あの結婚詐欺女性も利用　こんなに危ない「婚活サイト」

「あなたに尽くします」――。関係した男性６人が怪死した結婚詐欺「毒婦」事件で、渦中の木嶋佳苗（３４）が“獲物”を探すのに使ったのが「婚活サイト」だ。

　佳苗はサイト上で「学生」や「介護ヘルパー」と自己紹介。複数の男に同時並行で接触し、結婚話が出ると生活費や学費などを無心していたという。

　まんまと誘い出された男は２０人以上いたというから、恐るべき詐欺テクニックだが、今や婚活サイトは犯罪を生む「温床」になりつつある――。

「今夜から婚前旅行に行きます」。ブログにこう書き込んだ２０時間後に遺体で見つかった都内の会社員大出嘉之さん（当時４１）。利用していたのは、検索サイト「ヤフージャパン」が運営する婚活サイト「ヤフーパートナー」だった。

「大出さんは結婚願望が強かったとみられ、このサイトで積極的に結婚相手を探していた。昨年８月には２０代の中国人女性とやりとりし、別のサイトに『２０代女性と結婚できるなら中国まで会いに行きたい』と書き込んでいます。その時は周囲から『相手の中国人は詐欺ではないか』とアドバイスされてあきらめたようですが、その教訓が今回生かされなかったのが残念です」（事情通）

　こうした「婚活サイト」の運営会社は約４０００社。多くは、ハンドルネーム（登録名）やメルアド、身長・体重、学歴、趣味などの個人情報を登録する会員制だ。相手条件の検索数に応じて手数料が発生するサイトもあり、銀行口座やキャッシュカード番号も必要。本人確認のため、運転免許証のコピー提出を義務付けている会社もある。

「相手の正体が分からない出会い系サイトよりも、本人確認を義務付ける婚活サイトなら安心して利用できると思った。顔写真を掲載したら、一日に１００通ぐらいのメールが届くようになった」（都内の３０代女性）

　もちろん、こういうマジメな女性もいるのだが、男性にとって“倍率”はかなり高いし、ＩＴジャーナリストの井上トシユキ氏は「落とし穴は多い」と指摘する。

「婚活サイトの登録者は『カネを自由に使える人』。つまり、ブランド服や高級車、家、旅行などの売り込みができる優良な見込み客です。そのため、本人確認と称して運転免許証などの提出を求める会社の中には、集めた個人情報を転売してカネを稼ぐ悪質業者もいると聞きます。美人局（つつもたせ）のようなヤラセ登録者も少なくありません」

　会員登録の“厳しさ”は優良サイトの裏付けにはならないのだ。ネット犯罪に詳しいＮＰＯ法人青少年メディア研究協会（群馬）の下田博次理事長はこう言う。

「（登録義務のない）出会い系サイトに対する警察の監視が厳しくなり、悪質業者が婚活サイトに進出し始めています。本人確認や身元保証がある婚活サイトといえども、決して安心してはいけません」

　何を信用していいものやら……。

（日刊ゲンダイ2009年10月31日掲載）