様変わりした。政治主導を掲げる通り、今まで官僚が控えていた席には副大臣・政務官が陣取り、官僚の答弁は一度もなし。自公政権ではほとんど見られなかった、政務官を名指しした質問もあった。

 自公政権では委員会審議の際、委員長が「政府参考人」として答弁を認める官僚の名前をズラリ並べ、委員に諮る手続きがあった。しかし、この日の予算委はいきなり質疑から始まった。

 副大臣・政務官は従来、予算委にほとんど姿を見せなかったが、同日は各省の十数人が常時待機し、閣僚の補佐に駆けつけられる態勢を取った。

 政務官に質問したのは自民党の町村信孝予算委筆頭理事。長島昭久防衛政務官がインド洋の給油活動に関し、国会の事前承認を条件に継続する案を過去に表明したことを突いて閣内の混乱を狙ったが、長島氏は「日本にふさわしい方法を検討していく」との答弁でかわした。

 委員会室後方で拍手やヤジを送る委員以外の「声援要員」は、143人の新人議員を抱える民主党が自民党を圧倒。鳩山由紀夫首相の答弁が終わるたびに、委員会室には拍手がわき起こった。【田中成之】

毎日新聞 2009年11月3日 東京朝刊

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